昨年9月1日、茅場町と水天宮の中間点である箱崎町エリアに、アイディー(東京都中央区、代表取締役:梅田恭敬氏)が運営する、半独立型の新業態「ame」がオープンし、人気を呼んでいる。アイディーの梅田氏は、独立志望の若手飲食人を積極的にサポートしている。社内外を問わず、“いつかは自分の店を”と、意欲がある人には無料で相談にのり持ち得るノウハウを提供するなど「将来的な業界の活性化へ繋がれば」と考えている。今回の「ame」も、その一例だ。アイディーの社員である同店店長の浅原建氏が「いつか、こんな店がやれれば」と、想い描いていたことを具現化したのだという。
同店の売りは「イタリア料理・ワイン・トリッパ・自家製パン」。イタリア・トスカーナのレストランと1年契約し、手打ちパスタを一人で担当していたという浅原氏。調理技術を磨くと同時にワインも学び、イタリアソムリエ協会認定のソムリエ資格も取得した。その後フィレンツェへ移り、現地で魅せられた屋台のトリッパ専門店へ「ここで働かせてほしい」と申し入れ、約2年間イタリアで料理修行を経験した。最後の“自家製パン”はというと、同店で働く見上彩子氏が得意とするもの。浅原氏と見上氏は、アイディーグループの別の店舗でそれぞれ勤務していたが、昔から気が合い、互いを理解している仲間だったそうだ。いつかは2人で一緒に店に立ちたいと考えていたため、見上さんを「ame」のスタッフとして抜擢した。
料理は「生しらすのカルパッチョ 熱々ガーリックオイルがけ」(500円)や得意な「モツ煮 トリッパと有機オリーブのトマト煮」(700円)、手打ちパスタで作る「仔羊と香草のミートソース タリオリーニ」(1000円)、「牛ハラミ肉の赤ワイン煮 マッシュポテト添え」(1500円)など、前菜からパスタ・メインまで常時20種以上のメニューが週・月替わりで揃う。加えて自家製パンは、「フォカッチャ」「バケット」「グリッシーニ」の3種を固定メニューにし、ほか2種を“おつまみパン”として、「コーンとブルーチーズのパン」や「トマトとトマトとモッツァレラのパン」(1個120~270円)などのオリジナルを日替わりで提供している。一方ワインは自然派を中心に、浅原氏がイタリアで知り合った信州・高山村のワインナリーから直送する「カンティーナ リエゾ」のワインをはじめ、ここでしか飲めない、あまり市場に出回っていないものも多く仕入れている。しかも、すべてグラス(550~950円)、ボトルの両方で提供しているのが嬉しい。なかには、リストのうち毎日1種、原価で飲めるものもあるというから、オーダー時には要チェックだ。
「ワインで知り合い、会話でつながる」店にしたいと、カウンターを重視した店づくりにこだわった浅原氏。店名の「ame=雨」は、「言葉そのものや、音に惹かれて」名付けたというが、「昔から、自分の店を持った時にはこの名前にしようと考えていたんです」と、教えてくれた。しとしとと静かに降り注ぎ、大地を潤す雨の存在は、どこか浅原氏と重なる。適度な距離感と、主張しすぎないナチュラルな会話は、乾いた喉や心を優しく潤わせてくれる、そんな温かみのある店だ。独立を支援するアイディーから、今後も「ame」のように、社員の熱意を具現化した、新たな店舗や業態が生み出されることに期待を寄せたい。
店舗データ
店名 | ame(アメ) |
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住所 | 東京都中央区日本橋箱崎町5-15 エヴァグリーンマツモト1階 |
アクセス | 日比谷線茅場町駅より徒歩5分 |
電話 | 03-3662-3226 |
営業時間 | 月~金18:00~翌2:00、土17:00~24:00 |
定休日 | 日・祝日 |
坪数客数 | 9坪・15席 |
客単価 | 4000円 |