北千住は、JR常磐線、東京メトロ千代田線・日比谷線、東武伊勢崎線、さらに首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスが乗り入れるビッグターミナルエリアである。駅を中心にLUMINE、マルイとファッションビルがあり、若々しく華やいだ賑わいを見せる。しかし、もともとは宿場町として古い歴史を持つ街で、有名老舗古典酒場をはじめ、個店飲食店や商店が立ち並び、熟成した趣も感じられる。そんな新旧の空気がミックスする北千住に爽やかにデビューした「日本酒宿 七色」。この地に店を構えたのは「土地勘のある地元に日本酒を掘り下げた店がなかったから」と店主の葛谷幸子氏は語る。 生活感、活気溢れる商店街のビルの2階、意表をつくような場所に店を構える。蔵の扉をイメージするようなシックな木製の扉を開けると、空中に浮かぶ何本もの銘柄の日本酒の瓶が目に飛び込んでくる。カウンターの真上に設えた店主こだわりの天吊り特注冷蔵ケースだ。「一本一本、個性を持つ日本酒の顔を見てもらえたら」と葛谷氏。店主である同氏は、まだ30歳前と若い。彼女と日本酒の出会いは竹ノ塚の駅から15分、たった10席のマイクロ店舗ながら遠方からも通う客が絶えない焼鳥業態「鳥もん」にある。オーナー梶文宏氏は美味しい日本酒揃えに定評があるという。そんな梶氏に進められた福島県の曙酒造「天明」と出会い、日本酒に魅了され、焼酎ファンから大の日本酒党となった。日本酒を知るほどに日本酒に惹かれ、純米フェスティバル参加の蔵元を手伝ったことがきっかけで、日本酒の未来を見据え、日本酒専門店への思いが募ったという。 彼女が師匠と慕う梶氏は「天明」を店の顔としているように、「日本酒宿 七色」では山口県の八百新酒造「雁木」を顔とし、蔵元との信頼関係からオリジナルボトル構想も進めている。近い将来には、東京一番、「雁木」が飲めるお店にしたいとも考えている。置かれている日本酒は常時40~50種類で、店主好みの銘柄のほか、その時々、おすすめの銘柄を揃える。ポーションは120mlで純米酒が730円から。純米吟醸酒は780円から。純米大吟醸酒が850円からで、上は3500円位と特別な逸品までを揃える。サーバー出しの活性清酒もおすすめの日本酒となる。その他のアルコールメニューは舞浜地ビール工房のゆずエール、にごり酒のサイダー割り、日本酒ベースのリキュールと、シンプルで明快である。 料理は、地元の中央卸売り市場足立市場から仕入れる季節の食材を用いて店主みずからが作る、日本酒を味わい楽しむことを意識したメニューが多く並ぶ。営業時間が深夜1:00まで入店が可能なため、都心や地元で働く同業者も多く、しっかり食べたいとの希望から「本日のごはん」にもこだわるという。 カウンター8席を中心にした店は客との距離も近く、コミニュケーションも深くなるために、好みのテイストや嗜好を得やすい。「日本酒を選ぶとき、一人一人のお客様の顔が浮かぶような店にしたい」と同氏は語る。店名の「七色」の由来は漫画、「夏子の酒」のなかに「美酒は七色に輝く」とのくだりがあり、まさに七色に輝くような美味しい日本酒を味わって欲しいとの思い入れからだ。さらに、「日本酒宿」は宿場町であることから、日本酒が集まる宿として、またその宿を求めて人が集うことへの願いもある。 竹下夢二の大正ロマンをイメージしたシックで柔らかな空間は、女性一人やカップルからシニア世代までを和ませ、2時間3時間の滞在も珍しくないという。「なによりも日本酒をじっくりと味わえる雰囲気をこころがける」と語る葛谷氏。気さくで、お姉さんのような若女将が創る新しい世代の日本酒ワールド。また一軒、新世代日本酒専門店の誕生だ。
店舗データ
店名 | 日本酒宿 七色 |
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住所 | 東京都足立区千住1-27-1 沢田ビル202 |
アクセス | JR・東武伊勢崎線・地下鉄・つくばエクスプレス 北千住駅西口より徒歩7分 |
電話 | 03-3888-0776 |
営業時間 | 19:00~翌1:00 |
定休日 | 日・祝 |
坪数客数 | 9坪・8席(テーブル2席) |
客単価 | 4000円~5000円 |
運営会社 | 葛谷幸子 |