コラム

“鶏業態”の進化系に注目!

鮮魚居酒屋、ホルモン業態のトレンドの次は何か?これが目下の飲食業界の関心事だろう。それは"鶏業態の進化系"ではないか。最近のマーケットを見ていると、そんな兆しを感じる。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


7月20日、新宿四丁目に「とり処」がオープンした。もつやき処い志井グループのナンバーツーであるエムファクトリーの長谷川勉社長のプロデュース業態だ。売りは「揚げ鶏」。骨付きの鶏のもも肉、手羽をカラッと素揚げしたもので、原型は西横浜の名店「やまと」の鶏料理と見られる。これがハイボールとよく合うということで、サントリーが8月3日に発売する「トリスハイボール(トリハイ)」サーバー設置の“モデル店第1号”に選ばれた。「もつ焼きの名人・石井宏治さんの一番弟子である長谷川さんが初めて手がける鶏料理だから間違いない」(サントリー関係者)ということで、白羽の矢を立てた。この「とり処」から“新しいトリハイブーム”の発信が始まるのだろう。

恵比寿では、「だるまさんが焼いちゃった」「今日も大漁や」など、8店舗をドミナント展開するブルーム(代表取締役・平古場伸氏)9店舗目となる鶏料理専門店「鶏ハウス」が7月14日オープンした。岩手県産「菜彩鶏」「奥の都鶏」や群馬県産「美桜鶏」など銘柄鶏を揃え、メニューは、「しろ(塩ガーリック)」「くろ(甘からダレ)」「あか(スパイシーカレー)」の3つの味で提供する「名物 手羽先の香味唐揚」のほか、「チキン南蛮」「ささみ刺し」「蒸し鶏ときゅうりのラー油がけ」「やきとり5種盛り合わせ」「とり梅にゅうめん」など鶏料理尽くし。いまや、鶏業態=(イコール)焼き鳥屋というイメージは過去のものとなりつつある。それだけ、鶏料理のジャンルが広がり、業態が進化しているのだ。

この進化を加速させた店が2009年にオープンした小伝馬町の「鳥番長」(バイタリティ、代表取締役・岩田浩氏)だろう。卓上炭火コンロでぶつ切りの鶏を焼き上げる網焼き鶏スタイルを打ち出し、たちまち超繁盛店に。すでに2号店を上野にオープンさせるほど人気店となっているが、ジューシーな美味しさは食材としての鶏の新しい魅力を引き出したといえる。飲み食べ放題のセールスコンテンツが話題の「焼鳥の鉄人」も最初は串焼きだったが、客が席で自分で焼ける炭火網焼き鶏にメニュー変更した。亀戸の名店、「ホルモン青木」が立ち上げた新業態「七輪鳥焼きとり金」もぶつ切り網焼き鶏業態。鶏は秋田県の比内地鶏と宮城県のけいび鶏の22銘柄。塩とタレの2テイストでシンプルに鶏の風味を楽しませる。

下北沢では次世代経営者の焼き鳥業態3店舗が立て続けオープンした。「克ッ下北沢」は「Charcoal Cuisine克ツ井の頭」、水道橋「鶏ちゃん家」に続く積極的な出店となる。部位によりブランド鶏や産地の鶏を使い分ける。カフェのような環境の焼き鳥として人気の「三日月ロック」。やはり榛名鶏、美桜鶏を使い分ける。「西田屋」は近江黒鶏の炙り焼きをメインに串焼きと釜飯を揃える。新宿の「Yakitoridining Pollo」は比内地鶏の焼き鳥とワインの店。歌舞伎町に続けてオープンしたタウンダイニンググループの親父の寄り道酒場「わすれん棒」。90円からスタートする霧島鶏の焼き鳥から唐揚や鍋、鶏料理を揃える。神田の「鶏のじ」もやはり焼き鳥メインに鶏料理と豊富なお酒を揃え、デイリー使いのできる鶏居酒屋業態である。市ヶ谷駅脇にオープンした「ザ・ファンキーチキン市ヶ谷」は串焼き鳥をメインに、もも一枚焼き、クリーム煮などバリエーションのある鶏料理。経営のカミナリ屋は鶏をキラーコンテンツに焼き鳥、鶏料理の居酒屋業態で積極的な展開をしている次世代グループ。

都立大学では個性的な店として人気を集める「石垣黒鶏ぽーじょ」。石垣黒鶏の黒鶏もも肉いぶし焼き、骨付きもも焼き、ぶつ切りの炭火焼き、蒸し焼きと豪快かつ繊細な鶏料理が楽しめる。石垣ピッチャースタイルの石垣島泡盛でがっつり系大衆酒場スタイルのとり酒場。スタッフも石垣島風。高円寺ではサブライムの新業態モモ焼き「サンダーバード」。がぶ飲みワインとボリューミィーなもも、むねの一枚焼きが自慢のとり酒場。同社は大森にも大衆とり酒場「鳥金星」と、鶏をコンテンツとした新店を立て続けに出店している。焼き鳥に代表されていた典型的、古典的な食材のポジションに甘んじていた鶏業態が、鮮魚居酒屋、ホルモン業態に続くネクストトレンドとして目が離せなくなった。産地鶏の多ブランド化、肉の中ではトップクラスのヘルシー&ビューティ効果、多様な調理食材としての潜在的価値を持った業態と言え、今後の進化の動向に注目したい。

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