“第二次カフェブーム”をリードする担い手として注目されているのが、渋谷、新宿、銀座などで食+音楽+アートのミックスカルチャー型のカフェ&ダニングを手がけるSLDグループ。代表の青野玄氏はまだ29歳だが、次々と新店を出店させている。和をコンセプトとした「kawaracafe&dining」ブランドを中心に、カルチャー性を意識した新業態「離kawara cafe&dining」(銀座)、太陽と月、光をテーマにしたネクストブランド「HiKaRicafe&dining」(渋谷)、さらにハワイを軸に南国リゾートコンセプトの新業態カフェ「hale hale café&diner」(銀座)と、業態コンセプトの幅を広げている。銀座中央通りに新しくオープンした「GINZA TRECIOUS」6階に、カフェ業態「ginza SUZU café」がオープンした。運営は広島、福岡、東京で主にカフェ業態を軸に手がける広島の㈱コンプリートサークル(代表・内田優二氏)。「SUZU café」は広島、福岡で人気のブランドカフェで渋谷に続く2店舗目として銀座に出店した。ファッション性の高いソファやテーブルなどの家具が置かれたセンスの良いリビング風空間に、ゆるやかな空気が漂う。メニューはいかにもカフェ風料理やスイーツばかりでなくカジュアルイタリアンテイストの料理も揃い、ドリンクもアルコール類が充実している。営業は昼から夜までの通しで昼茶、昼飯・夜飯は当然として、昼飲み、夜お茶も個々のスタンスで楽しめるフリースタイルで、“カフェ以上ダイニング未満”レベルのニーズに応えている。このほか、渋谷「宇田川カフェ」、赤坂「オーセンティック」などを経営するLD&K、恵比寿、表参道「マーサーカフェ」のマーサー・オフィス、「tomigaya TERRACE」が独立1作目となるグローバルダイニング出身のイージーゴーイングなど、ニューカマーも続々と登場している。このように、東京のカフェ文化の担い手たちに世代交代の動きが出てきた。ここ10年、カフェマーケットをリードしてきたは、稲本健一氏率いるゼットン、楠本修二郎氏率いるカフェカンパニー、そしてヘッズの山本宇一氏だろう。大阪出身のバル二バービの佐藤裕久氏も最近“朝活コンセプト”の「グッドモーニングカフェ」(千駄ヶ谷)などのカルチャー発信を行なっている。稲本氏は株式を上場し、名古屋から東京に拠点を移し、いまや“ハワイアンテイスト”の「アロハテーブル」ブランドのライセンス化というビジネスモデルに邁進、カフェカンパニーの楠本氏は商業施設系の出店の主役に躍り出ている。ほかに、「サイン」のトランジットジェネラルオフィスの中村貞裕氏、「チャノマ」のジェリーフィッシュの貞廣一鑑氏などもいまも活躍している。こうした経営者が“カフェ文化第一世代”だとすると、SLDの青野玄氏、コンプリートサークルの内田優二氏などは、“カフェ文化第二世代”ということがいえよう。彼ら新世代が何を発信し、彼らがつくるカフェにどんな客層が集まっているかに、注目したいと思う。第一世代がうたっていたライフスタイル提案やコミュニティづくり。しかし、ビッグカンパニー化するにつれて、それがビジネスモデルになり、個店の“ゆるさ”が失われてきたような気がする。それに飽きた足らない層が次世代カフェにシフトしていると、私は見ている。さらにブログ、ツイッター、SNSなどのソーシャルメディアでつながるコミュニティが生まれ、それを補完する新しい“リアルコミュニティ空間”としての機能も求められつつある。IT業界の大物、中目黒「ie」の家入一真氏のカフェ経営への参入などは新しい可能性を感じさせる。そうした次世代カフェ文化を生み出す担い手たちが育ってくれば、まさに“第二次カフェブーム”が到来するに違いない。
コラム
2010.06.17
“第二次カフェブーム”が到来する!?
2000~2003年頃にかけて、いわゆるまったり系カフェ"が大ブームとなり、"カフェごはん""カフェめし"という流行語も生まれた。あれから10年、担い手たちは世代交代したが、再びカフェブームが起きる兆しが現れてきた。"
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。