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コラム

“均一低価格戦争”の行方

外食への節約マインドの高まりから、少しでも安く飲みたいと、「客単価2,000円台」の居酒屋が賑わいを見せているように、飲食マーケットの低価格化傾向はより顕著となってきている。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


いま、単価300円を割る“均一価格”をコンセプトにした低価格居酒屋業態が台頭してきたが、その行方を追ってみたい。きっかけは創業以来“280円均一”を貫いてきて、いまウケに入っている焼き鳥チェーンの「鳥貴族」の快進撃だろう。ここにきて均一価格業態に積極的展開を仕掛ける企業には、体力のあるチェーン系企業が多いが、なかでも三光マーケティングフーズの動向に注目が集まる。「立ち呑み電撃酒場」は290円、「熱烈酒場金の蔵Jr」は270円、299円、300円と三タイプの低価格設定で次々と新店をオープンさせている。9月には「スペインバルPasion」380円(ワインデキャンタ・ボトルは例外)といったバルスタイルの新業態も登場している。他では、「うまいもん酒場えこひいき」(コロワイド)380円、「白木屋280円厨房」(モンテローザ)280円、「石志水産」(エイペックス)350円など、企業力やブランド力を強みとしたアグレッシブな均一価格業態の展開は今後も増加すると見られる。
そんな大手チェーン企業の展開とは異なり、積極的な業態リニューアルや居抜き物件による店舗展開を志向するベンチャー系企業や個店も出てきており、単価200円を割るような脅威の店も登場している。バングラディシュ出身のオーナーが展開する「300円個室居酒屋どんのば」、「どんのば摂津」。均一価格“激戦区”である池袋西口エリアではロサ会館ビル前の新しいビル2階に「まほろば300円居酒屋」がオープン。フード、ドリンク共に3300円以上の実力を持ち、客層も幅広い。「300宴や百楽西口店」は池袋で既に10年の実績を持ち、低価格業態とは思えないレベルで、つい最近まで料亭だった本店を300円均一業態にリニューアルした。ワンダーテーブルも池袋西口に「はら一平」290円均一をすでに昨年末オープンさせている。他のエリアでは、東銀座の「楽食家」299円は9月24日に蕎麦屋から業態リニューアル。新橋の「炭火焼鳥居酒屋新橋バル8」(ワイズクルーコーポレーション)もスペインバルからの業態転換するなど、均一低価格を切り口にしたリニューアルによる店舗の活性化を目指していることも少なくない。
神田に昨年オープンした「飲ん処食べ処290円居酒屋」は140席の大箱で古典的大衆酒場の面影を残す。三軒茶屋の「190円居酒屋はいから家」(あんくる)は元「半兵ヱ」の状態のままで190円(生ビールは例外200円)といった驚きの価格でオープンさせているが、クオリティ、ボリュームの満足は高い。高田馬場駅前ビル「300宴家居酒屋アジアンスパイス厨」、四ツ谷に9月オープンした「中華居酒屋三百宴」(スリーハンドレット)のように、均一価格業態が和食系居酒屋から中華居酒屋やアジアン系業態などにも拡がりを見せはじめている点にも注目したい。均一価格を謳う典型的形態でもある立呑み業態では、低価格は絶対条件となり、均一化はオペレーションシステムとしても定着しており、店側、客側に支持される利便的な機能ともいえる。渋谷にオープンした「WA!tu」200円は元美容院そのままを居抜きしたバル風の立呑み(折りたたみ椅子もある)業態だが、キャッシュオンデリバリースタイルで現金入れのバケツからそのつど200円を引いて行くシステムとなる。こうした“均一低価格トレンド”はしばらく続くだろう。一方で、新しい動きとして「2000円居酒屋バイキング」「90分ワイン飲み放題」のような食べ飲み放題専門店が登場してきたが、今後は単価勝負から総額勝負へのシフトも始まっている。

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