コラム

変わりつつある「奥渋谷」「裏渋谷」

「いま渋谷の奥が面白い!」というので、久しぶりに猫のきもち"になってディープな渋谷の街を歩いてみた。ハチ公口からスクランブル交差点を越え、道玄坂、東急本店通り、井の頭通りの"奥"、センター街の"裏"の道玄坂上、円山町、宇田川町一帯、松涛、神泉までのエリアである。 "

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


筆者は2003年9月、東京商工会議所渋谷支部主催の「飲食・環境衛生分科会セミナー」で「レストラン2003年問題!勝ち残るのは商業施設か、街 場の店か~シブヤ地区飲食業の今後を占う~」というテーマで講演した。同支部が六本木ヒルズ開業による渋谷エリアへの影響を恐れて、「渋谷の飲食業が勝ち 残るノウハウを教えてほしい」という依頼だった。そのときは、「街場の飲食店は個性化することで生き残れる。渋谷は駅前よりも“周縁部”が面白い」と話し た。そして「渋谷大人化計画に注目したい」と述べた。 渋谷の街は駅周辺を底に「すり鉢型」の地形で、人やエネルギーは底に溜まるが、それがアートや文化に転化、昇化していくのは周縁である。レストラン もコンセプトや個性で勝負するなら「奥渋谷」「裏渋谷」が面白い。ただ、この街は猥雑すぎる。風俗、クラブ、ホテルなどの「俗エネルギー」の集積地であ り、世代的には圧倒的にティーン及びF1、M1マーケットである。そのエネルギーに負けない、あるいはそれを飲み込む懐の深いパワーが必要だ。具体的に言 えば、「チョー個性の店」と「マジ大人の店」ぐらいしか勝ち残れない(かなり極論だが)。 で、センター街が苦手の筆者は道玄坂上から回ってみた。「BUCHI」の下の路地を左に入ったところに最近オープンした「博多ぬくぬく家」。博多の 「あ・うんグループ」東京初出店の店である。メインはもつ鍋だが、“博多炊き餃子”という新しいコンテンツが売り。ブームになり始めた“熊本産馬肉”も提 供。道玄坂を下ると右手に関西から来たイタリアンたこ焼きの「SUPA たこ」。さらに下った道玄坂上交差点のビルでは際コーポレーションが既存店をリニューアル、「みぞれ」「うなぎ」などの“変わり鍋”の「ゆるり屋」をオー プンした。 東急本店前からセンター街裏に出たら、新築飲食店ビルを発見。立呑み屋の前の瀟洒な福岡ビルに「Kawaraya」の3店目「お座敷ダイニング」が オープン。その通りを抜けたところにリン・クルーの「もつ道」が。井の頭通りに出て、左を奥に進むと際コーポレーションの店が集まる路地がある。そこに も、讃岐うどんブームを当て込んだ“勝谷誠彦公認”の「じゃぶかま」、大人の空間「KAPPO KAISEKI 縁賀和(えんがわ)」。横道に入るとジンギスカン「ゆきだるま」。その前の路地を抜けると宇田川町の奥の飲食店通りに出る。異彩を放つ 「てっぺん女道場」の前に「てっぺん男道」が出来た。その先には立ち飲み「あばらや別館」がある。この通りは、再開発の真っ只中で抵抗するレジスタンスの 匂いがする。 井の頭通りに戻ると景色は変わる。きれいに舗装し直されたバス通りには、アパレルブランドと消えゆく「西武グループ・堤家の権威」の残骸。渋谷西 武、ロフト、パルコなどはどう再生すのだろうか。しかし、着実に新しい息吹が生まれつつある。その一角に上海から上陸したカフェ「一茶一坐」。スペイン坂 奥には、なぜか元気のいいニュースタイルのカフェレストラン「FLAMES」が気を吐く。そのすく下には、10月下旬に本場スペインそのままのバル 「CASA DE BUENO」がオープンする。地下100席を超える大箱で、渋谷になかった“大人の社交場”としてのスペインバルをつくるという。 渋谷駅に帰るセンター街に28日オープjンした中国最大の“火鍋レストラン”チェーン「小肥羊」。昼のオープニングレセプションには関係者が溢れて いた。この街には通りはあっても、まとまった街づくりのベクトルがない。それゆえに猥雑なのだが、近未来には六本木ヒルズ並みの再開発が進むという見方も ある。一足先に地下鉄の開通で駅前が再開発され、JR・東急電鉄中心の「エキマエ」が出来る。そうなれば「すり鉢」の底はなくなる。街のエネルギーはます ます周縁部に拡散していくだろう。いずれにしても、その変わりゆく渋谷がいま、面白いことは間違いない。 ※グルメブログ・ランキングに投票する!

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