コラム

肉食ブームの次は、新「野菜業態」が来る!

ついに出た!と言うべきか、肉寿司の次は野菜寿司"。1月27日オープンの六本木ヒルズ「野菜寿司 ポタジエ」が話題になっている。2010年は肉食ブームだったが、11年は"野菜ブーム"が来る?"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


“世界初の野菜スイーツ専門店”を打ち出し、野菜レストランの分野で独自の境地を切り開いてきた中目黒の「パティスリー ポタジエ」が1月27日、六本木ヒルズに今度は「野菜寿司 ポタジエ」をオープン、大きな話題となっている。オーナーパティシエの柿沢安耶さんが寿司というジャンルで、新たな野菜コンテンツの可能性を追求する業態とあって、国内だけでなく海外のメディアからも注目されているようだ。メニューは、ランチは「野菜ちらしずし」(1,575円~)とコース(3,675円)。ディナーは「野菜ずしコース」(5,250円~)だけとのこと。コース内容は、野菜の甘酒または前菜のスープ、茶碗蒸し、点心、テリーヌなどの一品料理とメインのにぎりと伝えられている。スイーツのような日常性がないのでどこまでリピーターを獲得できるか疑問だが、新たな野菜コンテンツの発信効果は抜群だろう。食の安全、健康ブームから野菜料理専門店、野菜レストランはここ数年じわじわと増えてきているが、「野菜=美味しい」という方程式がなかなか成り立たないことから、一気にブームになることはなかった。ブームを見込んで急速な展開をして潰れた企業もあったし、廃業する店も後を絶たなかった。そうした厳しい淘汰の波をかいくぐって勝ち残っているのは、本当の実力店かマニア的なリピーターに支えられたこだわりオーナーの個店である。調布に「野菜食堂 みさと屋」という店がある。表は無農薬野菜と無添加食品を販売する八百屋。店は目だ立たないがその奥にあり、連日、常連客でいっぱいになるという。魚屋が居酒屋を併設するケースは最近よく見かけるが、八百屋が経営するレストランは珍しい。オーナーの野菜にかける志がひしひしと伝わり、それだけで惹かれてしまう。オーガニック農家との出会いが創業のきっかけとなったというポタジエの柿沢さんもそうだが、やはり野菜業態で成功するにはオーナーの強い思いと意志が必要だろう。最近注目される野菜業態の店としては、“農業実験レストラン”をコンセプトにした「六本木農園」、高橋がなりさんが農家支援プロジェクトとして立ち上げた国立ファームの「農家の台所」などがある。「農家の台所」は都内にも店舗を増やし、恵比寿、新宿三丁目に続き、2010年12月には銀座の新しい商業施設アルボーレに4号店をオープンしたばかり。新しいところでは、「(畑)ハレノヒ」(表参道)で野菜の蒸し鍋を仕掛けたハレノヒが野菜をつかったつけ麺「(麺)ハレノヒ」を中目黒にオープンした。1月11日には、青山一丁目に「南青山野菜基地」という八百屋併設のレストランがオープン。「野菜」をキーワードに集まった30代のクリエーター達が立ち上げたという。昼は「やさい食堂」、夜は「やさい酒場」と昼夜の顔を使い分けた提案をしている。「野菜」を切り口にした業態、メニューはまだまだ可能性が広がりそうだ。2011年は、「肉食ブーム」から「草食ブーム」へのシフトが起きるかもしれない。

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