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コラム

台頭する“ニューマーケット”、ワイン業態最前線

「ワインバル」「ワインビストロ」「ワイン食堂」など、カジュアルワイン業態の店がもの凄い勢いで増えている。この一週間でワイン業態の新しい店を10軒ほど見て回ったが、立地に関係なく、空気感が良く、ワインの価格がリーズナブルで、売りの料理が明確な店は確実に客を集めている。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


池袋駅東口から徒歩10分、駅前の飲食街を抜けて南池袋の東通りをかなり歩いた路地裏に、1月31日、「ワイン食堂GOCCHI’S(ゴッチス)」がオープンした。厨房と客席の仕切りが無いカウンター席では作りたての料理を直接、客の元へ手渡す。売りの料理は「自家製ソーセージ」と「煮豚」、 そして「バーニャカウダ」。ソムリエがチョイスしたマニアックなワインが揃い、2,000円台のボトルも多い。11坪22席の小さな店だが、スケルトンからデザインしており、オープン直後にも関わらず昔から存在したような空気感がある。オーナーはグローバルダイニング出身で、昨年まで渋谷「ラ ボエム クアリタ」の料理長をつとめていた36歳の青山剛平さん。同じ店で店長をしていた浅岡憲さんもパートナーとして参画した。江東区に住む青山さんだが、「あえてこのような店の少ない場所で開業しました。地域のお客さんが常連で通ってくれるような店にしたいです」と語る。確実に繁盛する予感がした。彼らの店作り、客作りの考え方や覚悟、そして軸の明確なワイン、料理、サービスが“共鳴”を呼ぶからだ。池袋には昨年暮れにも西口丸井前の「日本再生酒場」2階に「グリルバル わいんや KITCHEN」がオープンした。オーナーは北の家族グループ、NBK出身の皆見成幸さん。ワインバル業態のスタンダードな店で、バランスのよいメニューが揃い、ワインはボトル3,000円前後が中心価格。居酒屋業界を知り尽くした皆見さんが、ワインを軸に“ポスト居酒屋”を目指した優等生的な店である。普通のサラリーマン、OLには使い勝手がいい店である。サラリーマンといえば、新橋にも新しいワイン業態の店が増えている。最近、超繁盛店として話題なのが縁尽(オーナーは三宅修司さん)が川崎店に続く2号店として焼鳥や焼トンのひしめき合うディープな新橋4丁目エリアに昨年夏オープンした「新橋寄りイタリアン カルネヴァーレ」。新橋のオヤジ族で賑わう一角に、清楚な女性客が次から次へと通う姿が毎日見られる。新橋マーケットを変えたといわれる「ビストロ魚金」を彷彿とさせる注目の店だ。その魚金グループも2月14日、本店の並びに「イタリンアバール ウオキン ピッコロ」をオープンする。また、芸人の北野誠さんが麦の穂出身者たちと組んでオープンした「ワインバー テラ」が1月27日、拡張してリニューアルオープンした。関西で7店舗展開しており、ここは東京1号店。今後、ボランタリーチェーンを増やしてくという。どちらかといえばベタな居酒屋の街という印象の池袋も新橋も、いまやワイン業態の店が“ニューマーケット”をつくりつつあると言っていいだろう。ワイン業態がここまで増殖を始めたのは、このコラムで何度も指摘しているように、マーケットが価格軸から価値軸へシフトしているトレンドを反映した動きである。客単価が2,000円でも3,000円でも5,000円でも10,000円でも楽しめる。行く相手、シチュエーションによって縦に幅がある使い勝手の良さ。店と客の“共鳴”が得られる場所。共鳴とは「価値のシェア」に他ならない。ワインへのこだわり、そこにしかない売りの料理、仕切りのないフレンドリーなサービス。そうした店側のメッセージが客に響き、客もリピーターになって応える。そんな共鳴現象こそ、価値の時代の繁盛店の条件だろう。販促や集客も、「共鳴=価値のシェア」がキーワードのツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアがツールとなる。「同意!」「いいね!」の世界である。ワイン業態は飲食マーケットばかりか、メディアとの付き合い方も変え始めている。 

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