下半期の注目キーワードは以下の通り。
1、「ネオ大衆酒場」
2、「イートグッド」
3、「ジャパンクオリティ」
4、「肉業態の進化」
5、「魚業態の進化」
6、「地方ブランディング」
7、「ネオエスニック」
8、「インバウンド」
前編では、「ネオ大衆酒場」と「イートグッド」を解説した。後編では、「ジャパンクオリティ」以下を解説したい。「ジャパンクオリティ」は息の長いテーマである。これは軸トレンドとして今後もさらに深化と進化を続けていくだろう。和食文化の原点である日本の伝統的な食材、調味料、調理法への原点回帰。発酵や熟成といった技術は古くて常に新しいものである。「純米地酒」「国産クラフトビール」「日本ワイン」などの酒トレンドも引き続き要注目。新しいところでは、乙類焼酎(本格焼酎)×強炭酸の「乙ハイ」(乙類ハイボール)がブームの兆しを見せている。ローカルブランドだった焼酎「泥亀」を強炭酸で割った「泥ボール」は「乙ハイ」マーケットをリードしている。4の「肉業態の進化」。これはいうまでもなく、「熟成肉」「ステーキ」「塊肉」「肉バル」「馬肉」「ジビエ」といった現在の肉ブームがさらに進化を遂げていくだろうということ。「熟成肉」はブームとしては下半期にピークを迎え、その後は淘汰が始まるだろう。逆にいえば、マーケットに定着していくということであり、特別なものではなくなる。それから、新業態として登場してきた「立ち食いステーキ」「立ち食い焼肉」は、そうは広がらないと見ている。完成度の高い立ち食い焼肉業態「治郎丸」の展開には注目したい。
5の「魚業態の進化」。24時間営業の「磯丸水産」の快進撃は、「鮮魚居酒屋」業態をリードしているが、同店を覗くと確実に食堂&大衆酒場化しており、七輪を囲む姿はあまり見られない。ということは、鮮魚居酒屋業態そのものは東京マーケットではブームが終焉したと言っていい。「牡蠣酒場」「オイスターバー」のトレンドも落ち着いてきた。新しい動きとして注目したいのは、魚卸しのプロや漁師ネットワークを活かした“新仕入れスタイル”でサプライズ感を提案する業態。市場に乗らない魚種や魚質の鮮魚を仕入れて、高級魚や珍魚を低価格で提供する「築地もったいないプロジェクト 魚治」。魚屋が経営する小売り兼業の「タカマル水産」型の業態もさらに進化するだろう。そしていまじわじわとトレンドになりつつあるのが「熟成魚」。高級寿司店では「寝かす」技はごく当たり前だが、すべて熟成魚という業態も出てきた。しかしトレンドになるには、低価格化が必要。その点で、ご当地居酒屋業態を展開するファンファンクションの新店「福井県美浜町」には注目。未熟成も含め6点盛りを一人前1000円で提供。名古屋の「熟成魚と日本酒 味彩屋」は熟成魚5点盛りを2500円で提供。日本酒のしゃぶしゃぶ「酒しゃぶ」もプラス1000円で同時に楽しめる。熟成魚と旨味純米酒は良くマッチングする。純米酒ブームに乗って「熟成魚」マーケットはブレイクするかもしれない。
6の「地方ブランディング」。「次のエー・ピーカンパニーか?」と言われているファンファンクションがこのマーケットのリード役。しかし、エー・ピーの「塚田農場」のような急速な多店舗展開は難しい。地方創生、地産池消(地産都消)、地域ブランド振興、六次産業化といった流れは国策でもあり、一次産業再生の視点からも飲食店の役割は高まる一方だ。軸トレンドであることは変わらない。「ネオエスニック」は、グローバルダイニング卒業生たちの活躍が大きい。とくに「アガリコ」ブランドを展開するビッグベリーの大林芳彰社長の功績は評価したい。パクチーブームも本格化してきた。アジアン系業態は、アジア各国の料理の進化ともシンクロし、さらなる広がりを見せるに違いない。それから、メキシコ、キューバや南米系のヒスパニック業態もさらに進化していくだろう。「インバウド」の動向からも目が離せない。「インバウンド」には二つある。外国人観光客だけではない。円安の進行、2020年の東京オリンピック需要に向けて、業態のインバウンドも急速に増えている。「日本から海外に」という動きだけでなく「海外から日本へ」という双方向の飲食業態輸出入現象が当たり前になる。双方向ビジネスを視野に入れた経営が大事になるだろう。