まずは、今年後半の主な商業施設オープン情報を時系列に並べてみる。
1、6月21日、ソウルプラネットの“ホテルのような”ライフスタイル複合施設「HOTEL EMANON(ホテル エマノン)」が渋谷にオープン!
2、8月28日、三菱地所の「豊洲フォレシア」1階商業ゾーンがオープン
3、9月19日、英真(駐車場経営)が池袋に食と生活がテーマの商業施設「WACCA(ワッカ)」をオープン
4、10月10日、三井不動産の新商業ゾーン「飯田橋サクラテラス」オープン
5、10月10日、サザビーリーグと新潮社が“衣食住+知”のキュレーションストア「la kagu(ラカグ)」が神楽坂にオープン
6、11月13日、野村不動産の都市型商業施設「GEMS市ヶ谷」がオープン
7、11月22日(予定)、セブン&アイ・ホールディングスが大型商業施設「グランツリー武蔵小杉(GRAND TREE MUSASHIKOSUGI)」を2014年11月下旬にオープン
8、11月30日、オリックス不動産の商業施設「KIRARI TO GINZA(キラリトギンザ)」を銀座一丁目にオープン
それぞれの商業施設の概要はどのようなものか。
6月21日オープンの「HOTEL EMANON(ホテル エマノン)」。運営は、港区・日の出の「TABLOID(タブロイド)」などを手がけるソウルプラネット(代表・佐藤伸一氏)。コンセプトは「全ての来客に愛される、いつまでも居たくなる、毎日訪れたくなる」、ライフスタイルの拠点「LIFE STYLE HUB BASE」の創出。1階の「DAILY RESTAURANT(デイリーレストラン)」と「COFFEE BAR(コーヒーバー)」では、「EAT LOCAL」をコンセプトに、三浦半島で採れたフレッシュ野菜を使ったイタリアンベースのメニューを提供。そのほか、生活を豊かにする家具や雑貨を取り揃えたセレクトショップを複合的に展開する。8月28日オープンした三菱地所とIHIの共同事業として「豊洲フロント」に続く第2弾となる大規模オフィスビル「豊洲フォレシア」。1階の商業ゾーンには、ダイゴインターナショナルの60日間ドライエイジングを施した「超熟成黒毛和牛鉄板焼 宮地 豊洲店」、ポトマックの手づかみスペアリブ「リブラボキッチン」など13の飲食店テナントが出店した。地域や周辺の環境に配慮したハイテク型の施設であることが特徴。
9月19日、池袋駅東口にオープンした複合商業施設「WACCA 池袋」は、地上8階からなる施設には全27テナントを展開し、地下1階から4階には駐車場100台を完備する。最大の特徴は、5階・飲食店街の一角にキッチンをそなえたイベントスペース「キッチンスタジオLUPE(ルーペ)」を設置し、イベント会社の47プランニング(代表・鈴木賢治氏)の協力のもと、年間を通じて食をテーマにイベントを開催。「食と生活」をテーマに集えるコミュニティスペースを目指す。10月10はオープンが二つ。まず、三井不動産の「飯田橋サクラテラス」は「次世代への街づくり」をテーマにし、飲食を中心に物販・サービスなど、新業態7店舗を含む計25店舗が出店。飲食出店テナントは、スパイスワークス(代表・下遠野亘氏)の「魚介ビストロ 貝殻荘」、ゼットン(代表・稲本健一氏)の「PCH」、セレソン(代表・岡田章氏)の「trattoria Gran Bocca(グランボッカ)」のほか、光が丘興産「Luccollina(ルッコリーナ)」、DIPMAHAL「Dippalace(ディップパレス)」など幅広い店舗構成。
同じ10月10日、サザビーリーグ(代表・森正督氏)と新潮社により、新潮社書庫をリノベーションした新商業施設「la kagu(ラカグ)」が東西線神楽坂駅前にオープンす。同店は、流行に流されず、“昔からあるもの”や“これからも大切にしたいもの”に価値を見出すという意味を込めた“REVALUE(リバリュー)”をコンセプトに「衣食住+知」のライフスタイルを提案する。1階には、“MEAT&BREAD”をコンセプトにした「CAFE」を展開。テラスでは、定期的にファーマーズマーケット「la kagu market(ラカグマーケット)」を開催していく。11月13日にオープンする野村不動産の都市型商業施設「GEMS市ヶ谷」。市ヶ谷駅から麹町方面に向かう日テレ通りを上った交差点角地。日本初出店となるイタリア創業のカフェバール「Lucaffe(ルカフェ)」(テクタイトフード&サービス、代表・松本能和氏)や東京初出店の炉端居酒屋「伊達藩いろり屋 二代目ごいち」(林デザイン オフィス、代表・林泰弘氏)など、全10店舗が出店する。
11月22日オープン予定のセブン&アイ・ホールディングスの大型商業施設「グランツリー武蔵小杉」は、地上4階・地下2階建てで、売り場面積は3.7万平方メートルの規模。グループのイトーヨーカドー、そごう・西武、ロフト、アカチャンホンポなど約150の専門店が出店する。飲食テナントには、渋谷のイタリア食堂「オステリア ウララ」などを運営するダルマプロダクション(代表・古賀慎一氏)の新業態、和甘味カフェ「雨時々小豆」や、「手打ち蕎麦 石月」を運営するシナジーの新業態2店舗が決定。そして10月30日、オリックス不動産の銀座一丁目、中央通りに誕生する商業施設「KIRARI TO GINZA(キラリトギンザ)」。出店するのは50店舗を上回るテナント。国内最大規模でオープンするのは、行列のできるレストラン「俺の」系列から「俺のイタリアン TOKYO」「俺のフレンチ TOKYO」の超大型複合店舗、台湾発の小籠包の有名店「鼎泰豐(ディンタイフォン)」。エリア初では、パンケーキブームの火付け役「Eggs’n Things(エッグスンシングス)」が出店する。
これらの商業施設の概要から浮かびるポイントは以下の4点だ。
1、「ホテル エマノン」や「la kagu(ラカグ)」にような“ライフスタイル提案型”。欧米の新しいカルチャーを取り入れたり、日本に古くからある伝統や文化を現代に甦えらせたりしながら、街づくりと店づくりをそいていくスタイル。テナントは高感度、ハイクオリティでなければならない
2、「豊洲フォレシア」や「グランツリー武蔵小杉」のように、地域の人口急増に対応した新世代型の街づくりを志向するスタイル。生活密着型のカジュアルベーシックでありながら飽きの来ない新しいコンテンツも求められる。
3、「飯田橋テラスハウス」や「GEMS市ヶ谷」のようなビジネス立地の空白地帯を埋めていく新需要対応型のスタイル。ビジネスマンが他地域に流出しない夜の需要を喚起するような魅力ある酒場型のテナントが必要
4、「WACCA 池袋」がイベント会社の47プランニングとイベントスペース「キッチンスタジオLUPE(ルーペ)」を設けたような“情報発信型”のスタイル。地域活性化うあ生産者支援が流行りだが、クラフトマンショップを集結するような施設があってもいい。
いずれにしても、これからは、地域密着、生活者&ワーカーに対して「高質な日常」を提供していかなければ“勝てる商業施設”にはなれないだろう。コンセプトの弱いリーシングで出店したテナントを不幸にしない開発であってほしい。