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【Next Chapter 経営者たちの未来図】博多の大繁盛店「博多炉端 魚男」、次々と繁盛店を創る敏腕プロデューサー「鬼才」 森 智範氏の今

Next Chapter 経営者たちの未来図。このコーナーでは創刊20年を超えたフードスタジアムの誌面を賑わせてくれた、繁盛店経営者の今にフォーカスを当てて、インタビューしていきます。
第2回目は、博多の大繁盛店「博多炉端 魚男(フィッシュマン)」のオーナーであり、全国で飲食店プロデューサーとして活躍する森 智範さんです。大手飲食企業の新業態開発プロデューサーとして順調に仕事をされていた、そんな最中にコロナ禍突入。飲食店の未来のための新しい資金調達のあり方としてのファンド組成が大失敗、屋台骨である「魚男(フィッシュマン)」のより一層の強化・人材育成、過去最高売上更新、食べて健康になる「ウェルビーイング」との出会い、今後の活動そして食産業への想いについてお話を伺いました。


大山:森さんといえば博多の大繁盛店「魚男(フィッシュマン)」のオーナーの傍ら、飲食店さんのプロデュースをやられていたかと思いますが、コロナ直前・期間中はどのような活動をされていましたか?

森さん:はいそうですね、魚男をやりながら、コンサルをずっとやってましたよね。コロナのちょうど直前は三光マーケティングフーズの「金の蔵」(博多金の蔵)とか、一丁(北海道一丁)さんの業態プロデュース、チムニーさんの商品開発などをやっていましたね。あとは個人店で 「満月博多」をやられているリロードエッジさんで「梯子」というお店をつくらせてもらったり、札幌や金沢の企業さんのプロデュースをやっていましたね。

 

◼️大手町「梯子(はしご)」の記事(2023.0123)

大山:実際コロナに入って時、最初はどんな印象でしたか?

森さん:いや、よく分からなかったですよね。 「これがどんなものなのか」というか、まさかあんなことになるとは、その時は全く思わなかったですよね。 夏ぐらいに終わるだろうなみたいな感じでしたよね。

 

大山:実際、お店の状況とかはいかがだったのですか?

森さん:でもみんな同じような状況だと思っていて、そこそこやってたんですよ。 あれが2020年の3年、4月ぐらいでしたよね。4月頃は普通にお店にお客さんは入っていたイメージですね。 そこから、なんかヤバいヤバいみたいになってきて、まだマスクしてる人も少なくて、そこから感染者も爆発的に増えていって、緊急事態宣言が出だしたじゃないですか。あれでてき面に街から人が消えましたよね。

それで、どうしたらいいんだってとこで、ゴーストレストランを始めたりしてましたよね。 店はどうするかって言ったら、どうなるかわからなかったので働く人には基本的には給料を払っていましたね。

 

大山:あと飲食業界向けのファンドの組成というプロジェクトもやられていませんでしたか?

森さん:そうなんですよね、飲食店の資金調達のあり方としてファンドを組成して、そういったファイナンスの選択肢もありなんじゃないかということでプロジェクトを進めていたんですけどね。それを結局やらなくて、お金を溶かしちゃってちょっと苦しんでましたけどね、一時期(苦笑)。

トータルで、ファンドマネージャーとかも高額で雇っていたので結構お金かかってて、最終的に4,000万ぐらいは使っていましたね。 いや資本やらいろんなもの入れて5,000万くらいを投じて、いろいろやってたんですよ。 でも、花どころか芽も出ないで終わってしまって(苦笑)。

もうあれは失敗として、勉強ですね。向こう(ファンドマネージャー)の言いなりになっちゃんですよ。 自分の意思としては違うとかあったんですが、なんか言いなりになっちゃって、それが敗因ですね。 だからピッチ(プレゼン)とかで説明するのも、飲食をやっている僕じゃなくてファンドマネージャーがやっていたので、どこか刺さらなかったりして。 でも「まあ、そういう世界なんだな」と思いながら。

メルカリの創業者とか、いろんな人に会わせてもらって話してそれはそれで、タメになったんですけどね。 人脈も広がって、ビジネスの話とかも教えてもらってすごくタメにはなったんですが、まあなんせ授業代が高すぎたと(苦笑)。店は店として別なのですが、個人としての現金はそれでだいぶ傷みましたね(苦笑)。

 

大山:とてつもない高価な授業料でしたね(苦笑)。ファンド組成から撤退しようと思ったのは、始めてどれくらいの期間でしたか?

森さん:2年くらいやって、それでメンバーが言うような通りにならなかったですよ。ファンドの話をしても、全然その周囲の人たちが乗り気じゃないというか、話していけばやっぱりわかるじゃないですか。 それで「これは無理だな」と。だからこう、ちょっと強めに「いやいや、結局言った通りにならないじゃん。」 って。僕としてはファンド・投資の世界と飲食業界をくっつけたかったんです。その窓を自分がやりたかったんですけどね。そうはなりませんでしたね。それで2023年くらいに撤退しましたね。

 

大山:森さんらしく、(世の中より)3歩も5歩も早かった感じですかね(苦笑)。お店としてコロナになって、 変えた部分というのはどのようなところですか?

そうですね、正直言って自分がフィッシュマンに行くかというと、行かない店になってたんですよね。なんかこうウケを狙うというか、そっちの方ばっかり自分が考えていて、本来の「自分が行きたい店」っていうところを失っていたんですよね。当然、そこには人材教育の失敗があったりして。

自分が思っていることが10とすると4ぐらいしか、できていなかったんですよね。 そこでこれを機に変えようというところで、今やっている業態にも繋がってくるのですが、僕にはフレンチの「クイーン・アリス」の石鍋さんという師匠がいて、その上にミッシェル・ゲラールという三ツ星レストランの師匠がいて、彼らは「食べて健康になる」というのを、70年前くらいから提唱してたんですよね。 石鍋さんは「俺たちは、病気じゃない人の医者だ」ってよく言っていたんですよね。

それでやっぱり石鍋さんがおっしゃっていた「人のためになる」っていうところがずっと僕の中にあって、自分ももう50歳越えていて年だし、体調を崩しちゃったという経験もあって、それでそういうものを取り入れてみようと思って。そこから栄養学の方とかサプリメントの方とかと話していった中でできたのが、あの大手町の「梯子(はしご)」というお店なんです。

 

大山:では、フィッシュマンも、もちろんエンタメ要素はあるけれども、そういった「食べて健康になる」といったメニューに変えたということですか?

森さん:そうですね、ベースをその「梯子」で作らせていただいて、その年の秋に高円寺で「動悸(ときめき)」を作らせてもらって、うちも変えたいけど、当時は人材が弱かったんですよ。

 

◼️高円寺「動悸(ときめき)」の記事(2023.1009)

おととしの夏から秋ぐらいに、ちゃんと意思をわかってくれ想いを共有している人材が入り出し、そこで見切りをつけて10月、11月ぐらいに、バーっと変えていった感じです。

 

大山:では今のフィッシュマンは以前のものとは全く別物ということですね?

森さん:全く違います。形だけ残してありますけどね、あの肉じゃがとか。でもレシピが全部変わってますから。 味の方向性は全部一緒なんですけどね、博多の美味しい居酒屋というのは。

フィッシュマンの名物料理の一つ「肉じゃが」。上のピンクのソースは、ビーツを使用したオリジナル。

 

大山:そこから実際にお店が復活していくっていうのは、だいどのくらいでしたか?体感的には。

森さん:おととしの春、 23年の緊急事態宣言が解除されてからすぐ売上1,000万に戻りましたね。その時はまだ改善前のフィッシュマンの時ですけどね。そこから徐々に徐々に人がそろい始めて、そこからですね。 年末にはぼぼ改善して、自分が思っている8割ぐらいのお店にはできているかな、と。

前年の2022年ぐらいから株式会社絶好調さんに人材育成で入ってもらって、とにかく人に投資をしましたね。定期的に勉強会をやってもらったり、ソムリエ資格を取ろうというスタッフがいたら全部サポートしたり。2025年現在、魚男(フィッシュマン)は食べて健康になるお店に変えて、26坪で平均2,200万円/月売っていますかね。17年目で過去最高売上を更新しました。健康業態は儲かりますよ(笑)。

 

大山:そして、こちら(この日の取材場所)のお蕎麦屋さんに関しては、どういうきっかけで作られたのですか?

森さん:こちらは不動産をやられている方から依頼があって、浅草の花やしきの目の前のこういった空き物件をただ賃貸するだけ、 それじゃつまらないねって話がちょうど出たらしいんですね。地主さん達との間で。

「それじゃあここで飲食店を土地の価値を上げましょう」と、そういったことをやりたいと話をされてて。 そんなモデル店舗としてやっていきたいという話の中で、浅草って結構蕎麦の名店が多いんですよね。 ということは、需要が高いと思ったんです。 以前に新橋で蕎麦居酒屋のプロデュースをさせてもらった時に魅力的だなと思っていて、それで「蕎麦をやりませんか」ということで。

 

◼️「蕎麦酒場 蕎麦屋にぷらっと」の記事(2018.1003)

浅草のお蕎麦屋さん、どこもすごい並んでますから。それで「そばをやりましょう」と話をして、知り合いで永山さんっていう、蕎麦職人歴50年の職人さんがいて、その方が蕎麦の先生のような活動をされていて、本も書いている方なのですが、その方にちょっと入ってもらってお店を作りました。

でも、今までの蕎麦だけだとつまらないねということで、ウェルビーイングの要素を入れて、蕎麦は完全グルテンフリーでいこうと開発しました。蕎麦屋さんの現状でいうと、平成の30年間で3,000軒あった蕎麦屋が1/10になったそうで、なり手がいないと。でも僕は蕎麦屋って粋でかっこいいと思っていて、若者たちに知られてないだけだから、そのかっこよさが知られるような「蕎麦屋って、かっこいいんだな」と思ってもらえるようなお店を作ったらどうですか? って言ったら、その先生も乗ってくれて。 だから、この店は「新蕎麦屋」、「一歩先行く新蕎麦屋」というのを目指してやっています。

 

浅草 更科天狐

蕎麦はクラシックとモダンに分かれており、古きをリスペクトしつつ今回新たに開発した創作蕎麦が楽しめる。

蕎麦前、お酒のお供も充実しており多様に楽しめる。

ボーンブロススープで仕上げた「おかめそば」。ユニークなデザイン、斬新で思わず写真を撮りたくなる、まさに魚男(フィッシュマン)らしさは健在。

 

そこからスピンオフで、立ち食い蕎麦とかそういうのもやっていこうと思ってます。実際5月からは横浜関内で60年やっている有名な立ち食い蕎麦「相州そば」の大将とコラボをして、このお店の店先でやっていきます。

そういったコンセプトを作って外に持っていって、スープストックさんとか、フレッシュジュースバーみたいな感じで、立ち食い蕎麦で栄養チャージみたい載っていいよね、ということで今企画してますね。

 

大山:やっぱり森さんは考えることが、面白過ぎますね(笑)。

森さん:今、とあるYouTuberの人が「へぎそば」を作っていて、グルテンフリーなんですよ。 へぎそばって一食60キロカロリーなんです。 それで「これを14回食べると1キロ痩せるんですよ。でも栄養はちゃんと入っています。」 みたいな(笑)。「へぎそば」って海藻がたくさん入っているんですよ。海藻ってカロリー低いじゃないですか。健康というのを若い子たちに伝えるのに「健康」「健康」と言っても、伝わりきらないですよね。なので「ダイエット」や「美肌」のような切り口、入り口はいいかなと思ってます。

 

大山:そして今後ですが、こちらの企画は「以前」と「今」の活動や想いの変化などについてお聞きしてきたのですが、今後の活動としてはどのようなことをやられていこうと思っていますか?

森さん:自分自身としては、これまで話してきたようにウェルビーイングのプロデューサーとして考えています。 ウェルビーイングって、もちろん食事だけじゃなくて心と体と栄養バランスであったり、トレーニングなどあるのですが、 僕は中はベースとして「食の栄養失調」を改善するフードの部分のプロデューサーとして、活動していこうと思っていて。ウェルビーイングと「食」を結びつけていきたいと考えているんです。

今話しているのですが、1,500億円規模の大手IT企業さんの社食もやります。そこで4つやるんですけど、まず一つにメディカルチェック。対象者の現在の健康の状態を特定すること。そして社食だけだとランチになっちゃうので、それ以外の時間帯は家でも健康が実現できるように常温・冷凍の弁当を作ります。

ウェルビーイングに目覚めた森さん。とっても若々しい。自らメディカルチェックや体質改善をされているという。

 

あとはコンビニと言ってますけれど 、セレクトショップですね。食の安心安全なものを取り集めたセレクトショップを作ろうとしています。調理器具や調味料も置きます。4つ目に僕がこれまで学んできたことで独自の作り込んだサプリを作っていこうと思っています。

今そちらの企業の社長さんにも健康プログラムをやってもらって体感してもらっているところです。そういった形で、さまざまな人の健康のサポートができるような、相談できるような人になりたいなと思っています。

 

大山:壮大な計画ですね!店舗の方のプロデュースの計画もあるのですか?

森さん:はい、今、札幌2店舗決まってます。そのほか、東京や船橋など、基本はウェルビーング系の「食べて健康になる居酒屋」を作っています。

そうですね、それを広げるっていうのが僕ももう55歳なので、最後の仕事にしたいなと思いますね。

 

大山:素晴らしいですね。よりパワーアップした森さんの今後の活動にも注目していきたいと思います。ありがとうございました!

 

編集後記

森さんと初めてお会いしたのは十数年前「ものすごいお店が博多にある」ということでお邪魔をした「博多炉端 魚男」その向かいにあった「PALOMA+1 GASTROBAR 」をオーナー自らご案内していただいた時でした。とにかくその発想力と圧倒的な繁盛店ぶりに度肝を抜かされたのを覚えています。常に1歩、いや3歩も5歩も先をゆく森さんのクリエイティビティ。コロナ禍や新事業で辛酸を舐めた期間を経て、肩肘張ることなくナチュラルにそしてパワーアップした森さんを今回の取材で感じることができました。「食」領域においてより広く活躍していくであろう森さんの今後にも注目していきたいと思います。(聞き手:大山 正)

 

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