【Airレジ事業責任者 大宮英紀氏インタビュー】
《大宮氏プロフィール》
㈱リクルートライフスタイル執行役員 大宮英紀氏
1979 年生まれ。大学卒業後NECに入社し、主に証券会社の新規システム開発などに携わる。2007年に株式会社リクルートライフスタイルに転職後、クーポン共 同購入サービス「ポンパレ」の立ち上げや「じゃらんnet」のサービス開発を担当。2013年、POSレジアプリ『Airレジ』をスタートさせる。現在では総責任者として、サービス開発の推進を行っている。
―「Airレジ」は、2013年11月のサービス提供開始からこの2年間、快進撃を続けていますね。
そもそも、大宮さんの一番初めの開発意図はどのようなものだったのでしょうか?
大宮 僕はかつて「じゃらんnet」の部署にいたのですが、仕事を続けていくうえで、だんだんメディアとしての価値を多様化していく必要があるんじゃないかと感じるようになったのが最初のきっかけです。
リ クルートというのは、「ホットペッパーグルメ」や「じゃらん」のように、クライアントからの広告出稿料やシステム利用料などで成り立っている事業が主力の 企業です。例えば、「じゃらん」というのはホテルや旅館などの広告主様と、そこに来るお客様を繋げるメディア。お客様が宿泊するごとに成果報酬として対価 をいただくというビジネスなので、より成果を上げるためには、広告主であるホテルや旅館にいつも予約受付可能な状態でいてもらう必要があるんですね。
と ころが、ホテルや旅館の「宿泊管理課」や「予約課」といった部署というのは、日常業務がめちゃくちゃ煩雑で大変なんです。そうした実情を知るにつれ、クラ イアントの日々の煩わしさを減らすお手伝いをしない限り、今後僕らのメディアとしての価値自体が減少していくだろうなと思うようになったんです。
―なるほど。顧客の業務支援に将来の可能性を見出されたんですね。
大宮 そうです。ただ広告を載せていればいいというだけじゃなくて、もっと日々の業務のなかに入り込んでお客さまを支援できて、かつビジネスとしても発展性があるものは何だろうと考えたうちの一つが「レジ」でした。
いま、インターネットの発達によって、業務革新がすごい勢いで広がっている。それなら、iPhoneでレジって作れるんじゃないかな?と思ったんです。
―「Airレジ」では、注文入力や会計だけでなく、
ス タッフがレジの打ち間違いで計算が合わなくなってお客様を待たせてしまったり、レジ締めの際に首っぴきでジャーナルを追って間違いを探さなければいけな かったりというような、レジ周辺でよくある光景もこのPOSアプリ導入によって容易に解決できてしまうわけですが、開発の原点の部分で、使い手の実情に寄 り添ってスタートされたんですね。
大宮 従来のPOSレジは導入コストが高く、小規模な店舗様の場合、数十万~百万もか かるシステムを取り入れる余裕はなかなかありません。なので、最初は単純にiPadがレジになることで、データが一元化できるとか、ジャーナルをわざわざ 出力しなくてもいいから便利だよねという感じで、自分たちの持っているノウハウと共に「iPhoneやiPadでこんなことができれば、お店のいろんな可 能性がもっと広がるはずだ!」と、なかば信じてトライした部分が大きかったですね。
実は当初はもっとこじんまりとした規模を想定していたんですけど(笑)、思ったより評価をいただいたというか、うまくいきましたね。そこからニーズに応えて決済サービスや集客支援サービス、店舗業務支援サービスなどと次々に連携していきました。
―今、アカウント数が実に21万アカウントにまで到達して
大宮 それは売り上げの作り方の問題で、お店のコア業務の部分に関しては、無料で提供してもいいと思っているんです。今後もAirレジの会計機能そのものは無料でいくと決めています。
例 えばGoogleさんって検索やGメールは無料じゃないですか。そして広告による収入をベースにしている。LINEさんではメッセージが無料で、スタンプ 購入とか、他のサービスは有料です。このように最も必要度が高い部分は無料にしながらも、それ以外で収益を得るマネタイズのモデルが組めれば、継続的にビ ジネスが成り立つと思っています。
例えば、飲食店さんの営業中コアタイムに、何卓に何名入っているかをオンラインで把握できれば、空いている卓に関して「今すぐ入店可能」と効率的に予約を取ることができます。「Airレジ」によって僕らにはこういった情報が入ってくるので、潜在的なビジネスの可能性が広がるわけなんです。
また、お店に役立つオススメのサービス各種を取り揃えたのが「Airマーケット」という関連サイトで、決済サービス、仕入れ、シフト管理などがAirレジと連携する事で、いろいろな業務が楽になるシステムになっています。
―POSレジそのものが無料で使えるとなれば、小規模のビジネスを始めたい人にとっても大きなチャンスが生まれますね。
大宮 そうですね。POSレジのサービスは、広告を媒介とするメディア事業とは全然違います。レジは店の基幹業務であり、各店舗につき一台しか使わないものなので、お客様にとって使いやすく、喜んでいただけるものを作るべきというポリシーでやっています。
なので、例えば社内の別の部署から「連携して企画を立ち上げませんか?」という提案があったとしても、お店側の業務が複雑になってしまうような内容ならばやらないと決めています。
―なるほど。徹底されているんですね。
昨秋、顧客であるお店のみなさま向けに開催したカンファレ
現在、「Airレジ」導入店舗のうち約50%が飲食店さんで、ほかには美容院、各種小売店、接骨院などの治療院さんがいらっしゃいます。
例 えば飲食店の場合だと、ABC分析一つとっても、Aゾーンが何割で、B、Cゾーンは各何割と、店のメニューをきちんと把握することはすごく大切ですよね。 それによって原価計算もできるし売り上げも作れますから。でも、実際には一番人気のメニューは把握できていても、二番目、三番目に人気のメニューは把握さ れていないお店も多いと思うんです。
例え大手企業でなくても、アプリの力を借りて能動的にこうした分析ができれば、小規模店舗の売り上げをぐんと底上げすることだって可能になる。それが、僕らがやりたいことです。
―それは個人店にとって大きな強みになりますね。
ある程度規模の大きい店舗になると、iPadは何台か必要になるのでしょうか?
大宮 業態にもよるんですが、基本は一台でやっていただいています。また先々にはiPhoneでオーダーエントリーできるようにもしたいと思っています。
―売り上げデータの記録に関しては、まだまだ感覚的に紙などの実体に確実性を感じる方も多いと思うのですが。
大 宮 そうですよね。でも、逆にいえばクラウド(*クラウドコンピューティング。データをインターネット上に保存する使い方、サービスのこと)上に貯めてお いた方がむしろ安全だと思うんですよね。だって燃えたり無くなることもないですし、どこからでも見れますし、ノートみたいにバラバラにならず、一か所に データが集まっているんですから。
レジのジャーナル上にあったデータを、一回ノートに書き起こしてアナログデータにして、さらにそれを会計ソフトに入力し直す…。果てしなく大変な作業です。
それらが最初からデジタル上にあって、そのまま会計データとして流すことができれば、労働時間を短縮して、他の作業に注力することができます。Airレジと関連サービスは、そうしたことを可能にすると思っています。
―確かにそうですね。
他社のPOSレジアプリと比較した場合に、「Airレジ」に大きな差別化要因があるとしたらどこでしょうか?
大宮 「Airレジ」の場合、それを使うことによって集客サービスや予約管理サービスなど、いろんなサービスとシームレスに繋がっていくことで、業務が多面的にラクになるという所はあると思います。
ま た、飲食店さんにヒアリングすると、集客、採用、教育など、課題はまだまだいっぱいあるんですよね。そういった部分に対しても業務支援したいという思いが あるので、今後はAirマーケットを通じて、お店のみなさまが自分たちに必要なサービスをフラットに選びやすい状態にしていくことを考えています。
それと、やはり人間の慣れというのはすさまじいものがあるんですよ。いわゆるガチャレジをずっと使っていた場合、「使い慣れている」ということに対する優先度はすごく高くて、どれだけ「Airレジ」 がカンタンで便利とはいっても、やはりサービス単体だけでは乗り越えられない壁があるんです。そういった意味で言うと、リクルートの強みとして「サービス の質+人の力」がソリューションとなります。お客様の心理的ハードルを下げて全面的にサポートできる体制が整っているという部分は差別化要因の一つだと思 いますね。
―現場はオペレーションが変わることを一番怖れると思うのですが、では例えiPadに触ったことのないおじいちゃんおばあちゃんであったとしても、安心して導入できるような体制が用意されているんですね。
大宮 はい、出張など一部有料の部分もありますが、基本は電話やチャットなどを通じて全面的にサポートさせていただきます。エアレジ自体の機能や使い勝手だけでなく、導入に対するサポート体制やサービスが整っていることや、ノウハウがあるという意味では、リクルートには企業としてのアセット(資産)があると思います。
例 えば軽減税率導入に関しても、皆さん何か対策を取らないといけないとは思ってらっしゃると思うんです。でも今使っているレジに慣れていて、当たり前になっ ているゆえに、便利なシステムをご存知ない方もまだまだ沢山いらっしゃると思うので、今後「もっとずっとラクにできるよ」ということを、今回のようなイベ ントや、色々な方法でによってお伝えしていければいいなと思っています。
―日常業務を楽にしてくれるものに関しては、その価値を伝え続けていく必要がありますね。本日は有難うございました。
■コラム一覧
【第1回】0円でカンタンに使えるPOSレジアプリ「Airレジ」 スペシャルインタビュー!
2016年 4月6日
【第2回】【イベントレポート】 3月3日開催! 『iPadを利用したカンタン、スマートなPOSレジのご紹介』@Apple Store 銀座
2016年 5月11日
【第3回】0円でカンタンに使えるPOSレジアプリ「Airレジ」が、飲食経営を革新させる。ビックカメラとタッグを組んで、4月19日から「Airレジ」の常設のサービスカウンターを設置。
2016年 5月13日