今や、分煙は当たり前!? 努力していない店は選ばれない時代に
街の居酒屋や喫茶店に入ると、ぷかぷかとタバコを吸っている人の姿が当たり前のように見かけられたのが、わずか数年前。2010年4月に、突如、神奈川県で受動喫煙防止条例が施行されて約1年半。その間にも、兵庫県や千葉県など他県で喫煙に関する条例作りが進み、神奈川県では罰則の適用もスタートするなど、ここ数年で飲食店とタバコを取り巻く環境は大きく様変わりしている。
この急激な変化に不安を覚える飲食店経営者は少なくない。神奈川県の条例などがマスメディアで取り上げられることにより、世間で、分煙を求める声が大きくなり始めているからだ。お客を大切にしている店であれば、今や、分煙は当たり前。逆に努力していない店は選ばれない時代になってきている。
しかし、いざ分煙の検討をはじめると、なにからすればいいか分からないというのが飲食店の実情。さらに、コスト面でも問題が出てくる。例えば、神奈川県の条例通りに適合させようとすると、新規店ならまだしも、既存店では排気設備の強化やパーティション工事、付随する建築・消防と法規制の課題も多く、400~500万円程度は掛かる。はっきり言って、全国規模の大手チェーンならいざ知らず、町場の飲食店にとってはストイックな分煙規制は死活問題だ。
その中で、現在、果たしてどのような取組みが分煙のスタンダードとなっているのか。“分煙コンサルタント”として数多くの飲食店から相談を受ける室内空気環境の専門メーカー、トルネックスの山口さん曰く、前提として分煙は意識するべきだ、と言う。
「時代の流れですから意識した方がいいのは間違いないですが、方法が大切です。分煙は、“客が選択できる”ことが大事ですから、“喫煙”“禁煙”、“時間帯分煙”でも、店内の喫煙環境を明確に伝えることは大切です。ですから、“店外表示”“予約時の確認”などは、今や、当たり前です。その上で、資金力があるなら、店の雰囲気は壊さずにしっかり分煙していく改装案も可能ですが、多くの飲食店オーナーは、最低コスト&最少労力でできる分煙法を探しています。雰囲気も壊さず、まったく店のスタイルを変えずに・・・というのは、例えば1フロアでテラスもない店などでは、どうしても厳しいものがありますが、コストを抑えて、しかも条例に即したもの、というのが最も多い声です。
そこで開発したのが“分煙専用のエアカーテン”や“喫煙ブース”です。エアカーテンは、神奈川県受動喫煙防止条例の分煙方法論にも掲載されております。また、喫煙ブースは徹底的にローコストを追求したブースで、パネルは店の雰囲気に併せて張り替えることも可能です。機器代は650,000円~。10月に厚生労働省から受動喫煙防止対策助成金の発表があったので、自分の店が対象になるのかどうか、問い合せが増加しています。今後、分煙はますます必要になってきますし、店の業種業態に合わせて、我々もベストなご提案ができるよう、業界タッグとなって取り組んでいく課題であると考えております」(同氏)
今の時代、大事なのは情報だ。分煙メーカーに同業者の情報が集まっていることは間違いないので、不安を感じたら先ず、相談してみることも得策だろう。
また、見逃せないのが厚生労働省が始めた受動喫煙防止対策助成金制度のニュース。顧客が喫煙する飲食店やホテル・旅館等の中でも空間分煙に取り組む事業者に対して、財政的支援を行うことを目的として10月1日より開始されている。
(「受動喫煙防止対策助成金制度」http://niigata-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/niigata-roudoukyoku/judou_kitsuen_boushi_joseikin_pamph_binder.pdf、pdf 355KB が別ウィンドウで開きます)
対象事業主の条件に該当し、一定の要件を満たす設備であれば、喫煙室の設置に必要な経費や喫煙室以外でも受動喫煙を防止するための換気設備の設置等の措置に必要な経費について、費用の1/4(上限200万円)を受給できる可能性がある。工事前に申請の必要があるなど、条件が設定されているので、申請先となる都道府県労働局のWEBサイトを、必要書類の確認なども兼ねて覗いてみよう。
それにしても、お客の要望に応えようと、分煙など、サービスに取り組む飲食店が増えているにも関わらず、さらにストイックに、数字や業態などで細かく規制をしていく条例が本当に必要なのか? こういった飲食店の努力が無駄に終わるような新条例の施行などには、なんとしても歯止めをかけたい。