三井不動産株式会社
商業施設本部 リージョナル事業部 事業推進グループ 主事 品田豊隆さん
———「ららぽーと」「赤坂Bizタワー」など御社が管理する商業施設において、受動喫煙問題に関してどのようにお考えですか?
世の中の風潮的に分煙の方向に進んでいますが、我々としても、幅広い層の方にお越しいただくという趣旨の基、タバコを吸う方も吸わない方もお客様であるという見解を前提にしています。
両者が満足できる環境を整え、誰もが快適に過ごせる空間を創りだしていく事がデベロッパーとしての役割だと考え、日々、開発に取り組んでいます。
———具体的な取組み策について伺いたいのですが、これまでにお客様及び飲食店からタバコに関する意見等は上がってきていますか?
過去、喫煙されるお客様から「タバコを吸える店はないの?」というご意見を多数頂戴した時期がありました。
これに対し当社では、タバコを吸う方に配慮した環境創りとして、1フロアに最低1カ所は公共の喫煙室を設けるという基準を社内規定に組み込みました。また、飲食テナントに区画を割り当てる際、喫煙できる店をバランスよく配置する等適切な喫煙スペースの確保や分煙状態を作る為の細かい設備指導を行なうようにしており、これら喫煙に対する取り組みが、ひいてはタバコを吸わないお客様への快適な空間作りにつながっていると考えていす。その結果、現在、タバコに関する問題はほとんど上がっていません。
———実際、飲食テナントの誘致や出店依頼を受ける際、禁煙、喫煙等、お店側のタバコに関する環境は選考基準の対象にしていますか?
いいえ、タバコに関する対応等は選考に一切関与しません。判断は各店舗毎に委ねています。但し、喫煙できる店にするには当社規定の厳しい基準に沿った仕様まで引き上げる事が原則となります。不特定多数のお客様が集う商業施設という特性上、結果として過半数の飲食店が禁煙を選択しているのが現状です
———今後の展開として、新しい試みをされる予定はありますか?
現在、三井不動産として大々的に開発を行なっている埼玉県新三郷に、来月「ららぽーと」をオープンさせます。そちらの分煙環境は、これまでの経験を集約させた新しい取組みです。
———その取組みに関して、具体的に教えてください
「ららぽーと新三郷」は、建物全体がおよそ15万平米、店舗の売り場面積6万平米近くなる為、公共空間としてはフロア毎に喫煙スペースを2カ所。バックヤードに設置した従業員用の区画も含めると1フロア4カ所あり、2層なので計8カ所となります。
また、オープンテラスのモール部分にも3ヶ所の喫煙スペースを設けています。
喫煙スペースに関して、従来の閉塞的な作りではタバコを吸う方への逆の差別になってしまう為、今回は、公共施設内で最もグレードの高い内装にしました。
面積的には最低15?25平米以上の区間を規定としており、大人のゲストが寛げる茶を基調とする落ち着いた空間に仕上げ、椅子や机等インテリアにもこだわりました。さらに、床材にこげにくい材料を用いたり、換気の回数も1時間辺り45回以上とするなど、環境的にもかなり配慮しています。
また、2階部分にあるフードコートはファミリーのほか高齢者などより幅広い年代の人に楽しんでもらいたいという目的から、喫煙室という形でなく喫煙者が食事を楽しめるおよそ50席のゆったりしたスペースを設けました。非常に強い換気システムを取り付けて匂いがこもるのを防ぐ仕様にしたため、タバコを吸わない方と吸う方が相席しても、互いに気分よく過ごせる空間となっています。
———テナントに関しては、さらに厳しい規定が設けられているそうですね?
はい、飲食店の内装及び設備基準はさらに厳しく、工事段階で換気の回数や一酸化炭素の数値、風速などを細かく測定し、当社仕様をクリアするレベルまでもっていきます。飲食テナントさんにとっては、恐らく街中の店と比べてコストも手間も非常に掛かると思いますが、それを理解の上で出ていただいております。実際、フラグシップ的にでられる店が多いので、環境作り等においてもチャレンジ精神が強く、新しい取組みとして行なっているところが多いです。
———パンフレット等で、吸える店、吸えない店等の明記は行ないますか?
公共の喫煙スペースに関してはサイン等で明確にし、飲食店の分煙情報に関しての情報は館内に置かれているディレクトリに表示しています。
———最後となりますが、今後、御社商業施設への出店を希望している飲食テナントが、事前に考えておくべき事はありますか?
先にも述べたように、弊社が飲食テナントに要求する設置基準は非常に厳しいです。タバコを吸える店を検討される場合、それなりのコストと手間が掛かる事を考慮し、きっちりした設備を創る事を徹底していただきたいと思います。
【ニュース】
今秋、9月17日、JR
三井不動産が開発中のJR
モノを消費する事がメインでなく、外の風を感じながら散歩したり、デザインされたモールを見ながら過ごしたりと、ゆったり寛げる“時間消費型”がコンセプト。JR
テナントはバリエーション豊かなラインナップが集い、飲食店においては、日本初出店となる店や初業態の店が登場するほか、日本各地のご当地グルメを集めた「みさとキッチン」、“鉄道”モチーフの空間で食事ができる「ステーションキッチン」という2つのフードコートを配置。エンターテインメントはファミリーや若者を意識したポップなものが多く、世界で初めてのトーマスの室内遊園地「トーマスタウン」や魚を見るだけでなく実際に触れあって遊べる「よしもと遊べる水族館?ギョギョギョ!パニック?」等、個性あふれる施設が集う。さらに、館内には高齢者も買い物を楽しめるよう「京王百貨店」や食品スーパー「食品館イトーヨーカドー」を配したほか、ファッションにおいては大人気の「H&M」も登場。
また、環境問題への新たな取組みとして、太陽光発電や風力発電をはじめ、歩行による床の振動を利用した「音力発電」を体感できる施設を設置し、訪れた人たちに環境について見て、触れて、考える場を提供。また、壁面緑化を一部に採用するなど、環境に配慮した施設づくりの実践にも注目したい。
三菱地所株式会社 広報部 布野龍一郎さん
———「丸ビル」「新丸ビル」など、御社が運営する大型商業施設において、これまで、お客様や飲食店経営者からタバコに関するどのような意見、要望が上がっていますか?
お客様からのご意見として、施設内店舗の喫煙可能スペースから共用通路部分へ煙が流出してしまい分煙徹底のご指摘を頂いた事例があります。
一方、出店者からは個別店舗内の喫煙可能スペースの設置とは別に、施設内への共用喫煙スペースの設置要望も頂いています。
———それを踏まえ、大型商業施設の運営者として、三菱地所の「受動喫煙」に対する見解、また、現状と理想的な未来ビジョンを教えてください
弊社としては、商業施設に関しても様々な方がおいでになる“街”を基本的な視点として捉えていますので、喫煙者と非喫煙者が共存できる環境作りを志向しています。
———「喫煙者と非喫煙者が共存できる環境作り」実現について、現時点での課題とはどのような事が上げられますか?
喫煙者と非喫煙者の共存を図る為には、ハード面とソフト面からの施策があると考えます。
ハード面については喫煙可能スペースと禁煙スペースを明確に切り分けることが現状では一番の解決策であると思われますが、すべての施設に導入するにはスペースの確保並び設備面などから制約があることは否めません。
一方、ソフト面については、施設運営側並びに出店者側の協力により、(特に喫煙者による非喫煙者に対する)啓蒙を図っていくことが必要であると考えますが、一朝一夕に解決できる問題ではないとも認識しております。
———今後の展開として、地域性や施設のタイプによっても異なると思いますが、各施設、そして新施設におけるタバコへの取組みの展開、方針を教えてください
先述した内容と重複しますが、既存施設については建物保守あるいは改修のタイミングに併せた喫煙可能スペースの設置を検討していきます。また新施設においては予め喫煙可能スペースを確保できるよう計画していく所存です。
———最後に、既に出店している飲食店オーナーへのお願い、そして今後出店していただく飲食店オーナーに対して考えておいてほしいタバコへの意見はありますか?
業種業態により店舗内での喫煙を許容するか否かの判断が必要ですが、許容する場合は分煙を徹底していただく必要があります。また、施設のハードだけでは対応できない場合もありますので、“他の方への思いやり”という意味でソフト面での日常的な対応を継続していただくようお願いしたいと考えます。