うどんはもっと多様でいい
――東京のうどんシーン、こと讃岐うどんにおいてはこの10年20年で大きく変化があったと思います。大下さんはどう見ていますか。
大下:20年前と今を比べると、上京したときに感じた「讃岐うどんを欲しがっている人はいるはず」という思いは間違ってなかったのかなと思います。2002年に「はなまるうどん」が渋谷にできたときも「讃岐うどんなんて一時のブームだ」なんて言われていたけど、僕は絶対ブームでは終わらないと信じていました。その一方で、うどんはもっと多様でいいんじゃないかと思います。最近は「あの店より上だ、下だ」とか「香川で食べた味と違う」など口コミサイトが過熱して、うちもいろいろと言われているようですが個人的には気にしていません、というかほとんど見ていません。味にばらつきがあるとしてもそれが「おにやんま」で、自分らがおいしいと思ううどんを出す、ただそれだけのこと。僕らがわざわざ「讃岐うどん」と謳わないのもそういう理由です。
――最後に「おにやんま」の今後について聞かせてください。
大下:いい意味で遊びの延長で店を続けたいと思っています。お話ししたとおり、従業員たちのためにも出店はしていきますが、急がずマイペースに。「かがり火」のときに感じていたような気負いは今ありません。小銭をチャラチャラさせて食べに行くような気楽な食べ物だと思うんですよね、うどんって。

(取材=井上こん)