大胆で独創的な意匠を手掛けたのがプロジェクトメンバーの一人である隈氏
「シモキタエキウエ」は小田急電鉄が代々木上原駅と梅が丘駅間の鉄道地下化に伴い、下北沢駅新しく整備された2層建ての駅直結商業施設。東北沢駅と世田谷代田橋駅間の元線路であった1.7kmの土地の再開発計画「下北線路街」の一環だ。中央の吹き抜けを囲むように物販店や飲食店が並ぶ2階に「ヤキトリてっちゃんTalking GORILLA」は構える。
三角の形をした空間のほぼ半分を占めるのはオープンキッチカウンター。サイズも色もバラバラなアクリル製のアルファベット文字で覆い尽くすポップなデザインのカウンターの腰が際立ちを見せている。このカラフルなアクリル製のアルファベットの文字は透明なプラスチック製のカウンターやテーブルにも踊るように埋め込まれている。全面をスケルトン仕上げにしたファサードからはかつての下北沢駅を支えていた躯体を残した正面奥の壁や金物枠だけの天井が透けて見える。まるで工事途中のようにも見える空間に、湯村氏のエロティックなイラストも混在するカオスな同店。誰もがイメージする焼鳥店らしさを一切見せない斬新な構えがフロアで際立っている。因みに三角形の先端は「HMV」から依頼され一角を占めるDJブースも置いた直営のレコードショップ。音と飲食のコラボレーションという新しい試みも見せている。
この大胆で独創的な意匠を手掛けたのがプロジェクトメンバーの一人である隈氏だ。カラフルなアクリル製の多くのアルファベットの切り文字が照明や装飾材として彩る印象的な空間。実はこれらのきり文字はドイツのノミの市に並んでいたのを手塚氏が入手したものという。当初の役目を終えた素材に新たな価値、役割を創造させるリ・ボーンプロジェクトの手で誕生したのが「ヤキトリてっちゃん Talking GORLLA」。既成概念に捕らわれない自由な発想を大胆に楽しむ隈氏に手塚氏と湯村氏の3人のクリエティブ力が集約されているのだ。
名物は大山鶏を丸ごと焼くロティサリチキンの「ポヨチキン」
そんな焼鳥店らしからぬ空間ながらも提供するヤキトリは一本一本丁寧に焼き上げる本格派。名物は大山鶏を丸ごと焼くロティサリチキンの「ポヨチキン」(1/4カット660円 1/2カット1320円 1羽2630円 )。姉妹店の「下北沢てっちゃん」で仕上げている。ヤキトリは「ラムチョップ」(480円)から定番の「トリモモ、レバー」(各150円)などから「シロ」(150円)まである。ほかに「煮込み」(480円)といった酒場らしいフードに加えて「スペイン産生ハムラベジョーダ」(720円)を揃える。ドリンクは酒場人気の「レモンサワー」(660円)から本格焼酎(580円〜)に日本酒(580円〜)、ワイン(580円)を揃える。同じフロアにある同社運営の物販店「Thinking GORILLA」で購入したワインは持ち込み料1000円で飲むことが出来る。
2014年に隈氏に依頼したことから始まったリ・ボーンプロジェクト
手塚氏が2004年に開業した吉祥寺のハモニカ横丁内の「ヤキトリてっちゃん ハモニカ横丁店吉祥寺」。その改装を2014年に隈氏に依頼したことから始まったリ・ボーンプロジェクト。「吉祥寺店」では廃棄されたカラフルなLANケーブルが壁を飾り、プラスチック団子を素材にした意匠は想像以上の斬新な仕上がりとなった。その後も2013年に三鷹にオープンした近未来横丁がテーマの「hymヒュム」は外壁を覆う廃棄自転車の車輪が未来感をパワーアップしている。2017年に以前の場所から移転した古民家をリノベーションした「下北沢てっちゃん」では処分されたスキー板が再生した空間を彩る。自然の「木=モク」をテーマに端正に組んだ建築で世界に評価される隈氏。そんな彼の全く異なる創作の奥深さや斬新な世界観を楽しませてくれるのがこのプロジェクト。そこには役割を終えた素材への着目と新たな可能性を模索する手塚氏の独創力があってのことなのだ。今、世界の言語に注目する手塚氏は漢字やひらがなの「作る・造る・つくる」ではなくカタカナ文字の「ツクル」でその独創力の原点を表現する。そんな手塚氏の新たな創作テーマの素材は発泡スチロール。どんな「ツクル」が生まれるか期待したい。
店舗データ
店名 | ヤキトリてっちゃん Talking GORILLA |
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住所 | 東京都世田谷区北沢2-24-2小田急線下北駅内シモキタエキウエ2F |
アクセス | 下北沢駅直結 |
電話 | 03-5432-9455 |
営業時間 | 11:30〜23:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 約15坪/48席(一部スタンディング有り) |
客単価 | 2000円 |
オープン日 | 2019年11月1日 |