五反田駅西口のほど近く、目黒川と並行に走る、飲食店が軒を連ねる路地がある。その中腹あたりに、「大衆ビストロ 煮ジル」「CRAFTSMAN」「炎丸酒場」ほか多くの飲食店が入居するビルがある。このビルの裏通り側に4月15日オープンしたのがお好み焼きの「いまり」だ。2008年、当時27歳だった店主の大林 凌氏が、たった1人で恵比寿にお好み焼き店を開けたのが「いまり」の始まりだった。その後2013年に同じく恵比寿で2号店を出店したが、以降は恵比寿以外の近場にしようと物件を探し、この五反田店が3号店となる。
もともと兵庫の尼崎にある実家がお好み焼き屋だったことから、一般企業に勤めて社会人経験を積むこともなく開業した。とはいえ、家業を継ごうと思っていたわけではない。スタッフを雇うまでの数年は、何もかも1人でこなさなければならないため、必死だったという。店は小規模というが、昼も夜も営業していたため寝る間を惜しんでがむしゃらに目の前のお客と向き合い続けたそうだ。それが現在は11名ものスタッフがいる。「気がつけば、3店舗にまでなりましたね」と、これまでの苦労を全く見せずに爽やかな語り口でそう答えてくれた。
2号店と同じデザイナーが手掛けたという内装は、カウンターにもテーブルにも木材がふんだんに使われており、落ち着いた雰囲気を醸すため照明はぐっと絞られている。日本っぽさはあるものの、従来の大衆的なお好み焼き屋のイメージとは少々異なる。「お好み焼きも、おしゃれに食べてほしいんですよね」という大林氏の発言通り、ほどよく艶感のある空間に仕上がっている。
「生地は少なめ、できるだけ野菜を食べている」と感じてほしいという同店のお好み焼きは、「昔ながらの大阪モダン」(1000円)、「いまり風広島焼き」(1100円)の2種類をメインにしている。個性の異なる大阪と広島、どちらも揃えているのは嬉しい。それ以外にも具材ごとに様々なお好み焼きを揃えるほか、6種類の「ねぎ焼き」、12種類ずつある「焼きそば」と「そばめし」などメニューは豊富だ。つまみ類では、牛の顎部分のすじ肉”あごすじ”を使った「あごすじとニンニクの芽炒め」(700円)、「あごすじと下足塩焼き」(850円)が人気だというが、店名を冠したおすすめも多く、どれも魅力的で選びきれないようにも思える。そんな時のために、お店に全てを委ねる「いまりのマル投げ」(一人/2500円)というメニューも用意されているのが面白い。ドリンクは、スパークリング、ワイン、ビール、日本酒、焼酎はもちろん、サワー類、茶割類、ハイボール類も多種ラインナップされ、どんな好みにも対応できるであろう一通り網羅されている。
大林氏をはじめ、3店舗11名のスタッフは全員男性だという。1人きりで始めただけに、人を育てることに苦労もしたようだが、今は各店長の仕事ぶりに信頼を寄せ全てを任せているそうだ。「僕はスタッフの休みをちゃんと回すために、人が足りない店舗にシフトインする感じなんです」という話しぶりからは、スタッフへの信頼の高さが伺えた。
店舗数や売上高など、この先の明確な数値目標はとりわけ立ててはいないそうだ。日々の積み重ねの中で人が育ち、「彼に店を任せたい」と思えば出店を考え、自立した人間が増えれば自然と店の数も増えていくという、あくまで自分たちのペースを守った歩みを大切にしている。ただ、「海外でお好み焼き屋を開くことには興味がありますね」と大林氏。「NYなんかでやれたりしたら、かっこいいですね」と語るその表情に、同店の可能性を垣間見た。そう遠くないうちに、ぜひとも実現してほしいと期待は大きく膨んだ。
店舗データ
店名 | お好み焼き いまり |
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住所 | 東京都品川区西五反田2-18-3 |
アクセス | 五反田駅から徒歩4分 |
電話 | 03-6431-9499 |
営業時間 | 17:00〜24:00(L.O) |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 15坪・34席 |
客単価 | 3000〜4000円 |
オープン日 | 2017年4月15日 |