市ヶ谷駅を外堀通り方面に歩くこと3分、通り沿いに面したガラス張りの明るい雰囲気の店が現れる。店の入口左側には、ガラス越しにスペインワインがズラリと棚に並ぶ。同店は、4月30日にオープンしたスペイン南部のリゾート地の海岸に並ぶ屋台をイメージしたスペインバル「el chiringuito(エル チリンギート)」。オーナーシェフの新倉孝之輔氏は、銀座のスペインバル名門店「エルセルド」や、神楽坂で人気の魚介専門スペインバル「エルプルポ」のシェフを歴任した後、同新店舗を開業した。自身が、スペイン修行時代に出逢ったチリンギート(スペイン語で『海沿いの屋台』の意)に並べられていたイワシ串焼きなどをメインに、素朴ながら新鮮な魚介料理にこだわった今までとは一味違うスペインバルだ。
新倉氏が、スペインバル業態に興味を持ったのは、ちょうど2004年前後から始まったスペインバルブーム初頭時だった。「活気があって賑やかな雰囲気で、やるならスペインバルがいいなと思いました」と当時を振り返った。その後、知人のつてでスペイン修行の機会を得て、スペイン南部アンダルシア地方のマラガやリゾート地トレモリノスで経験を積んだ。その際に出逢ったイワシ料理は、串焼きというシンプルな調理法ながら素材の良さを生かした極上な味わいで衝撃を受けたという。この時の体験をいつか活かしたいと思い続け、今回の独立開業の店舗コンセプトに掲げた。「直近が魚介専門バルで、築地の仲買さんとの繋がりもできてましたから、イワシのように鮮度落ちが早い魚でも新鮮な状態で手に入ります。数あるスペインバルの中で差別化するには、他ではやってないイワシ串焼き料理を打ち出すのがいいんじゃないかと思ったんです。多分東京ではうちだけだと思いますよ」と語る同氏。イワシを焼いただけという究極にシンプルな料理は一見素朴過ぎる感もあるが、素材の良さにこだわり、また新倉氏特製のブラバスソースを添えるアイディアを加えることで、他にはないオンリーワンの看板メニューとなっている。
同店名物の「イワシの串焼き」(700円)は、刺身にしても良いほどの新鮮なイワシを使用。L字カウンター席前に設置されている大型グリル網でじっくりと香ばしく焼かれる。特製のブラバスソースのトマトの味が程よくマッチして絶妙だ。「イワシのタルタル」(700円)も鮮度が生きる一品。青りんごと赤いトマトの色が入った見た目も鮮やかで、りんごとトマトの酸味が調和しオススメのメニュー。魚介系の他に肉類メニューも多数揃う。「ガリシア栗豚の自家製ロースハム」(850円)は、スペイン・ガリシア地方で栗を食べて育った希少な栗豚を使ったハム。さらっとした脂の甘みが後を引きワインがすすむ。前菜、温タパス、冷タパス、パエージャなど定番グランドメニューの他に、「本日のオススメ」も日替わりで登場。取材当日は、「愛知産小イワシのフリートス」(750円)や「石川産岩ガキのジュレがけ」(1個350円)などが揃っていた。
ドリンクは、スペインワインを中心に、珍しいスペイン産ビールも揃える。スペインナンバー1ビールとして名高い「マオウ」(700円)は、最良のホップ・イーストを使い、軽やかなアルコールのピルゼンタイプで、程よいボディの高品質ビール。もう一つは、爽やかな喉越しと適度な苦みが特徴のラガービールの「エストレージャガリシア」(700円)。最初の一杯は、スペインビールで乾杯がオススメだ。ワインは、全てスペイン産でラインナップされ、グラスは、白・赤・カヴァ各2種類、500円~。ボトルは常時30種ほどあり、3000円~4000円台が人気だという。他にドライシェリーを炭酸で割った「レブヒート」(600円)や、赤ワインとコーラの「カリモーチョ」(600円)、レモンをブレンドしたビールカクテル「セルベッサ クララ」(600円)などスペインで定番のカクテルや、シェリー酒、サングリアなども楽しめる。
「まずは地元の人に認知してもらい、来店してもらえるようにしたいですね。平日は近隣オフィスの方々、週末は地元住民の方に利用してもらいたい」と今後の目標を語った新倉氏。東京・市ヶ谷という都会の真ん中で、シンプルながら素材の鮮度が物を言うスペイン南部アンダルシアのリゾート地名物“イワシ串焼き”を提供し、人々が気軽に立ち寄れる「チリンギート」の誕生を大いに歓迎したい。
店舗データ
店名 | el chiringuito (エル チリンギート) |
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住所 | 東京都新宿区市谷八幡町12-1 ガーデンテラス市谷八幡1F |
アクセス | JR市ヶ谷駅から徒歩3分、東京メトロ各線 市ヶ谷駅から徒歩2分 |
電話 | 03-5579-2858 |
営業時間 | 17:00~00:00(L.O.23:30) |
定休日 | 日 |
坪数客数 | 13坪 30席 |
客単価 | 4000円台 |