今や、飲食業界をリードする経営者たちの代名詞ともなりつつある“グローバル卒業生”。ここ「PASTAVOLA(パスターヴォラ)」のオーナー大野木輝之氏もその例にもれず、グローバルダイニングで丸8年というキャリアを持つ。同店は、2013年10月2日に開業した「OOTEMORI(オーテモリ)」の中に2号店としてオープンした店だ。地下鉄5路線が乗り入れる大手町駅に直結し、大手町タワーのB1F・B2Fに入る新商業施設。大手町で働く女性をメインターゲットとしており、ほかにも株式会社HUGEの新ブランド「La Pesquera -MARISQUERIA-(ラ ペスケーラ マリスケリア)」や、新和食という新たな料理境地を開拓したハルヤマシタの新業態「HAL YAMASHITA新和食Lounge」など、18店舗が入居している。個性的な業態が集積する「OOTEMORI」の中、大野木氏は“グラスワインと生パスタ”でOLたちの心をつかんでいるようだ。 「毎日通える店とは、どんな店なのか――。」独立にあたって大野木氏が店づくりを考える軸にした事だ。生活動線の中に店を置くことを第一に、1号店は当初からマンション物件だけを探し求め三田の地に決めた。そしてコンテンツには、毎日食べても飽きないバリエーションに富んだメニューを追求し、「パスタ」という日常食へたどり着いた。2010年12月に独立1号店をオープンしてから、大野木氏の読み通り、マンション物件ゆえに口コミが爆発的な効果を見せ、あっという間に人が人を呼ぶ人気店となり2号店オファーのきっかけとなった。今回の大手町「PASTAVOLA」は、店内中央の厨房をぐるりと囲うようにカウンター15席が並ぶ。内装のベースはとてもシンプルだが、壁面に描かれた店名にアートを感じさせたり、パッケージが洒落ているインポートのパスタをオブジェ替わりにするなど、商業施設内の店舗をまったく感じさせない小さな世界感が出来上がっている。 来店客のほとんどが女性という同店の魅力は何なのか。そのひとつが“グラスワイン”にある。常時30種あるラインナップは一律700円。葡萄の品種や産地などバラエティに富んでいるので、何をオーダーするか迷った場合にはリストをじっくりと読み込んでもらう。そこには、香りや味わいを小難しく解説するのではなく、それぞれのワインの個性をタレントに例えて表現してある。“ジャケ買い”的に自分のタイプで“タレントをご指名する”オーダーの愉しみが、客にウケているようだ。加えて、提供方法にもひと工夫ある。グラスワインのオーダーが入ると、カウンターから伸びるメジャーを見ながらボトルを傾け、70cc・90cc・110cc・140cc・170ccの5段階で規定の量を注ぎ、ボトルの価格に応じて見合った量を出す。一律料金の裏側にはこんな秘密があった。これなら、質より量のがぶ飲み気分でも、量より質のご褒美気分でも、財布から出ていく額は変わらないので安心だ。「もしもお酒が苦手というならば、気分だけ味わえるように」と、葡萄ジュースにもこだわって取り揃えている。 それらに合わせる料理は、「帆立ときゅうりのセビーチェ」(650円)や「自家製 ハニーチーズ豆腐」(600円)、「白モツの辛いトマト煮『モツアラビアータ』」(800円)など、冷温菜ともにバルらしい手軽な小皿料理が豊富に揃う。ひとり飲みにありがたいハーフサイズにも対応している。メインはやはり、もちもちの食感が他とは違う生パスタが大人気。定番・オイル系・トマト系・そのほかのソースと、それぞれに種類も沢山あるので足繁く通う客にも飽きがこない。なぜそんなにもっちりと仕上がるのか尋ねると、「茹で時間に秘密がある」と教えてくれた。 ビルの建て替えや新たな建設が相次ぐ大手町一帯は、今後ますます人が集まるエリアに拡大していくと思われ、同店の人気ぶりは勢いを増していきそうだ。独立から3年、これから先の計画について尋ねると、「店舗展開というより、小さくても価値のある事を産み出していきたい。その結果ファンが増え、スタッフが成長し、結果として店舗が増えれば幸せです。」と語ってくれた。そんな大野木氏に、この先も注目をしていきたいと思う。
店舗データ
店名 | PASTAVOLA(パスターヴォラ) |
---|---|
住所 | 東京都千代田区大手町1-5-5 OOTEMORI B2F |
電話 | 03-6256-0585 |
営業時間 | 月~金:11:00~15:00、17:00~24:00 土・祝:11:00~15:00、17:00~23:00 |
定休日 | 日曜 |
坪数客数 | 11坪 15席 |
客単価 | 3,500円 |
運営会社 | 株式会社trotto |