資生堂パーラーは1902年（明治35年）、現在の東京銀座資生堂ビルのある銀座8丁目、資生堂薬局の一角に、日本では初めてソーダ水とアイスクリームの製造と販売を行なう「ソーダファウンテン」として誕生したのがその始まりである。後の1928年（昭和3年）からは本格的な西洋料理のレストランを開業した。以来、資生堂パーラーは西洋料理の草分け的存在として料理界からも一目置かれる存在となり、歴史と伝統を守りつづける銀座になくてはならない日本のブランドとなった。現在でも、もちろんそれは変わらない。しかし、いつの時代にも馴染む形へ、時とともに進化をつづけている側面もある。今回もそうだ。芸術と文化および食文化の情報発信拠点である同ビルは、2011年で10周年を迎える。より多くの顧客に新しい生活の喜び・価値を見出すことができる場として、新しい食空間を提案すべく「FARO_slow time（ファロ スロータイム）」が5月14日にオープンした。 同ビル最上階の11階。吹き抜けの高い天井からは太陽の光が優しく差し込む。明るく開放感にあふれ広々とした贅沢な空間だ。同店は“美しさと健やかさ”というキーワードにフォーカスし、毎日食べても疲れないという体が欲する心地よい料理をコンセプトとし、コンフォートフード＆ドリンクと位置付けている。「食材本来の美味しさをダイレクトに味わえるように、最適な調理法でアプローチします」と語るのは、シェフの宍倉 健太氏。宍倉氏は、これまで同社の「レストラン ロオジエ」、「レストラン キュイジーヌ・シセイドー」、「カフェ・セレ」にて研鑽を積み、このオープンのタイミングでシェフに就任した。素材へのオマージュ（尊敬）を忘れず、大地の恵みを存分に味わえるよう、四季折々、旬のなかでも最も美味しいとされる“盛り”の食材を日本中から探し出して使っているという。 ランチ（1200円～）は「サラダプレート」、「ベジタブルプレート」、「シーフードランチプレート」、「ミートランチプレート」 の4種。それぞれメインのプレートのほか、サラダやスープ、パン、小さなデザート、ドリンクがつくのでお得だ。ティータイムには、こちらも食材にこだわった「パイナップルのパルフェ」や「抹茶とマスカルポーネチーズのムースと甘味をつけた豆のコンポート」、「季節のフルーツタルト」がいずれも650円。ディナーでは、野菜料理・魚料理・肉料理とカテゴリー分けしており、「旬野菜のフリット」（600円）、「色々なトマトの温かいパイ」（1000円）、「コリアンダーが香るシンプルな野菜のパスタ」（900円）といった野菜メインのものと「ワイルドサーモンのグリル サラダ仕立て」（900円）、「マテ貝のエスカルゴバター焼き」（1200円）、「緑野菜と魚介のブイヤベース」（2500円）などの魚を使った料理もある。加えて「フォアグラと鶏白レバーの田舎風パテ」（1200円）、「温かな鶏もも肉と砂肝のコンフィ」（1000円）、「国産銘柄豚ロース肉とソーセージのグリル」（2800円）というボリューム感ある肉料理が揃っている。 アルコールは、スパークリングがグラスで1000円、ボトルでは3000円から5種を揃え、ワインはフルボトルで同じく3000円・4000円・5000円と3段階の価格構成。うちグラスが楽しめるものは600円～数種用意している。また、ビールはドラフトに加えてトラピストビールも6種ほどあり、料理に合わせて幅広く楽しめそうだ。 資生堂というブランドイメージを守りつつも、常に進化し、時代のニーズに合わせて柔軟性を持ち合わせるところが、長く愛される秘訣なのだろう。伝統を感じられる品のよいサービスでありながらも温かみを感じるこの店は、カジュアルな中に本物を求める現代の顧客ニーズにマッチしそうな、新しい店かもしれない。
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