神楽坂の早稲田通りから一本道を折れると、ポップな赤い看板が目に飛び込む。今年4月、この小さな一角にオープンしたのが『Wine Bar Restaurant PETIT PARIS(ワインバー レストラン プチパリ)だ。オーナーのNabil Houhou氏はパリの有名店やホテルで20年以上ものサービスの経験を積んだ後に来日し、グローバルダイニングに入社。一世を風靡した「TABLEAUX(タブローズ)」、「LEGATO(レガート)」において日本の飲食業におけるサービスのノウハウを学んだ。同社で働きながらも、パリで親しんだ本場さながらのビストロを開くことを想い描き、その夢をついに形にしたのが「プチパリ」だという。開放的なテラス席、デザイン性と遊び心を感じさせる外観、店から溢れ出る陽気な雰囲気…… 同店に一歩足を踏み入れると、随所にパリのエッセンスを感じることができる。 そこで供されるのは、フランス・パリをはじめ、イタリア、オーストラリア、ニューカレドニアなど世界各国の有名店で調理人を勤めてきたというシェフ、Andre Kaestler氏が提案するビストロ料理。「シェフのテリーヌ グリーンサラダ」(900円)、「本日のキッシュ プチ・パリスタイル」(700円)など、シェフの感性が詰まったオリジナルメニューを良心的な価格で提供する。人気の「スズキのポワレ」(1,200円)はキャラメルバルサミコとバジルソースを巧みに用いた一品。また、トリュフオイルで香り高く仕上げた「ホタテのカルパッチョ」(900円)もシェフのイチオシメニューだ。更に、「日本人はワインにピッツァを合わせるのが好きだから……」と「ハモンセラーノ ピザ」や「スパゲッティアラビアータ」などもメニューに並ぶのは、イタリアでも修業を積んだシェフだからこそ成せる柔軟な計らい。色鮮やかなソースと共に美しく盛り付けられた「クレームキャラメル」(600円)などのデザートにも力を入れている。 そしてメニュー同様のこだわりが感じられるのが、約100種にも及ぶ同店のワインのラインナップ。フランスをはじめとする世界各国の厳選ワインを、グラス600円~、ボトル2,500円~30,000円とリーズナブルなものから高級なものまで幅広い価格帯で取り揃え、利用者の様々なニーズに対応する。ワインリストには各種ワインのタイプや味わいなど、詳しい説明が記載されており、ワイン初心者でも安心してオーダーできるような配慮がなされている。 規模は15坪程度と決して広くはないが、厨房と一帯となった店内は明るく開放的。壁面にずらり並べられたワインボトルの数々がワインラバーの好奇心と食欲を刺激する。夕暮れ時にテラス席で一杯アペリティフを楽しむのも同店の粋な使い方だ。「最近、ワインを安く楽しめる居酒屋はあちこちにできているけれど、パリの雰囲気をしっかり再現したお店は少ないと思います。シンプルだけど親しみやすく、まるでフランス旅行に来たような……そんな気持ちになれる店づくりを目指したいですね」と語るNabil氏の発言にシェフも笑顔でうなずく。 実は、東日本大震災の影響で同店のオープンは困難を極めたという。内装工事を発注していた石巻の業者が被災し、4月1日に予定していた開店も延期に。一週間遅れでオープンにこぎ着けた。大変な時期の出店ではあったが、それを語るオーナーもシェフも、苦労を全く感じさせない前向きなエネルギーに溢れている。「自分達のサービスに誇りを持って、お客さんとの距離をもっと縮めていきたいです。そして、神楽坂の街や日本をみんなで一緒に盛り上げて行きたいですね」とスタッフ一同、意気揚々と話してくれた。 神楽坂に出現した「小さなパリ」から発信される大きな希望が、街や業界にどんな影響をもたらすのか……今後の動向に注目したい。
店舗データ
店名 | Wine Bar Restaurant PETIT PARIS (ワインバー レストラン プチパリ) |
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住所 | 東京都新宿区神楽坂5-7-3 山桝ハウス1F |
アクセス | 地下鉄 神楽坂駅より徒歩5分、JR 飯田橋駅より徒歩5分 |
電話 | 03-6457-5585 |
営業時間 | 平日11:30~15:00、17:30~翌2:00 週末11:30~翌2:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 店内20席・テラス4席 |
客単価 | ランチ980円~(週末1,300円~)、ディナー4,000円~ |
関連リンク | Wine Bar Restaurant PETIT PARIS |