自由が丘の駅から目黒通りに向かって自由通り沿いを歩くこと7分。立ち並ぶ個人商店や飲食店を過ぎ、住宅街にさしかかるころに見えてくるのが、昨年10月8日にオープンした和食料理店、『星火』だ。店主の眞形賢吾氏は、渋谷の人気店『食幹』で研鑽を積み、この地で念願の独立を果たした。 渋谷とは全く違う顔を持つ自由が丘に店舗を構えた経緯については、「本当は中目黒が良かったんです。深夜まで営業できるし、オフィスビルもある。でもどうしてもピンとくる物件が見つからず、思い切ってこの街に出店したんです」と、眞形氏。その「想定と異なる」住宅地にオープンした結果、近隣の住民が何度もリピートするようになり、予想以上にコミュニティの輪が広がりつつある。
そんな同店で供される料理には「食を楽しんで欲しい」という店側の想いが随所にちりばめられている。たとえば食材。当日仕入れの旬の魚や野菜を厳選し、一皿ひとさら美しく盛りつけることで、鮮度と季節感を細やかに演出している。同店のこだわりが詰まった「おまかせコース」は、5000円と6500円のニ種類で展開しており、「一人鍋」や「ラーメン」、「星火プリン」など、同店オリジナルの人気メニューも登場。アラカルトも充実しており、「燻製の盛り合わせ」(1800円)といった酒の肴から「季節の有機野菜わっぱ蒸し」(1000円)に代表される野菜料理、「匠の大山鶏串焼き」(800円)などの炭火焼に至るまで、幅広いメニュー展開だ。その他、イチオシ食材を用いた日替わりメニューも取り揃える。人気は先にも述べた同店名物「一人鍋」で、「黒胡麻鍋」(800円)や「黒毛和牛のだししゃぶ鍋」(1200円)など、素材の美味しさを活かした上品な味わいが定評を呼んでいる。「これからはハモが美味しい季節ですので、ハモの出汁しゃぶや天ぷらがお薦めです」という眞形氏。季節を感じさせてくれる限定メニューの考案にも日々余念がない。
それらの料理の魅力を更に引き出すのが、「獺祭(だっさい)」、「田酒」、「浦霞」……といった店主厳選の日本酒の数々で、半合430円からという良心的な価格で提供している。その他ビールや焼酎はもちろん、和食と相性の良い果実酒や日本ワインなど、ドリンクのラインナップも豊富だ。
さらに、「食の楽しみ」を提唱する同店のこだわりは料理だけにはとどまらない。特に、料理を彩る器には気を遣っており、錫製の酒器で冷酒を供することで清涼感をもたらしたり、ラーメンをあえて有田焼の特注の椀で供したりと、料理と器の美しくユニークな響宴をも楽しむことができる。
清潔感と木の温もりを感じさせてくれる店内には、カウンター席、テーブル席、個室が備えられ、利用者の様々なシーンに対応できるようになっている。最も思い切ったのは、調理場との遮りが全くないカウンター席。あえて客席から調理人の手さばきを眺められるような設えにしたのは、「厨房に緊張感を持たせるため」だと眞形氏は言う。
そんなストイックな一面も持つオーナーが、これから目指したいのは、やはり「新規開拓」だ。駅から離れていて一見客が入りにくい立地ではあるが、一度訪れた客はかなりの頻度で同店を再訪している。「だからこそ、まずはなるべく多くの新規のお客様にいらしていただいて、うちの存在を知って欲しいと思います」と眞形氏。「“ここの立地は大変だけどあなたは頑張ってね”って近所の人が激励の言葉をくれたりして……有り難いです。だからこそ、そのエールに応えたいですね」と力強く語ってくれた。
自由が丘に現れた新星、「星火」がこの街を拠点とし、食の楽しみをどこまで発信してゆくか……今後の展開に期待したい。
店舗データ
店名 | 星火(せいか) |
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住所 | 東京都目黒区自由が丘1-21-4 J121ビル 1F |
アクセス | 東急東横線・東急大井町線 自由が丘駅より徒歩7分 |
電話 | 03-6421-4328 |
営業時間 | ランチ 11:30~14:00、 ディナー 18:00~0:00(L.O.23:00) |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 21坪・27席 |
客単価 | 昼1,200円・夜5,000円 |
関連リンク | 星火 |