東京の東に位置する門前仲町は昔ながらの情緒や風情が残る下町として名高い。その門前仲町を代表する成田山東京別院、深川不動堂。そのお不動さんまでの150メートルの参道が人情深川御利益通りだ。通りの両側には飲食店、和菓子屋、物販店などが軒を連ね、参拝客はもとより地元客が絶え間ない。毎月1日、15日、28日には縁日も立ち、さらに賑わいを増すという。
「折原商店」はその参道に、創業が大正13年という、老舗の業務用酒類販売、株式会社折原が、エンドユーザーを対象に、日本酒を中心に和酒を取り扱う小売業態としてオープンさせた店だ。一般的に言う“酒屋さん”だが、店の軒先には駄菓子や昔懐かしいような、おもちゃを並べた“駄菓子屋さん”の作りをなしている。しかし、店の奥へ足を入れると、右全面の大型冷蔵庫には、様々な銘柄の日本酒が並び、左壁面にも常温の日本酒、果実酒、焼酎が棚を占め、酒屋と実感する。店の中央にはテーブルを置き、昔ながらの酒屋の角打ちとして日本酒が味わえる。大人ばかりではなく子供も楽しめる、思い切り斬新な店づくりだ。
「なにより日本古来、独自の酒である日本酒を多くの人に触れて欲しい。そして、自国の文化、食を知る場として、大人も子供もワイワイと集まれるような店にしたい」と高田氏(常務取締役 営業推進部 部長)は語る。
実は「折原商店」の1号店はシンガポールにある。そのシンガポール店で「外国の人の多くは自国文化や食を良く知るが、案外と日本人は自国の文化や食を知らないと実感したことが、この門前仲町出店のきっかけともなった」と高田氏は続ける。
店内では日本酒を中心に焼酎、果実酒など、おおよそ150アイテムの和酒のほか、酒器や食品も取り扱う。「折原商店」の業態はあくまで小売店であり、日本酒専門の飲食業態ではない。しかし、角打ちを設け、日本酒が飲める環境を作ったのは、日本酒ファンはもとより、日本酒から離れている人、日本酒体験の少ない人達にもアピールし易いからだ。「ともかく日本酒に触れ、気軽に体験してもらい、買ってもらうことを主旨として、角打ちスタイルを取り入れた」という。
提供される日本酒は、その日のおすすめ銘柄のみならず、冷蔵庫に入る、泡系のお酒以外の全てと、常温で置く清酒が試し飲み出来る。飲みたいと希望すれば、その場で未開封のお酒も開けてくれる。角打ちならではの醍醐味だ。冷酒、常温酒は50ml、110mlのポーションで提供。燗酒はオリジナル徳利で150mlの提供。お酒は250円からと、50mlでのポーションは価格もお手ごろとなり、いろいろな銘柄を楽しめ、新鮮な出会いや自らの好みを知ることも出来る。
昔から角打ちはポケットマネーで飲める場所であり、「実際、お客さんのなかには上司が若い部下にポケットマネーでご馳走するような場面もある」という。「今後はビンテージの日本酒も置き、お酒の楽しみ方をさらに広げていきたい」とも続ける。
おでん、たこぶつ、筑前煮、ポテトサラダなど、50円からある料理は、全て一本やグラム単位となり、テイクアウトも出来る。なかには“紋二郎いか”、“酢いか”、といった駄菓子もメニューに並び、遊び心のある楽しさを加えている。大人にも子供にも人気のソフトクリームは外せないメニューだ。
月3回の縁日が立つ参道の店としてイベントも企画しており、毎月28日の縁日には各地の蔵元の紹介や試飲会の開催をはじめた。「ここを日本酒の情報交換発信の場として、お酒で人と人とをつなぎ、和酒を広めるコミュニティにしていきたい」と語る高田氏。また毎月第3土曜日はベーゴマといったような昔の遊びや文化を伝えるイベント企画もある。
「折原商店」は大人も子供も共に楽しめる“昔ながら”を“今”に伝える貴重な場なのだ。
店舗データ
店名 | 折原商店 |
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住所 | 東京都江東区富岡1-13-11 |
アクセス | 地下鉄 門前仲町駅より徒歩1分 |
電話 | 03-5639-9447 |
営業時間 | 10:00~22:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 12坪・スタンディング30名 |
客単価 | 飲食1600円、物販2000円~3000円 |
関連リンク | 折原商店 |