焼とりは誰もが気軽に楽しめるその大衆性から、古くから広く親しまれてきた食べ物だ。ひと口に“焼とり”と言っても全国には様々なタイプの焼とりが存在し、地域性豊かな食べ物として近年、改めて注目を集めている。例えば、鶏肉を使った一般的な焼とりだけでなく、豚肉を使った焼とんも地域によってはごく普通に“焼とり”と呼ばれ、人々の食生活にしっかりと根づいている。実際、人口当たりの焼とり店の多さから“焼とりの街”を宣言する街も多く、その1位となるのが埼玉県東松山市。そして2位が愛媛県今治市である。ただ、東松山市はいわゆる豚肉を使った“焼とり”であり、鶏肉を使った“焼とり”という意味では今治市が日本一ということに。ただし、今治市の“焼とり”も串打ちしていない鶏の皮を鉄板で焼いて供する独自のスタイルを売り物にしており、そこがまた“焼とり”という業態の魅力的な懐の深さでもある。そうした今治スタイルの焼とりを、本場そのままに提供して評判なのが「今治・鉄板焼 やきとり 山鳥 渋谷店」だ。
同店のオープンは2010年12月1日で、今治市で繁盛店として名高い「やきとり 山鳥」の暖簾分けの店として開業を果たした。同店の一番の売り物が「かわ」(皿盛り350円)で、メニュー表にも「お一人様一皿単位でご注文をお奨めします。多い人は一人一日で八皿召し上がれたこともあります」と謳い、お客の注文を促している。実際、なれたお客は「皮ダブル!(2人前)」などと注文し、1人で何皿も食べるお客も少なくないという。「かわ」は一度、鉄板で9割方下焼きして鶏皮の余分な脂を落としておき、注文ごとに再度鉄板で一気に焼き上げて仕上げるもの。焼く際にコテで押さえつけることでカリカリに香ばしく焼き上げ、味つけは塩、胡椒などを用いて最後にタレをかけて供する。
その他、「鳥ねぎ」「きも」「スナズリ」(各2本250円)、「せせり」(2本300円)などの串に刺した焼とりも同様に、注文ごとに鉄板で6~7割方火を通して最後に網焼きして仕上げることから、一般的な焼とりよりも早く提供できるという。こうした鉄板焼きの提供スタイルは、せっかちな今治人の気質に合わせて生み出されたという説や、今治が造船所の多い街のため、余った鉄板を使って始められたなど様々な説がある。そうした逸話もまた焼とりを食べる上において、おいしさを何倍にも高めてくれる。
メニューは他に「手羽焼」(2個300円)、「つくね」「牛バラ」(各2本450円)、「骨付き鳥もも一本焼」(850円)なども提供。さらに“特選焼き”として「今治地鶏(伊予水軍鶏)」(串焼き2本600円、もも焼き皿盛り1000円)、「きじねぎ」「鴨ねぎ」「しし(猪)串」(各2本1000円)などごちそう感の高い“焼とり”も揃える。特に「今治地鶏(伊予水軍鶏)」は、今治の本店が運営する農園で育てたオリジナル品種の地鶏を使用していて人気が高い。
他に鉄板で仕上げるメニューとしては、「ピーマン」「玉ねぎ」(各皿盛り290円)、「しいたけ」「えのき」「れんこん」(各皿盛り380円)などの“野菜焼き”。「いか焼き」「ほたて焼き」(各一皿450円)、「えび焼き」(一皿490円)などの“海鮮焼き”も提供。また、「かわ」に次ぐ2番人気なのが「せんざんき(今治風鳥唐揚げ)」(450円)。これは醤油、酒、味醂などで下味をつけて片栗粉をまぶして揚げた鶏の唐揚げで、地元今治ではまず最初に「かわ」を注文し、次に“野菜焼き”や他の焼とりを楽しんで、最後に「せんざんき」で締める注文パターンが親しまれているという。また、箸休めにもなる「しめさば」(600円)、「本まぐろ刺(赤身)」(800円)、「中トロ刺」(1200円)、「生さば刺」(900円)、「馬刺し」(1000円)などの“刺身”も揃える。さらに食事メニューとして「鳥皮丼」(580円)、「今治 焼豚たまご飯」(750円)、「特製まぐろ丼」(1200円)なども提供して喜ばれている。
食材は愛媛から産直することで本場と同じ味を再現。愛媛出身者が故郷を懐かしがって来店するなど、地道にお客の支持を集めており、次は東京のお客にどう浸透させていくのかが要注目だ。
店舗データ
店名 | 今治・鉄板焼 やきとり 山鳥 渋谷店 |
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住所 | 東京都渋谷区道玄坂2-28-5 道玄坂SUN・Jビル3階 |
アクセス | JR、地下鉄、私鉄各線 渋谷駅より徒歩3分 |
電話 | 03-3461-8200 |
営業時間 | 17:00~23:30(L.O.23:00) |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 17坪・36席 |
客単価 | 3000円 |
運営会社 | (個人)菅裕子 |
関連リンク | やきとり 山鳥 |