麻布十番商店街から路地を一本、古寺も密集する住宅街に入ると、ライトアップされた朱赤の外壁に、うっそうと蔦が生い茂る一軒家が出現する。それが、今年2月にひっそりとオープンした古民家ダイニング「麻布MISHIMA」だ。
壁画が大きく描かれた1階は、オープンキッチンと、広々とした玄関にもテーブルやソファーが置かれた不思議な雰囲気のBAR。2階は、花器を装飾しライトアップされた中庭を眺められるダイニングテーブル、8名までの大個室、2名用の小個室も完備のメインフロア。同店のオーナー、宮舞子氏は、貿易商の家に生まれた帰国子女で、自ら着付けする着物や、英語とフランス語での接客も可能。美術を好み、陶芸も嗜むなど、多才・多趣味な人物だ。店内は彼女の実家に実際にあった金蒔絵、関西火鉢、古時計や旧式電話機、三味線等々多くの骨董品や古美術品が無造作に置かれ、退廃的なレトロ感、懐古的なまったり感、そして大正・昭和ロマンまでもが漂っている。さらに氏がセレクトした、多数のアーティストによる絵画や装飾品、食器に至るまで、新旧・ジャンルを問わないアートが、MIXされ違和感なくモダンに調和している。
料理長は、16歳から和食一筋20年、ミシュラン星付きの店など名だたる名店で研讃を積んだベテランだが、「料理には終わりがない。一生勉強です。」と謙虚に語る大瀬清人氏。その料理は、京都老舗の湯葉専門店から直送の汲み上げ湯葉の先付け、日替わりで一期一会の前菜5品盛り、お造り、メイン、ご飯物、水菓子が基本の「麻布コース」、「海鮮陶板コース」「陶板ステーキコース」各6,000円と「特選MISHIMAコース」が10,000円から、予算やリクエストに応じて50,000円まで対応可能。
メインの一番人気は「阿波牛のしゃぶしゃぶ」で、指定農場から、A5の中でも特上のものを使用する看板料理。また上記以外に魚をチョイスすることもできるほか、春先も大好評だった「鴨鍋コース」もまもなく季節を迎えてスタート予定で、選択肢が広いのも嬉しい。
さらに「大皿前菜5品盛り合わせ」(3,500円)や、各種アラカルトもあり、中でもチーズの原料、ホエーを餌に与え、和牛のような旨さを秘めた「ホエー豚のスペアリブ」(1,500円)は、流通のほとんどない十勝産の豚で、ここでしか食べられない裏メニューだ。
このように決して設えだけにこだわって力を入れているのではなく、きちんとしたこだわりの和食を深夜でも、コースでも単品でも味わえる。しかも、使われる器や杯などは、すべて味わいのある年代物か、作家ものというこだわりだが、一般的な和食店と大差なく、特に一階のBARは、ノーチャージでサービス料もかからず、ちょっと一杯だけでも気軽に利用でき、麻布の隠れ家といえど意外に敷居が高くないのも魅力。
半世紀前にタイムスリップしたかのような本物のレトロ感と、半ばアートギャラリーのような空間を同時に楽しめるとあって、老若男女・国内外問わず、どんな客人にもサプライズ。古民家を改装した店は人気でじわりと増えているが、その中にあっても個性際立つ、比類なき一軒だ。
店舗データ
店名 | 古民家ダイニング 麻布 MISHIMA |
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住所 | 東京都港区元麻布3-10-2 1~2F |
電話 | 03-5410-1129 |
営業時間 | 17:00~26:00PM(L.O.25:00)月~土 17:00~25:00PM(L.O.24:00)日曜・祝日 |
定休日 | なし |
坪数客数 | 34席(1F 14席・2Fテーブル席・個室2室20席) |
関連リンク | 麻布MISHIMA |