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祖師ヶ谷大蔵「b.e.park」に見る空き家活用事例。「挑戦する人を応援する」不動産再生×飲食店開業サポートのベンチャー企業、スペリアルの取り組みに注目!

2020年10月、祖師ヶ谷大蔵にオープンした「b.e.park(ビーパーク)」。20年近く空き家だった3階建てビルを、1階を飲食店、2・3階をシェアハウスとして再生した複合施設だ。企画・運営を手掛けるのは不動産再生×飲食店開業サポートの株式会社スペリアル。「何かに挑戦したい人をサポートする」をミッションとする同社の取り組みを紹介する。



写真右から、スペリアル代表の荻野智希氏、フード担当の荻野幸氏、ドリンク担当の吉田東洋氏、スペリアル取締役COOの吉田柾長氏。30歳前後のメンバーで運営する

株式会社スペリアル
https://spereal.com/

20年空き家だったビルを飲食店とシェアハウスに再生

「スペース」と「リアル」を掛け合わせた造語を社名としたスペリアル(東京都練馬区)は、不動産再生事業と飲食店開業サポート事業を展開。練馬のイベント・コワーキングスペースとシェアハウス、1日店長バーの複合施設「Neriba(ネリバ)」などを手掛けてきた。代表の荻野智希氏は、会社員の傍ら音楽アーティストとして活動していたが、会社を退職し、オーストラリア・メルボルンやフィリピン・マニラへ海外留学に。現地で街と一体となってアーティストが活躍する様子を見て「日本でも表現者や挑戦者を応援する場をつくりたい」と不動産企画に興味を持つ。帰国後、不動産ベンチャー数社を経て独立し2020年8月に法人化した。

(祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩2分。商店街を抜けた先の住宅街に差し掛かる立地だ)

2020年10月にオープンした「b.e.park」は、祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩2分にある築60年の3階建てビル。1階が飲食店、2・3階がシェアハウスだ。「もともとは社宅や住居として使われていた建物ですが、これまで20年近く空き家になっていました。活用するには大がかりな改修費用が必要だったため、大家さんも手がつけられないままになっていた。そこで、当社が費用を負担してリノベーションを実施。周辺には地域の方、特に主婦層がくつろげるカフェが少なかったことに着目し、1階は地域の人の憩いの場となるカフェ&バーに。そして上階はアーティストやフリーランスなどの挑戦者が集まるシェアハウスにしました。1階は単なる飲食店ではなく、『何かに挑戦する人を応援する』をミッションに、さまざまな実験や企画を行う場として機能させています」と荻野氏。

昼は美容・健康をテーマにしたカフェ、夜はダイニングバーに

(カフェでは美容・健康をテーマにカレーをはじめとしたスパイス料理を提供)

1階は、昼はカフェ、夜はダイニングバーとそれぞれの顔を持つ。昼は、美容関係で働いていた荻野幸氏がプロデュースした健康・美容をテーマにしたカレーをはじめとするスパイス料理がウリだ。「もともと当社が運営する練馬の『Neriba』のシェアキッチンでも1日店長として料理を提供していました。それ以前はネイリストや美容師、美容系大手企業の企画職として働いていて、美容や健康に関心があった。料理も好きだったことから自分なりに研究した美容・健康がテーマのスパイス料理を提供しています」と荻野氏は話す。

(夜はダイニングバーとして営業。お客のリクエストに自在に応える「むちゃぶりカクテル」も人気)

夜は、バーテンダーとしての経験を持つ吉田東洋氏によるカクテルが楽しめるダイニングバーとして営業。吉田氏はバーテンダー以外にも、教育劇団の運営やワークショップデザイナーとして活躍している。同店ではカクテル監修の他、全体の接客やホール業務の監修も担う。

(1階店舗の一角には、書店と植物ショップも構える)

さらに1階では、店内の棚に本を陳列し販売する「b.e.park book store」と、店内に植物を置き購入できる「b.e.park green shop」も営業。これらはシェアハウスの住人をはじめとした関係者が行っている事業だ。それ以外にも、ポップアップの飲食店やECの製造工場としても活用することも。今後もこのスペースでシェアハウスの住民も巻き込みながら地域活性化になるようなイベントを企画していきたいという。

ひとつの仕事に縛られない働き方や、経験がない人が挑戦できる場を提供

「b.e.park」で、飲食店プロデュースとマーケティングを担当したのは、同社取締役COOの吉田柾長氏。「飲食店の開業には莫大な初期投資がかかり、リスクが大きい。ここは上階のシェアハウスを収益の柱としているので、1階の飲食店ではある程度のチャレンジが可能です。昼のスパイス料理を担当する荻野のような、飲食店経験がない人が自分の料理を提供できる場となったり、夜のダイニングバーを担当する吉田東洋のように、バーテンダーのほか講師やシェアハウス管理人など、複数の仕事をしながらスキルや経験を積める新しい働き方を応援する場となったりしています。コロナ禍もあり、いま飲食業界は混迷の時代に。初期投資や固定費の大きな実店舗を構えることはよりリスクとなりました。また、世の中で複業推進の流れもあり、飲食一本でいくのではなくさまざまな仕事で経験を積んで多彩な視点を身に着けることも有用な手だてのように思います。『b.e.park』のように、スペリアルとしては経験がない・勇気がない人の一歩を踏み出す手助けをしていきます」と話す。吉田氏自身も、同社以外にも地方活性化団体の代表としても活動している。

荻野氏は「挑戦する人を応援すると同時に、“まちを面白くする仕掛け人”になることが会社のミッション。いま、日本には多くの空き家が発生しています。『b.e.park』の取り組みを通じ、未活用の不動産を持つ大家さんから『あなたたちになら貸してもいい』と言ってもらえる施設づくりを行っていきたいですね」と話す。

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