新・編集長コラム

Z世代と飲食店・後編-店選びの事前調査を入念に行う「失敗したくない消費」とは

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


店での振る舞いの「正解」を提示すると、Z世代は来店する?

そんなZ世代には、「事前情報が得られない、よくわからない店」は忌避されるところ。サプライズよりも予定調和を重んじる彼らには、いかに事前情報で安心してもらうかが来店のカギになってくる。

ここでひとつ事例を挙げたい。渋谷「テンキ」のInstagramが、狙っているのかたまたまなのかはわからないが、この「失敗したくない消費」に刺さる投稿となっている。

アカウントの投稿全体を眺めてみると、各メニューについて、1つの投稿で1品ずつ詳細を紹介している(赤枠で囲った部分)。これを眺めていればこの店のメニュー構成がなんとなくわかる。店に行かずともその店のメニューの全容がわかることは、「失敗」を避けるのにとても役立つ。各品のわかりやすい写真、メニュー名、説明に、値段まで書いてあったら完璧だ。この投稿スタイルは同店に限らず最近多くの飲食店アカウントで行われている。

こちらの投稿にも注目したい。

初めての人に「まずこれを頼んで」と、冗談も交えながらわかりやすく店の楽しみ方をガイドしている。メニュー選びも「失敗したくない」彼らにとって、こうした文章があることで「その店での振る舞いの正解」がわかり、不安が軽減される。メニュー選びの「正解を知りたい」というニーズについては私も以前のコラムで言及している。

飲食店がたまたまインフルエンサーに取り上げられて客数が増加する、という現象も現代ではよく見られるが、店の人は口をそろえて「インフルエンサーの投稿を見て来店した人はすぐわかる」という。それは「ほぼ全員が、インフルエンサーが頼んだ品とまったく同じ組み合わせを注文する」からだ。

あの人がオススメしていた、これとこれを頼めば間違いない――店にお客が押し寄せるのは、「インフルエンサーが取り上げたから」ではなく、「インフルエンサーがその店で頼むべき『正解』を提示したから」なのである。それにより来店へのハードルが一気に下がり、客数に反映される。

「この店に行くと何が食べられる・飲めるのか」「どういう過ごし方ができるのか」といったことを発信している飲食店は多いが、Z世代を狙う飲食店であれば、「この店で食べる・飲む“べき”ものは何なのか」「どういう過ごし方をす“べき”なのか」を開示し、「失敗」への不安を払拭していくことが大切になってくるのかもしれない。

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