韓国業態は一過性のブームか?
コロナ禍以降、韓国ブームが加速。アイドルやドラマなど様々な韓国カルチャーが日本で広がったが、グルメも例外ではない。特に新大久保のみならず全国に若い女性をターゲットにした韓国業態が爆発的に増えた。人気ドラマに触発された韓国チキンや韓国焼酎、のびるチーズやネオンサインなど、“写真映え”を強く意識し、若い人が利用しやすい低価格の酒場だ。
ややもすれば一過性のブームに見える韓国業態だが、いま一皮剥けようとする動きがある。“映え”ではなく、料理としてのまっとうな価値を追求した韓国料理が楽しめる、「韓国ガストロノミー」の流れがやってくるのではないだろうか。
「韓国ガストロノミー」のターゲットは20代の若年層ではなく、多少値が張っても落ち着いて美味しいものが食べたい30代以上。ほどよくオシャレで落ち着いた雰囲気で、舌の肥えたオトナも満足できる本格派の韓国料理を提供する。
「韓国ガストロノミー」注目店は?
例えば、「韓国食堂 入ル」など、関西と東京で韓国料理業態を展開するSOME GET TOWNが「韓国ガストロノミー」に取り組んでいると言える。
代表の山崎 一氏は、かつて韓国で料理人として活躍した母を持つ。同社の店舗で提供するのは、その母のレシピをベースにした本格派な韓国料理。実際に「入ル」はミシュランに料理の味が評価されてビブグルマンを獲得するなど、その味は折り紙付きだ。
そして、2022年11月には学芸大学に「韓国スタンド@(アットマーク)」をオープン。本格的な韓国料理を立ち飲みスタイルで気軽に楽しませるという趣向で、山崎氏は取材で「当社のモットーは『日本にない業態をつくる』。最近増えているSNS映えを意識した若い女性向けの韓国料理の店でも、昔ながらの韓国のおばちゃんが強気の接客をする店でもない。本場仕込みの本格的な韓国料理と丁寧な接客を、立ち飲みで気軽に楽しめる店を目指しました」と話してくれた。
一方、同じく2022年11月、下北沢に「韓国料理 KOREAN DINING HAN-CHEF」がオープン。オーナーは韓国出身のオク・スンフン氏。日本における韓国料理は大皿であることが多く、一度の食事で種類を楽しめないことに課題を感じ、少量小皿の韓国料理に挑戦したという。和食の繊細なエッセンスを加えた唯一無二の韓国料理をコース仕立てで提供。大人の隠れ家の様相を呈するシックな空間は、まさに「韓国ガストロノミー」と言いたい。
「韓国料理 KOREAN DINING HAN-CHEF」(記事)
”映え韓国”に親しんだ若い女性たちが、次に求めるもの
新大久保で映える写真を撮って喜んでいた20代の女性たちもいずれオトナになる。ブームによって韓国料理の魅力を知った彼女たちが、年を重ねて“映え”から“料理の質”に重きを置くようになった時、次に楽しむのは「韓国ガストロノミー」。美食としての韓国料理、それを、ネオンサインが光る空間ではなく、ほどよくオシャレでありつつも肩ひじ張らない落ち付いた空間で、例えばナチュラルワインと組み合わせて楽しむような店が求められるようになるのではないだろうか。