古着屋や雑貨屋、カレーの店などが立ち並び、若者の街というイメージが強い下北沢。奥には高級住宅街を擁し、駅から離れれば隠れ家的な店は少なくないものの、駅前は10代や20代前半の若者が中心。酒場を営業するには年齢層が低く、ある程度の年齢層や単価を想定するオーナーは三軒茶屋に南下して出店するケースも多かった。その潮目を変えたのは「下北六角」。三軒茶屋で人気酒場「三茶呑場 マルコ」をドミナント展開する2TAPSが、初のアウェイ出店で下北沢に進出だ。彼らも創業当社は下北沢も検討したものの「10年ほど前は大衆文化が強く、僕らが想像する単価に合わないのではないかという懸念があった」と、創業の地は三軒茶屋に。ところが営業を始めてからは想像以上に下北沢から来店するお客が多かったことに加え、ここ数年で街が変化していることを鑑みて出店を決めたとのことだ。ここ最近の下北沢は年齢層が上がり、大人がお酒を楽しむ街としても通用し始めている。
この「下北六角」が入る商業施設「下北ミカン」は他テナントも好調だ。都内を中心に展開する「タイ屋台999」も入り、17坪の店内で5・6月の月商はおよそ1550万円と絶好調。
なお、盛り上がっているのは商業施設だけでない。街場にも次々と注目店がオープンしている。前回のコラム「R30オーナーの台頭!「飲食第六世代」の時代はもうすぐ」でも紹介した「串焼きと煮野菜 下北沢の零や」は20代をメインターゲットにしているものの、40代以上のお客もちらほら見かける。価格に対してしっかりクオリティの高い商品・サービスを提供していることが大人にも評価されているということだろう。楽コーポレーション卒業生の「まいにち千秋楽」は、ちょい飲みではなくじっくり腰を据えて楽しむ店づくりを目指したというが、「下北沢も若者の街から変わってきている。“ゆったり楽しむ大人の店”を出しても行けるだろうと思った」と店主の言。
さらに2021年に中目黒の出店を皮切りに急速拡大する「焼売酒場」が7月に下北沢にオープン。11月ごろには大阪発の人気酒場「大衆食堂スタンド そのだ」も下北沢に出店予定とのこと。複数店舗を展開する伸び盛りブランドもこぞってこの街に注目している。
その一方、三軒茶屋では逆転現象が起きている印象だ。酒場カルチャーの街として知られる三茶はここ数年でますます人気が高まり、いわゆる「ネオ酒場」も増えて若者にも認知が広がっていった。2020年の緊急事態宣言時でも人出が衰えることがほとんどなく、コロナ禍以降は特に若い人が増えた。その結果、三軒茶屋の方に若者向けの店が増え、下北沢に30代以上が流れているのではないだろうか。「しっぽり飲むなら三茶より下北」という声が聞こえてきそうだ。