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新・編集長コラム

「すし」でも「寿司」でも「鮨」でもない「スシ」の概念。新たにすしマーケットを席捲する⁉「カタカナ系スシ酒場」

日本が世界に誇る食コンテンツの代表格であるすし。一人数万円の高級店からチェーンの回転ずしまで、幅広い価格帯のマーケットが存在するアイテムと言える。そんなすしマーケットでいま増えているのが、日常的に使える手頃な価格帯ですしをつまみに飲めて、若い人にも親しみやすいネオ酒場的要素を加えたすし酒場だ。これらは店名をカタカナにしているケースが多いことから、「カタカナ系スシ酒場」と名付けたい。

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


カジュアルすし酒場が”ネオく”進化

以前からカジュアルすし酒場はいくつかあったが、そこにネオ酒場的要素を強めたのが「カタカナ系スシ酒場」だ。一人数万円の高級店、昔ながらの町のすし屋、チェーンの回転すしなど様々な業態が混在するすしマーケットで、新たな可能性を示している。

「カタカナ系スシ酒場」の特徴を、以下に列挙する。

・すし初心者歓迎のコンセプト
近年の高級すしバブルで難しいイメージを持たれがちなすしだが、歴史をたどれば江戸時代は庶民のファストフードだった。すし=高級の概念を取り払い、初心者歓迎のスタンスを掲げる。「すしを気負いなくカジュアルにつまんで飲む」というコンセプトがキモだ。単価3000~5000円程度に抑え、カジュアルに使える店を目指す。

・SNS映え必至、高級食材やパフォーマンスによる高付加価値な創作すし
先の初心者にも親しみやすい店づくりの一環として、インパクトがありSNS映えする創作すしを揃えている。あふれんばかりに盛り付けられたウニやイクラなどの高級素材、ふたを開けると燻製煙とともにお目見えするネタ、「これはなに?」と思わずツッコミたくなるユニークな商品名。おおよそ一貫500円ほど、SNS映えを狙った原価度外視の広告替わりの創作すしを名物にしながら、一方でマグロやサーモン、エビやたまごなどベーシックなネタも揃えて一貫100円ほどからリーズナブルに提供するメニュー構成。流行りの「あてまき」も必須だ。


(三軒茶屋の「サンチャモニカ」の名物「まぐろ三重奏」。大トロ、炙りトロ、漬け赤身と3種類のまぐろを重ねた握り)

・ポップで入りやすい外装、一方で単価に対して+3000円の高級感ある内装
店のファサードもイマドキ感を意識。ネオンサインやイラストを駆使したイマドキ感のあるデザインで入店ハードルを下げる。その一方で、内装は白木や大理石を使って客単価に対して+3000円くらいの高級感のある設えで、すしの特別感を演出。外と中のギャップが魅力だ。


(新宿三丁目の「スシンジュク」。すしをかたどったネオン、イラストをあしらったのれんなどイマドキ感満載のファサード)

・店名がカタカナ
そして最後に店名がすべてカタカナであること。なぜこぞってカタカナにするのか?「寿司」や「鮨」のような漢字の堅苦しさを取り払い、初心者や若い人にも親近感を持たせる店づくりの表れだろう。すしでも寿司でも鮨でもない、この「スシ」は、令和の新しい概念だ。

「カタカナ系スシ酒場」の注目店はどこ?

まず注目したいのが、2020年11月、恵比寿に1号店がオープンした「スシエビス」だ。スパイスワークスによる新業態。スパイスワークスはスシローの「杉玉」をプロデュースしたが、そこからさらにポップにエモく進化。7月には、よりエモさに振り切った(?)「スシンジュク」を新宿三丁目に出店している。さらに「カタカナ系スシ酒場」の勢いに弾みをつけたのが、6月、三軒茶屋にオープンした「サンチャモニカ」だ。こちらはエー・ピーカンパニー元幹部の綱嶋恭介氏による2店舗目。1店舗目の経堂の「今日どう?」は地元の人気店に。今回はワインとすしの初心者に向けて、ワイン×すしのペアリングを提案するコンセプトに挑戦している。さらに、三軒茶屋などで展開する「スシスミビ」、代々木の「すし酒場 サザエ」などもある。

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