飲食店経営を母体としながら、その知見を元にした外食特化型の人事評価システム「ニュートン(Newton)」を開発提供しているのが、株式会社Leap-itの亀岡佑祐(ゆうすけ)氏だ。サービス概要や独自性に加え、開発に至った経緯や今後の目標などをたずねた。(後編はこちら)
現場を丸投げしていた反省から可視化と管理分析システムを開発
同社の祖業は飲食店で、現在9軒を展開。愛媛県出身の亀岡氏は学校卒業後に大阪へ渡り、夜職の接客業で頭角を現す存在に。そこで蓄えた資金を元に、気心の知れた仲間とともに2012年、地元・松山に「炭火焼肉スーパーホルモン 小栗店」を開業する。
翌2013年には2号店「炭火焼肉スーパーホルモン 鷹ノ子店」をオープン、同年9月には株式会社デイドリームを設立し法人化。その後も順調に系列店を増やしていったものの、5店舗になったあたりで壁にぶつかった。それが、自分とスタッフとの間にある仕事への熱量である。
「各店を任せる形で運営していたのですが、売り上げは次第に低下。打開策を求めて経営者向けの勉強会に参加し、人材育成や組織づくりを学ぶ中で気付いたのは、自分のやり方は『任せる』ではなく『丸投げ』だったことです」
そこで亀岡氏は、飲食店の経営要素をひとつずつ分析して仕組化。さらに改善点などを迅速かつ明確に抽出するため、仕入れ発注や売り上げなどを日次ベースで一元管理できるシステムを開発する。やがてコスト削減などのやるべきことが可視化され、業績もV字回復。
そのうえで亀岡氏が取り組んだのが、人事評価システムの開発だ。こちらがのちに「ニュートン」となり、2024年からは外部販売するべく事業化。新たに東京でLeap-it社を立ち上げ今に至る。まずは改めてサービス概要から聞いた。
良い人材が離れない組織作りをサポート
「採用から評価・教育まで一括管理できる、飲食店に特化した人材システムが『ニュートン』です。店舗運営で重要な人事課題は大きく分けてふたつあり、ひとつが“良い人材が離れない組織を作る”。そのために大事なのは、モチベーションアップです。
モチベーションをさらに因数分解すると、目標設定があり、達成可能性はどうか、そして達成に伴って得られる報酬があるのか。これらは給与設計の部分でも非常に大切であり、すべて一気通貫しています」
「また、行動に対して適切にバランスよく評価することがモチベーションにとって重要となりますが、アナログではどうしても感覚的になりがち。そこで業務スキルなどを可視化し、仕組みを基に定量的に評価しましょうというのが『ニュートン』です」
教育を最大化し生産性を向上
店舗運営で重要な人事課題のもうひとつは、“教育を最大化し生産性を向上させる”。亀岡氏は、「会社の利益を最大化する人材育成の要は、店長の質と業務スキルの可視化です」と語る。
「店長はいわば、経営者と現場スタッフの橋渡し役でもありますよね。ただ、会社として大切にしていることがズレていたり、当初と言ってることが変わっていたりということは店長あるあるです。そして、その問題を解消したいとは思いつつ、どこから手をつけていいのかわからないという経営者は少なくないでしょう。
そこで私たちが提案するのが、まずは業務スキルを可視化して、評価軸を作りましょうということ。成長の道筋が共有されることで、教える側も教わる側も仕事がしやすくなり、会社としての風通しもよくなります」
導入する会社はさまざまだが、最も多いのは5~10店舗を運営する企業。ただ実際にサービスを開始すると、比較的小規模展開の企業でも採用するケースは多かったという。
「実は、1店舗でも導入されたいという方は1割以上いらっしゃいますし、1~4店舗運営の企業様で全体の4割弱いらっしゃいます。いずれにせよ、まずはじっくりと現状などをヒアリングさせていただきながら、私たちが伴走できる部分やサポートできる部分をお話して導入という流れですね」
公平かつ全方位的に評価できる独自のシステム
亀岡氏自身の飲食店経営ノウハウを生かしていることが「ニュートン」の特徴だが、改めて独自の強みを聞いた。
「外食企業に特化している点をより具体的にお伝えしますと、単純な評価制度の仕組みだけではなく、スタッフの評価の仕方も店舗経営に基づいてやっているところ。たとえば、技術的なスキルの評価だけでなく、会社の理念が実践や姿勢に表れているかという部分もあることですね。
また、デスクワークが苦手な方でも扱いやすい設計もウリ。実際の現場で使い込んだ中から考えられた見やすさや簡便さがあり、操作しやすいものとなっています。タッチ数も極力減らしていますね」
また、評価においては上長評価と自己評価を組み合わせるうえ、複数の上長が評価するシステムを採用していることもポイント。この点に関しては特許を取得していて、偏りのない評価制度を実現している。
「上長個人ではなく、会社全体としての視点から評価する形となるので公平性が保て、従業員側の納得度も高い評価制度を構築できると自負しています」
後編では、実際の導入事例なども用いながら解説し、飲食業界出身である亀岡氏がどのようにして「ニュートン」を開発できたのか、などにも迫っていく。