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異例の戦略コンサル出身。成功の仮説を自ら検証したかった
鶴田氏の経歴は異色だ。早稲田大学理工学部情報学科を卒業後、本田技研工業株式会社のIT戦略部門に配属。その後、外資系や国内大手からスタートアップまで、新規事業に関する戦略コンサルティングに20年近く従事した後、シートマーケット社を起業した。
「戦略コンサルタントにも様々な専門分野があります。そのうち私が得意とする新規事業領域はゼロ→イチの世界で、頓挫してしまうとゼロのままで水の泡となってしまいます。頓挫する要因は、市況の悪化や予算減、担当の異動や変更、テスト販売の不振など多岐にわたるのですが、振り返るともどかしい事例も多いんですよね。しかし一方で、私はあくまで外部の人間ですから、リスクを取っているわけではありません。次第に、ジレンマのようなものが積もっていきました」
プレイヤーとしての挑戦心とともに、自ら考えた成功の仮説は本当に正しかったのかを実証したいという想いも加熱していった鶴田氏。さまざまなビジネスモデルの中から現実味や市場規模、ニーズなどを鑑みて価値を見出したのが飲食店の即時予約だった。
「即時予約のニーズは他の業種にもありますが、外食業で挑戦したかったのは、経験や知人に関係者がいるなどではなく、私が外食好きだからです。それに私自身、終業時間が読めないのでお店の予約はできず、やっと終わって飲みに行こうとなってから店を探したり、電話したりするのはストレスに感じていました。『すぐトル』みたいなサービスがあればなぁって思っていたわけですよ」
おぼろげに起業を意識しはじめたのは2015年ごろで、そのころコンサルティングファームの代表取締役も経験している。実際に「すぐトル」の事業化に向けた準備を開始したのが2021年の7月、本格始動は2022年の3月。そして同年7月に「すぐトル」をローンチした。
当時は緊急事態宣言からは遠ざかっていたものの、コロナ禍がいわゆる5類感染症へと移行する約1年前。世間的には徐々に以前の外食文化を取り戻している時期であり、鶴田氏もタイミング的に「もう大丈夫」と思ったと振り返る。改めて、サービスの強みも教えてもらった。
“即時”に特化した利便性や速さは他社にない強み
「ポイントは、特化している要素が多いことですね。店舗様でいえば、常時お客様でにぎわっている繁盛店や、立地条件がいい駅前の路面店などは『すぐトル』を必要としないでしょう。逆にニーズがあるのは空中階や地下、裏通りにある隠れ家のようなお店など。つまり、特に親和性が高いのはウォークインの集客に苦労をする飲食店ですね」
特化という面でさらに強みとなるのが、即時予約に振り切っていること。たとえば競合としては「TableCheck」「OpenTable」「PeyPeyグルメ」などが挙げられる。これらのサービスも即時予約はできるが、あくまでも総合予約サービス内におけるひとつの側面が“即時”である。逆に「すぐトル」は翌日以降の予約はできない。ある種これは、機能面でもパブリックイメージでもストロングポイントとなっている。
「即時予約に特化しているからこそ、システムもUI(いわゆる、デザイン的な快適性や美しさのこと)もシンプルで、わかりやすく使いやすいんです。また、名だたる予約サービスの即時予約はあくまでも補足的な一面。一方『すぐトル』は名称からして即時予約のサービスですし、ユーザーさんにも覚えていただきやすい。SEOでも『当日予約』『店』で検索すればかなり上位に『すぐトル』が出てきますから、非常に優位性が高いと思います」
ユーザー視点としても、「すぐトル」なら即時予約の目的を達成しやすい。これが一般的な予約サイトであれば、数段階の絞り込みが必要となるだろう。また、用途の完結性はシステム的な部分もシンプルになるため、リソースもコストも抑えられるし、サーバーの負荷も軽い。
「私たちで他社サービスとのリードタイム(サイトに入ってから予約完了までの時間)を比べたところ、『すぐトル』は5~10秒でしたが他は速くても約2分。最も時間がかかったサービスでは10分程度要しました。要因は『当日・近く』に絞るためにかかる時間と、『結局その時間だと電話』になって調べ直す時間ですね。当日・今すぐ飲食をしたいときにだけ使う『秒速確保』が、『すぐトル』における最大のユーザーベネフィットだと自負しています」
極端な話、競合はグルメサイトや総合予約サイトではない。「どちらかといえば、街の客引きやバイトにさせるビラ配りや声掛け、電話予約という昔からある予約方法。これらが競合なんです」と鶴田氏は語る。では、「すぐトル」に登録したい店の料金システムはどうなっていて、現状としてどれぐらい広がっているのか。これらは後編で解説しよう。
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