コラム

飲食店経営「負けない戦い」とは…

飲食店のオープンに立ち会うことが多いが、最近は10件に9件がいわゆる居抜き物件"を改装したケースだ。初期投資を抑え、経営リスクを最大限回避しようという考え方で中小のみならず、大手外食企業にもその波は広がってきたが...。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


“100店舗100業態”達成間近のダイヤモンドダイニングは、8月20日に新宿靖国通り沿いの飲食店ビル4階に96店舗目の「戦国武勇伝」をオープンする。戦国武将の甲冑が出迎えてくれるコンセプト居酒屋だが、内装は撤退していった居酒屋がそのまま残した完全個室スタイル。同社はその個室を各武将の部屋に見立てる演出で死んでいた空間を蘇らせようという試みだ。スケルトンから設計施工するとなると大きな投資がかかる。その負担を抑え、ROI(投資回収率)を高めようという狙いだ。同社は子会社ゴールデンマジックで、全店居抜き出店ビジネスモデルを展開中だか、本体でも立地、業態によって居抜き手法を取り入れている。株式上場後、「負けない戦い」を続けてきた松村厚久社長の“家康的戦法”と言っていいだろう。こうした「負けない戦い」の手段としての“居抜きビジネス”は、バランス経営の観点からも評価されていいと思う。しかし、「強引に勝ちに行く」あるいは「楽して儲ける」という狙いが透けて見える居抜きビジネスモデルはどうか。撤退、閉店が続く“ブラックオーシャン”(墓場マーケット)を荒らしまわるギャング集団のような企業グループが幅を利かせ始めた。もちらん彼らのビジネスも顧客が存在する限り、認められる。いまさら藤田田氏の言葉を持ち出すまでもなく、外食産業は“常在戦場”産業であり、「勝てば官軍」とされる側面もある。均一低価格居酒屋業態で突き抜けた三光マーケティングフーズなども既存店を「270円均一」に業態転換することによって、不死鳥のように蘇った。そして最近、平林社長の口からは「飲食業界のユニクロになる」という宣言が飛び出している。2010年夏。今の飲食マーケットを見ていると、まさに混沌。大小・新旧入り混じったまさに戦国時代さながらの様相だ。企業によって武器や戦い方が違う。私は2010年年初に「価格軸から価値軸へ」と提唱した。しかし、流れは価格軸が相変わらず大手を振って闊歩し、価値軸は壊れ、砕け散っていると映る。暗闇の時代なのかもしれない。その先に光明はあるのか。新しいスタンダードは出てくるのか。料理やオペレーションだけではない、飲食店経営も原点に戻るべきではないか。もつ焼き処い志井のナンバーツー、エムファクトリーの長谷川勉社長がブログでいいことを書いている。「昔はスケルトン渡しのピカピカの厨房機器!キチンと、借金してリスクを背負い お店を開くべきだと思います!小手先だけの料理で、流行を追い商売をするのは危険だと思います。商売でなく、だだのビジネスになってないですか…。当たる・当たらないではないのです。お金をかけないと、クオリティーの高いオリジナリティーの有るお店が出来ないと思います」。猛暑の夏、私の心に刺さった言葉でした。 

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