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コラム

増える“店産店消”型の野菜業態

野菜トレンドの第二波が来ている。これまでは、どちらかというと、"健康志向トレンド"の流れから注目されていたが、いまは店の中で野菜を栽培して売るといった"生産者志向"の飲食店が増えてきた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


飲食店の業態コンセプトやメニューアイテムにおいて、野菜の占めるウエイトは増えてはいるが、有機野菜や無農薬野菜=美味しいというメージがなかなか定着せず、コストパフォーマンスの面でも飲食マーケットを席巻するほどの動きはなく、どちらかというと野菜を打ち出したマニアックな店は残っても、多くの野菜コンセプトの飲食店が消えていった。健康志向のトレンドを反映した野菜ブーム第一波は尻すぼみに終わった感があった。しかし、最近また“野菜コンセプト”の新しい店が増えているが、これまでの“健康志向”とは違う“生産者志向”の動きが感じられる。これまで控え目だった生産者、農園経営者たちが、自分たちのパワーを表現する場所として“外食”シーンの前面に出てきたということだろう。

ここにきて新しく登場してきた野菜業態が、店の中で農園をつくり栽培して、ライブに客に提供する地産地消ならぬ“店産店消”スタイル。オイスターバー「ジャックポット」や野菜料理の「ごまや」など20数店舗を展開するジャックポットプランニングは、店内で水耕による野菜栽培が行なえる植物工場「シェフの農園」を起用した第1号店となる「ラ・ベファーナ」汐留店を、4月にオープンした。目の前で収穫された新鮮な野菜を、都会的なロケーションで食べられる。もともと狛江の有機野菜農家と提携して無農薬野菜にこだわった店を何店舗もつくってきた同社の中川社長は、電通の関連会社が環境事業の一環としてカレッタ汐留に設けていた「シェフの農園」と組んで、この野菜の“店産店消”を実現した。

青山のイタリアン「HATAKE AOYAMA」では、店内のテラスには季節の野菜の鉢が並び五感を癒す。栽培した野菜を提供するわけではないが、店側は「畑の目の前で新鮮野菜を召し上がっていただくイメージ」を強調する。六本木の隠れ家と呼ぶにふさわしいのは「六本木農園」。昨年オープンしてからすでに予約も難しいほどの人気である。つい最近、「六本木の待ち合わせは畑で」を謳い文句に農場展示場&スタンディングバー「ファーム」がオープンした。ファームでは野菜や果実を使った農園ハイボールやフルーツモヒート、ワインに、ちょっとした野菜の酒肴が楽しめる。「六本木農園」は生産者と一緒に日本を元気にしたい農業実験レストランとして、オープンした。農家のこせがれネットワークと共に都市と地域を結び、地域活性化と農業活性化を促す目的も持つ。

8月6日、銀座三越増床部の銀座テラスにJA全農が「みのりカフェみのり食堂」を出店する。「収穫の実りや恵みの喜びを味わう」をコンセプトに、野菜を中心に国産食材にこだわったメニューが楽しめるようだ。また、「食と農」の情報発信地として生産者と生活者をつなぐ場としての機能を持つ。運営はカフェカンパニーが行う。JA全農が銀座のど真ん中に直営店をオープンさせるほど、今、野菜は注目の食材であり、業態をつかさどるコンテンツとなっている。今度こそ、飲食マーケットの“主役”に踊りだすだけの大きな波になっていくかもしれない。

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