昨年、道路拡張を理由に閉鎖した「NOBU東京」。ノブ・マツヒサ(松久信幸氏)とロバート・デニーロの共同経営で、いまやニューヨークをはじめ、 パリ、ミラノ、シドニー等、世界19ヶ国に展開しているレストランだけに、閉鎖したままというのはおかしいと思っていたら、意外な場所に移転オープンして いた。ノブ側の日本での経営母体は、六本木ヒルズ集中出店がたたって倒産、民事再生中のソーホーズだった。その影響が懸念されていたが、さすが世界の NOBUである、満を持してファンの前に「新生NOBU」の華やかなお披露目を行なった。 新しい場所はなんと虎ノ門。ホテルオークラの目の前に昨年11月竣工した41階建ての「虎ノ門タワーズレジデンス」。そのオフィス棟の1階に1月に こっそりとオープンしていたのだ。「NOBU東京」は1998年10月に南青山にオープンして以来、フュージョン和食のフラッグシップとして話題を集めて きた。私は2000年6月の「アリガット」創刊号でノブ松久さんのロング・インタビューをした。表紙にはノブの顔、地下鉄の中刷り広告のキービジュアルに は「ノブの手」を使わせてもらった。オーナーが自由にクリエイティブな飲食スタイルを発信していくノブスタイルは、まさに“レストラン・ビッグバン”の象 徴でもあった。 時代は回って2007年、いま東京は「バブルへGO!!」の応援歌に乗って、第二次“レストランバブル”(私論だが、“第一次”は丸ビル、六本木ヒ ルズが誕生した2002~2003年)入り口にあるといってよい。しかし、現実は勝ち組と負け組が交錯する凄まじいサバイバルゲームが展開されている。勝 ち組の“共通項”は「スピードと大胆なスクラップ・アンド・ビルド」である。小さな成功や失敗にこだわらず、思い切って“コンセプト・チェンジ”をする蛮 勇こそが求められているのではないか。 5年前には斬新で元気だった中堅チェーン店でさえ、組織に前例主義や官僚主義(いま流行りの“しがらみ”)がはびこるとすぐにマーケット感覚を失っ てしまう。コロワイドやラムラ、際コーポレーションなどが成功体験に苦しんでいるのはそのいい例だろう。一方で、ダイヤモンドダイニングや一六堂、未知 コーポレーション、きちりといったフットワークのいい30代経営者たちが新勢力となりつつある。今こそ、宮崎県の東国原知事のような「上を下にするよう な、とらわれない発想」こそが時代を勝ち抜く武器になるのではないか。その意味で、10年ぶりに“レストラン・ビッグバン”の波が押し寄せてきている、と 言えるかもしれない。
コラム
2007.02.22
新生「NOBU東京」誕生とレストラン・ビッグバン””
1月に虎ノ門タワーズにシークレット・オープンしていた新生「NOBU東京」が2月20日、ロバート・デ・ニーロ緊急来日"という演出でオープニングレセプションを開催、派手なデビューを飾った。 "
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。