コラム

「銀座Velvia館」とJR系子会社の挑戦

今日19日オープンの三井不動産「銀座Velvia館」の内覧会を覗いてきた。飲食は地下1階、1階、7~9階である。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


第一印象は「軽い」「力が抜けている」であった。銀座エリアで三井不動産が開発した最近のビルには「銀座ZOE」と「交詢ビル」 があるが、前者は“力が入り過ぎ”、後者は“重過ぎ”て近寄りがたい印象があった。その反省に立ったのだろうか、そもそもプランタン銀座周辺の2丁目エリ アは女性中心のヤングカジュアルがコアターゲットだ。「軽いけどちょっと面白い」感覚がなければ続かない。隣のミキモトビルの「DAZZLE」や「ベージュ東京」にしても、立地からしてやや無理があると感じていた。 その点、「銀座Velvia館」の“軽さ”は心 地いい。コンラン×ひらまつ「アイコニック」はブライダルやラウンジのほうが面白そうだし、7~8階の各店はカウンター席が中心ですこぶる入りやすいファ サードとなっている。西麻布「アヒル」やカバブ料理の「シタラ」などの話題店も入っており、いずれの店も女性一人客でも“カウンターでワイン”が楽しめ る。和食系も中村悌二氏の「KAN」はじめ、彼が提案する“白い暖簾の白木で統一したシンプルな空間”が原点回帰への進化の可能性を示唆している。「薄暗 い空間でジャズを聴きながら…」という和食ダイニングスタイルの終焉を告げているようだ。 そして、ちょっとした驚きと発見があったのが地下1階の「食房酒膳 銀座六景」である。東京駅の「黒塀横丁」の焼き直しだと思っていたら、不思議な進化を遂げていた。地鶏炭火焼、串揚げ、おでんなどの老舗からブランドを 買って“暖簾分け”を演出したMDもさることながら、店と店を挟んだ“散り席”があり、そこでは異なる店の料理を同時に注文できる。さらに個室(カラオケ 室も)があり、そこでは各店から“出前”が取れる仕組み。横丁の専門店×フードコート×個室パーティという発想である。それに併設しているビアバーでは大 手ビールメーカー4社9銘柄のドラフトビールが飲み比べできるという仕掛け。これら既成概念を突破する発想がとても新鮮だったのだ。 しかも、経営がJR東日本の子会社「デリシャスリンク」 という点も面白い。規制にがんじがらめだった鉄道会社が飲食ビジネスではここまで“規制撤廃”を貫けるのだ。いまやJR東日本は三菱地所、三井不動産など を追撃するディベロッパーでもある。「東京という街を変えるのは大手デベだけではないぞ」という意気込みも感じられる。今後、街場への出店も加速するそう である。元公営企業といえば、たばこのJTが子会社でシガーバーを展開したり、東京メトロも駅中開発に走り出している。NTTも子会社の都市開発が商業部 門を拡充させているし、郵政公社も郵便局をレストランに変える可能性だってある。“先行馬”JR東日本の動向が注目される所以である。

コラム一覧トップへ

Uber Eats レストランパートナー募集