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コラム

「ありえないこと」に挑戦した三菱地所

4月27日開業の「新丸ビル」の飲食フロアはあまりにディープ"、そしてあまりに"ブレークスルー"。「スタンダード」と「ニュースターダード」とのアナーキーな融合だ。 "

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「新丸ビル」の飲食テナントをつぶさに観て歩いた。ミッドタウンがちょっとカッコ付け過ぎで「使えるのは3~4店かな」とがっかりしていただけに、 “シンマル”(新丸ビルの略)は「丸ビルのような“お上りと接待ユース”とどう差別化したのか」という関心があった。銀座ベルビア館が「通だけど気障じゃ ない」とすれば、シンマルは「通が泣いて喜ぶ」テナントが揃ったと言える。 グルメ的視点からすれば、ピエール・ガニェールのカフェ&ワインバー「PGカフェ」(1階)、28歳で三ツ星を取ったイタリア・バドヴァの「イル カランドリーノ」、6階のワールドレストランの「四川豆花飯店」「サイアム ヘリテイジ」、そして5階に支店を出した“元祖系名店”の各テナント。沖縄「うりずん」をはじめ、おでん「こなから」、焼き鳥「萬鳥」、うなぎ「駒形」、 酒亭「神田 新八」などが注目されるところだろう。琉球料理の「うりずん」や「こなから」は三菱地所側が頭を下げて口説き落とした“ありえなかった出店”である。 レストランビジネス的観点からすれば、それら“元祖系”とここ数年で人気を集めた“新顔系”が同じフロアで妍を競うというのが面白い。豚ブームを リードするとことんフーズの「とん風」。とことんフーズの豚で究極のもつ焼きを提供し、立ち飲みブームをつくった“い志井グループ”石井宏治「日本再生酒 場」、野菜料理とモチモチ系パスタで見事復活を果たしたイートウォーク渡邉明「PASTA HOUSE AWキッチン」、軽井沢出身の蕎麦仕事人・川上庵の小山正「酢重ダイニング」、“イタリアンのバカナル”を目指すオライアン出身オーナー渡邉隆之氏の「デリツィオーゾ」、さらに地下1階には、知る人ぞ知る実力派のポトマック・金指光司「BARBARAマーケットプレイス」、マルチ職人・コラソンキッチン長岡謙太郎「Bistro Barダパウロ」など錚々たる顔が揃う。6階にオーストラリア料理「Salt」、ワールドワイン「w.w」を出したポート・ジャパン・パートナーズも注目株だ。ベルビア館にもニュージーランド「Arossa」を出したばかりの“業態輸入系ベンチャー”だ。 そして7階の「丸の内HOUSE」。“山本宇一氏プロデュース”は「だから何?」という感じだが、「オペレーションよりノリ」のクラブハウス“大人の社交場”というコンセプトといい、7階から東京駅や周辺のビル街を見渡せる“天空テラス”の環境といい、グッドコック・足立正行、テーブルビート・佐藤としひろ、フォーシーズ・松井件など“スノッブセッター”といい、役者は揃っている。ちゃっかりサービスの職人・ヒュージ新川義弘も一番いい場所に顔を出している。このフロアのコーディネーター、キリンビール・ 島田新一は「これまでの“テナント同士が戦い合う”のではなく、8軒が共存できるフロアをつくりたかった。テラス、廊下は共有スペース。SO TIRED と新川さんの店ではキャッシュオンでドリンクを頼め、それを持ちながら廊下を歩いてもテラスで飲んでもいい。廊下にDJブースを設けたのも初めてでしょ う。8店舗の中で回遊、“バーホッピング”を楽しんでもらいたい」と話してくれた。 それにしても、よくここまで業界的に“濃い”顔ぶれを揃えたものだ。まさに「スタンダード」と「ニュースタンダード」、「過去」と「未来」が交差す るテナントミックスになった。朝4時まで深夜営業する店が多いというのも新しい挑戦だ。トキアとの回遊が生まれ、“丸の内深夜族”の街が誕生する可能性も ある。それは東京駅前というコアな磁場での新しい実験であると同時に“コンサバ”のイメージが強い丸の内からの脱皮現象でもあるかのようだ。そして、それ はまた、テナントの力を武器に戦ってきた三菱地所若手新世代の“組織内革命”でもある。

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