コラム

空前の「飲食店ビル」開発ラッシュ到来!

都内の不動産投資ブームがいよいよミニ土地開発やビル再生へと波及してきた。そのあおりで街場の面白い立地に「飲食店ビル」が続々とオープンへ...。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


9月1日の「マロニエゲート」、9月20日の「ニッタビル」開業と続き、飲食業界関係者の眼差しはいま、銀座エリアに向いているが、新宿、渋谷、恵 比寿、中目黒、神楽坂、代々木上原、麻布十番、赤坂、浜松町など、飲食激戦地のエリアでの「小規模飲食店ビル」の竣工が相次いでおり、個性を売りにする飲 食店にとってはまたとない出店のチャンスが到来しつつある。これらのビルは1フロア20坪から30坪で、大手チェーン店が出るには規模が小さすぎる。ま た、ビル側も客を呼べる個性的な飲食テナントの出店を求めているため、資本力のない個人オーナーシェフでも出店が可能だ。 恵比寿駅西口から徒歩3分。恵比寿南1丁目のJR山手線の線路に近い路地に新築の飲食店ビルが現れた。8月3日、そのビルの1階にオープンしたの は、なんと亀戸で人気の行列店「亀戸ホルモン」の2号店。有限会社幸右エ門が経営だが、社長の松浦弘樹さんはまだ25歳の若さ。“飲食激戦地”恵比寿で実 力の試したかったのだろう。恵比寿でも隠れ家的な立地だが、それがまた話題を呼びそうだ。このビルの地下にはグッチ裕三の店「うまいぞお」がオープン、最 上階の4階には「凹町」系列出身のくずし割烹「かのふ」、3階には近くロブション出身者がフレンチをオープンする。ビルの前のクリーニング屋の2階には中 目黒の「村上製作所」「豚鍋研究所」の姉妹店でコラーゲン鍋を始めた「中村 玄」がある。今回の飲食店ビル登場で、このエリアが“恵比寿新名所”としてさらに面白くなる。 新宿では歌舞伎町が熱い。歌舞伎町「一番街」の「とんかつにいむら」のビルが9月1日、まるごと飲食店に生まれ変わる。その3階~5階に入るのは、 新宿西口の小滝橋通りエリア(西新宿7丁目)に「玄菜」「あなざ玄菜」「玄菜壱上」など和食店を4店舗展開する日新物産が「板前料理 玄菜別邸」をオープンする。デザインはいま注目の新鋭のカームデザイン・金澤拓也さんである。歌舞伎町の区役所通り、「新宿ゴールデン街」入り口の角に建 つ“スナックビル”もいま飲食店ビルに再生中。大胆にもその最上階の9階に出店を決めたのは、大嶋啓介「てっぺん」ナンバー2の総店長、吉田将紀(まさの り)さん。「なかめのてっぺん」内山正宏さんに続く独立だ。11月11日とオープンはまだ先だが、「日本一飲食店の多い新宿で一番の居酒屋を目指す」と夢 を語る。 フレンチシェフの阿部光峰さんが経営する東銀座のスペインバル「エル セルド(EL CERDO)」の2号店として神楽坂の本多横丁にオープンした「エルプルポ(El Pulpo)」が地元で話題になっている。鮮魚を主体にしたバルとして、連日満杯の人気。また、神楽坂通りには本多横丁で生まれた「炉ばたの炉」の新店が 大ブレイク。いま、神楽坂はTVドラマでの登場もあり、賑わいを増している。その神楽坂の中心部といえる毘沙門天の前に、この秋、また新築飲食店ビルが竣 工する。いまから、「どこが入るのだろう」と話題騒然だ。 さらに、代々木上原駅前にも元パチンコ店が3階建ての飲食店ビルに再生。個性的な飲食テナントの出店を待っている。ほかにも、私のところに出店コン サルの依頼が来ているだけで、中目黒、浜松町、麻布十番など意外なほど好立地に飲食店ビルが竣工を控えている。いずれも、物件関係者たちは「チェーン店は ダメ。いい客を呼べる個性的な飲食店に出てもらいたい」と口を揃える。いま、街場の好立地ビルがチェーン店から個店集積への変貌を遂げていることは間違い ない。

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