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コラム

夢と情熱とソロバンと

怒涛の一週間だった。ダイヤモンドダイニング松村厚久社長の「外食アワード」授賞祝賀パーティー、エムグラント井戸実社長の「ふくのかみ」浜松町店オープン、そして...

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


この一週間、休む暇がなかった。2月14日には“サードG”理事最年少で国分寺に「うさぎ亭」など3店舗を持つ小島直人さ ん(「なおと」と呼んでください、と本人)が初めて独立支援型でオープンした「猿吉(えてきち)」のレセプションに。既存店はどこも地元の常連で賑わう。 「なおと」に初めて会ったとき、「もしかしたらコイツが居酒屋業界を将来変えるかもしれない」とピンときた。母親譲りらしい飲食人としての情熱とソロバン を兼ね備えている。方向性は楽グループの“宇野イズム”、それを受け継いだ上昇気流の“笹田マジック”を踏襲。「そこにしかない店のオーラ」をつくってい く。「なおと」はこれから都心に活躍の場を移すという。どこでどんな店をやるのか、いまから楽しみでならない。 18日はダイヤモンドダイニング松村厚久社長(“サードG”代表幹事)の「外食アワード2007」授賞祝賀パーティー。 主催者側で、どのくらいの人がお祝いに来てくれるのか、ヒヤヒヤしながらこの日を迎えたが、あかげさまで大盛況。会場の銀座「砂漠の薔薇」は300名を超 える方で溢れた。当の松村さんとは1号店の「バンパイアカフェ」からの付き合い。ちょうど『アリガット』編集長のときオープン、「面白い店をつくる奴だ な」と思った。私が行くと、どこからか必ず挨拶に駆けつけてくれる。笑顔だが目が笑っていない。決して鋭いわけではないが、空を刺すような視線。その視線 の先が読めなかった。しばらくブランクがあった後、5店舗目の「竹取百物語」をフジサンケイビジネスアイの連載で取材したとき再開。それから53店舗のこ こまで来るのにわずか3年。彼の視線の先にはこのビジネスモデルがあったのか。これから目標の100店舗達成を目指す。駅伝やマラソンにたとえれば“折り 返し地点”。賞を取って浮かれている場合ではない。ここからが大変だ。それは本人が一番よくわかっているはず。“着せ替え業態”にならない本物の業態開発 力が求められてくる。夢とソロバンとの葛藤が始まるに違いない。 19日はエムグラントフードサービス井戸実社長(“サードG幹事長”の新店「ふくのかみ」オー プニングプレスレセプション。五反田でブレイクした博多水炊きの2号店だが、場所がユニーク。浜松町駅から大型オフィスビルの「東芝ビル」へ行く専用通路 を通り、さらに歩いてやっとたどり着ける「シーバンス・アモール」。ここもNTT都市開発所有の大型オフィスビル。東芝ビルと合わせて2万人近いオフィス ワーカーがいるという。飲食店はあくまでオフィスワーカーの胃袋を満たす機能でしかないエリアだ。夜は東芝ビルの一部の店を除いてどこも閑散としている。 「ふくのかみ」も夜の営業が不振で撤退していった和食店の居抜きだ。40坪60席の高級感ただよう造作をわずかの資金で手に入れた。まさに“ハイエナ戦 法”である。井戸さんは30歳、「外食で史上最年少最速最大売上げ達成」を目標とする。居抜きで繁盛店をつくることは容易ではない。しかし彼のソロバンの 基準は繁盛店をつくるというより、損益分岐を徹底して低く設定すること。この店も「昼7割、夜3割でも利益を出すこと」。新しい発想の飲食人が出てきたも のだ。 20日は創業33年、田町ドミナントで「酒蔵 駒八」を中心に 20近くの店舗を運営する八百坂仁さんと「居酒屋経営塾」の打ち合わせを兼ねたインタビュー。常連客から“オヤジ”と慕われてきた八百坂さん、いまでも毎 日必ず本店に立ち、笑顔で客を迎える。常連の中には30年前の開店日から平日は毎日通い、定年後のいまも週1回は通うという高島平在住の元サラリーマンも いるという、“恐るべき居酒屋”だ。創業時から板長がつくる新鮮素材の手作り料理を提供。この店から生まれた居酒屋定番メニューも多いという。八百坂さん の居酒屋哲学は“徹底した現場主義”、そして“人肌のようなサービス”。20店舗近くまで拡大しても、「企業ではなく家業に徹する」と言い切る八百坂さ ん、今年還暦を迎えるのを期に「業界に恩返ししたい」と3月から「居酒屋経営塾」を立ち上げる。6ヶ月単位でワンクール、毎月1回の講義には、ゼットン稲 本健一社長、ホッピービバレッジ石渡美奈副社長、デザイナーの神谷利徳氏、ワタミファーム武内智社長など“八百坂ファン”のゲストが顔を出す。なぜか私が コーディネーター役をつとめることになったが、そう言えば、いつのまにか私も月に2~3回は駒八に通っている常連の一人である。

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