コラム

「DD劇場」の第二幕が開く!

明日29日、ダイヤモンドダイニング(DD)の経営目標だった100業態100店舗展開"達成の100店舗目の店が同時に5店舗オープンする。昨日はそれを記念した盛大なレセプションが開かれ、松村社長ほか役員、幹部社員一同が同社らしいユニークなパフォーマンスで客を迎えた。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


レセプションの見せ物の圧巻は、松村社長はじめ役員4名が5レンジャーならぬ“100レンジャー”に扮し、「均一業態」「焼酎無料」「TTP(徹底的にパクる)」役の怪獣やデビルをやっつけるシーン。外食業界の人間でなければ理解しづらい寸劇だが、客単価4,000円~6,000円のミドルアッパー居酒屋が多く、マルチコンセプトを掲げてオリジナル業態を創り続けてきた同社にとっては、この“業界の三大悪”に対するアンチテーゼを示し、今後、外食業界のリーディングカンパニーを目指すというメッセージであった。赤レンジャーのコスチュームを身にまとった松村社長は、「100業態100店舗を達成した感動はあまりありません。通過点だと思って、これからもどんどん挑戦していきます」と語った。DDの企業理念は、「コンセプト・空間・ストーリー(物語)の3つを、内装・サービス・料理など至るところに織り交ぜ、『非日常性』を具現化し、満足を超えた『お客様歓喜』を目指すこと」。「おもちゃ箱」のように、常にワクワク・ドキドキするような斬新でサプライズな店創りに挑戦してきた。昨日のレセプションも、まさにその理念の象徴だったといえよう。私が2001年、DD第1号店の「ヴァンパイヤカフェ」からずっと同社の軌跡を追いかけてきた。注目し始めたのは、5店舗目の「竹取百物語」。それまでは居抜きやテーマレストランだったのが、銀座の一等地でスケルトンから同社の掲げるコンセプトレストランの原型的な店をオープンさせたときだった。たまたま新聞で注目外食企業を取り上げる連載記事を書いていたので、初めて松村社長をインタビューした。2004年7月のことである。訪ねた当時の会社は、銀座の小さな事務所で、社長以下女子社員が数名しかいなかった。その会社がまさかここまでの規模になるにとは正直、思いもしなかった。しかし、松村さんという人は謙虚で、情報に貪欲で、面白いことをどんどん仕掛けていきたいという野心にあふれていた。それから3年後の2007年には株式をヘラクレス(現ジャスダック)に上場するというスピードで伸びてきた。そして2010年10月、単独で念願の100業態100店舗を達成したというわけだ。この間、2社を買収によってグループ化し、居抜き出店専門の会社を新たに1社設立した。こうした快進撃を続けると同時に、松村社長は外食業界の若手経営者のリーダー格となる。私が主宰する次世代型経営者の集まりである「サードG」の代表幹事もつとめ、後進の育成や先輩経営者との人脈作りにも励む。既存のチェーン居酒屋やナショナルブランドのレストラン・カフェなどの外食企業とは異なる個性あるネオ成長企業として、DDは評価されてきた。今回の100店舗100業態達成は、その松村さんの一つの目標の通過点であり、DDを劇場にたとえるなら、第一幕の終了である。松村氏のファンは、私もそうだが、その第一幕をDDと一緒に楽しんできた。しかし、企業経営には成長のひずみが必ず伴う。独自の「1店舗1コンセプト」というマルチコンセプト(個店主義)戦略は、非効率と常に隣り合わせにある。立地を拡大すれば、坪効率が下がるし、不採算店も出てくる。チェーンブランドでないから、ローカルに行くほど知名度が弱くなる。また、業態の幅を広げれば、食材の原価率管理やオペレーションの統一化も難しくなる。そうした矛盾を店舗への権限委譲による現場力や社員のモチベーションアップによって、なんとか乗り切ってきたのがここまでの第一幕の歴史である。ひずみはやはり業績悪化というかたちで表面化してきた。今期の第2クオーターは既存店の売り上げが10%以上の落ち込み。経常利益も半減してきている。もちろん長期デフレ不況に加え、猛暑による客足の現象はDDに限ったことではないが、これまでの増収増益基調に異変が出てきた感は否めない。いわゆる“成長の踊り場”だろう。ここで、DDがやらなければならないのは、思い切ったスクラップ&ビルドである。これまで同社は不採算店を猛烈な速さでリニューアルし、退店は避けてきた。なぜなら、100店舗達成の目標があったからだ。しかし、いま身を切ってでも足元を固め、第二幕に向かっていくべきだろう。次のDD劇場のテーマは「エンターテインメントとファミレスの融合」である。回転寿司型のお皿が回るレストラン。接客はアリス嬢のようなスタッフが担当するのだろうか?「HOOTERS」上陸で、外食業界にエンタメ志向の風が吹き始めてきた。エンタメ系はDDの原点でもあり、話題を提供し続けるプロモーション効果も大きい。果たして、第二幕がどんな展開を見せるのか、DDファンの一人として、今後も最前列席で見守りたい。 

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