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コラム

外食業界にも「エクスペリエンス」の発想を!

外食業界不振に関するニュースが相変わらず多い。均一価格"に代表される低価格路線が限界に来ているのだろう。もう安いだけの店には、魅力を感じない。高付加価値路線に舵を切り替えるときが来た。その切り札として、「エクスペリエンス」というキーワードをあげたい。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「エクスペリエンス(experience)」とは、単なる「経験」という意味ではなく、IT業界では10年前からビジネスモデルの進化のキーワードとして使われていた言葉。『T情報マネジメント用語事典』によると、「製品やサービスの使用・消費・所有などを通じて、人間が認知する(有意義な)体験のこと。製品やサービスを利用する過程(の品質)を重視し、ユーザーが真にやりたいこと(本人が意識していない場合もある)を“楽しく”“面白く”“心地よく”行える点を、機能や結果、あるいは使いやすさとは別の“提供価値”として考えるコンセプト」。一言で言えば、「ユーザーにこれまでなかった体験を提供する」という意味らしい。ネットイヤーグループの鈴木貴博氏の論文を読んでみたら、とてもわかりやすい「エクスペリエンス」の解説があった。商品やサービスの供給側(企業)が「エクスペリエンス」を顧客に提供するポイントとして、以下の3点を挙げている。「1、自分たちが提供してきたサービスで、顧客に妥協を強いていた部分を特定する。2、顧客の妥協を打ち破るブレークスルーを発見し、新しいサービスの骨格とする。3、新しいサービスが、流れるような極上の体験となるように隅々まできめ細かい配慮を張り巡らせる」。携帯電話に取って代わる勢いのスマートフォンなどは、その最たる例であろう。この「エクスペリエンス」の発想は、外食ビジネスでも応用可能ではないか。タッチパネルオーダーシステムのように、インターネットをちょっと活用して新しいサービスを始めるということではない。「本格的な業務プロセスを再設計して、新たなシステム投資を行って新しいエクスペリエンスを提供する」(鈴木氏の論文より引用)ことである。例えば、APカンパニーのケース。「じとっこ」や「塚田農場」は、「これまで仕入れの高かった宮崎産地頭鶏(じとっこ)を東京で安全にもっと安く提供できないか」という課題を解決するために、3年かけて日南市に自社養鶏場をつくった。10月28日、「コレド室町」にオープンした「日本橋紀ノ重」は、「朝どれの鮮魚を東京でその日の夜に提供できないか。物流コストを抑えて、できるだけ安く提供したい」と考え、築地職人の目利き力、卸業の力を生かした自社配送システム「DAY+0便」を実現した。“顧客の妥協を打ち破るブレークスルー”である。こうした発想で、「低価格高付加価値を追求」(米山久氏)し続けるAPカンパニーは、まさに外食業界のエクスペリエンス企業である。 

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