流山市、3月議会提出を目処に次年度の受動喫煙防止対策に関する素案作成中
(流山市役所 健康福祉部次長兼健康増進課長:井上 透氏)
−−−この度、受動喫煙の新条例検討に至った経緯を教えてください
条例素案が持ち上がった背景としては、お隣、千葉県柏市市長の「“世界禁煙デー”より市が所有する全公共施設の敷地内を全面禁煙にする」と発表した市長宣言をきっかけに流山市も厚生労働省の局長通知を受けて取組むこととなりました。
ただ、受動喫煙防止条例といっても既に施行されている神奈川の内容とは異なります。実は、流山市では08年に受動喫煙防止対策の検討を行っており、その当時の対策案はかなり厳しい内容でした。しかし、色々と異論が上がり議論を続けた結果、罰則を設けて大きな負荷をかす内容はやはり難しい、と。まずは市民を尊重し、マナーアップ及び受動喫煙を防ぎましょうという啓発が基本方針に。ほかの自治体より早い段階で踏み切ったのは、長く議論をするより少しずつでも前向きに取り組んでいける条例を作ることが大切だと考えたからです。
−−−08年当時の内容から大きく変わった点は?
強制力の緩和をするなど、全体的に"強制"から"努力義務"がベースに。ほか、局長通知と合わせて規制を屋外へ拡大するなどの変更も。屋外に拡大した理由に関しては受動喫煙の健康被害に関するエビデンスに内外の隔てなく"受動喫煙が健康に及ぼす害"という観点で一緒と考えたためです。
−−−“自主努力”とはいえ店内分煙を推奨されていますが、これには相当の設備投資が必要となります。現在の流山市市内飲食店なら、対応可能だと?
資金力が乏しい中小個店の多くでは厳しい店が多いと思います。この現実を踏まえて"努力義務"にしました。今回の条例の基本的な考え方としては、受動喫煙防止に関する大きな方向性だけ定め、具体的な実行方法については、いきなり飲食店などサービス業に負荷を掛けるわけでなくできることからやっていただきたいと考えております。また、利子補給などの制度も別途検討しています。
−−−ちなみに、流山市のたばこ税収額は? 規制を設けるのであれば、その一部を助成金として使うべきでは?
税収額は6億5千万です。仰る通りですが、これは一般財源として決められているので特定財源として使うことは考えておりません。ただし、今回、分煙装置導入などコストが掛かる部分に関しては、神奈川同様、利子分を負担します。
−−−また、素案の中に「利用者が共同で利用する区域は、そのすべてを喫煙禁止区域とする」とありますが、では、どのような場所を喫煙可能な場所と?
真意が伝わり難いようなので表現を再検討します。つまり、屋外でも、入口など人通りが多い歩行の動線上に喫煙者が増えるのであれば受動喫煙を防ぐことはできません。子供や年寄りを含め利用者が頻繁に行き交う場所は、屋内であろうと屋外であろうと禁煙にすべきという考え方です。よって、通行人の動線上以外の場所に喫煙所を設けていただくことを想定しています。
また、せっかく分煙にしたところで利用者に明確に伝わらないようでは問題。そこで、分煙にご協力いただいた飲食店等施設様には、さらに"周知"も徹底していただきたいと考えます。喫煙場所は"→"など表示で広く知らしめ、未成年者は近づかないように指導していく予定です。
−−−ちなみに、“努力義務”の中の“分煙基準”の判断に「0.2m毎秒以上の気流を……」とありますが、誰がどのように測定して可否を決めるのですか?
現状、特に、専門の測定スタッフを設けることは考えていません。数値は参考であり、流山市の今回の条例として、特に測定はしない方向で考えています。
また、今回の条例素案では罰則も行政指導も予定していません。分煙の必要性や啓発の働きかけはこれまで通り各団体の会合などに足を運び、続けていくつもりですし、また建物内の分煙状況を示す店頭表示も、今後、行政として作成し配っていきたいと考えています。
−−−最後に、先月、流山市のオフィシャルホームページにて素案に関するパブリックコメントを募集されていましたが、意見はどのようにご活用されるのですか? また、今後のスケジュールを教えてください
11月22日に締め切りましたが市民及び飲食団体等広くご意見をいただきました。パブリックコメントに関しては回答を添えた形で、すべてネット上で公表する予定です。また、投稿いただいたご意見には重きをおいて参考にさせていただき、最終的な内容へ絞り込んでいきたいと考えております。今後のスケジュールとしては、3月議会提出、7月より施行したいと考えておりましたが、1月からタウンミーティングをはじめ、市民の意見を直接お聞きした上で、提出時期を決めたいと考えています。
以上、千葉県流山市の現在の動向である。
神奈川、兵庫と、厳しい条例案が続く一方で、“市民の自主性”を尊重し、まずは出来ることから取り組んでいこうという流山市。対極の施策を取りながら、強行な規制による民間の負担増を非難する声が上がる一方、“自主努力”で、果たしてどの程度進展するのかと流山市の決断に対する厳しい指摘も。しかし、その街で事業を営むものとしては、突然大きな規制が下るより、出来ることなら少しずつ・・・自分たちの声に誠意をもって耳を傾けてもらいたいというのが本音であろう。後に続く自治体の参考モデルとして、流山市が、果たして、今後、どのような展開をみせるか、温かく見守っていきたい。