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【スペシャル対談】 フードスタジアム主幹・佐藤こうぞう&フードリンク編集局長・遠山敏之氏が語る、外食ジャーナリズムの在り方と業界のこれから 前編

飲食業界の2大ウェブメディアとして知られる「フードスタジアム」と「フードリンクニュース」。いずれも飲食・外食のリアルを伝える媒体として、長年にわたり様々な情報を発信することで業界を支えてきた。2019年1月、「フードリンクニュース」の編集局長に遠山敏之氏が就任した。遠山氏は外食業界専門誌「日経レストラン」(現在は休刊)の編集長を務め、計20年以上にわたって外食ジャーナリスト・ウォッチャーとして情報発信を行ってきた人物だ。この度、遠山氏が10年ぶりに外食記者に復帰したとあって話題になった。そこで、フードスタジアム主幹の佐藤こうぞうと遠山氏で対談を敢行。外食業界のこれまでと今、そしてこれからについてや、外食ジャーナリズムの在り方について語った。


フードスタジアム 主幹:佐藤こうぞう
1956年香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。雑誌「プレジデント」などの編集者を経て、2000年6月に飲食スタイルマガジン「アリガット」を創刊し編集長に就任。2004年1月に「フードスタジアム」を立ち上げ、編集長として長年にわたり飲食業界のトレンドを発信してきた。2019年3月よりフードスタジアム主幹。

フードリンクグループ執行役員編集局長:遠山敏之氏
1964年新潟県生まれ。早稲田大学法学部卒業。日経BP(当時は日経マグロウヒル)に入社、1988年、「日経レストラン」の創刊に参加し、記者、副編集長として活躍。2005年から2008年までは編集長を務めた。その後も外食ジャーナリスト・ウォッチャーとして業界に携わる。2019年1月よりフードリンクグループ執行役員編集局長。

※フードリンクニュース

 

外食メディアの古今東西

遠山:こうぞうさんとは長い付き合いになりますが、こうして改まって対談するのは初めてですね。不思議な感じ。

佐藤:しばらく外食メディアから離れていた遠山さんが復帰すると聞いて、その真意を聞こうと企画しました。遠山さんは2018年末まで日経BPに所属。飲食業界誌「日経レストラン」の編集長として活躍しました。この度、2019年1月から「フードリンクニュース」の編集局長に就任しましたね。

遠山:「日経レストラン」は1988年に創刊し、28年続いた雑誌です。私自身は13年半ほど編集部にいました。日経BPの31年間の社歴のうち、半分くらいが「日経レストラン」です。最後の3年9カ月は編集長を務めました。

佐藤:同じ雑誌の編集部にそれだけ長い間いたなんて珍しい!

遠山:ええ。そのため日経BPの中では「日経レストランの人」というのが私のイメージでした。

佐藤:業界の中では遠山さんは有名人。私にとっても憧れの存在でした。私が「フードスタジアム」を立ち上げたのは2005年のこと。ネットメディアの黎明期でした。

その前には、2000年に飲食スタイルマガジン「アリガット」を創刊し、2年ほどで離れることになった。それから飲食のサポート関係の仕事をしていましたが、2003年ごろ、これからの時代は「ネットメディアが来る!」と、メディアを立ち上げようと模索。調べるうちに飲食業界のネットメディア「フードリンクニュース」にたどり着いたんです。当時はまだネットメディアも珍しかったころですが、すでにそのころから存在していたのはすごいこと。「フードリンクニュース」、もともとはタブロイド誌だったんですよね。創業者である安田正明社長にタブロイド誌時代に会いに行ったこともありますよ。

遠山:そうだったんですね! 当社の安田はもともとサントリーで洋酒のマーケティングしていた人物です。そこから独立し、「フードリンクニュース」を立ち上げた。

佐藤:飲食の業界4大誌と言えば、柴田書店の「月刊食堂」、旭屋出版の「近代食堂」、商業界の「飲食店経営」、そして現在はありませんが「日経レストラン」でしたね。遠山さんが編集長時代の「日経レストラン」は、どういう編集方針でしたか?

遠山:母体が日経なので、基本は“仕事に役立つ情報”ということ。こうぞうさんみたいな厳しくも鋭い切り口ではなく(笑)、「使えるノウハウ」がメイン。ビジネス実用の色が強いです。最盛期で2万2000部を刷りました。定期購読会員がいたのが大きかったです。

佐藤:その部数はすごいですね。編集長自らも取材に行っていたんですか?

遠山:もちろん行きましたよ。あとは講演活動も多かったですね。

メディアの使命とは、新しい切り口の提案やスター経営者の発掘

佐藤:講演といえば、先日、福岡で行われたあるセミナーで、講演者だった「焼とりの八兵衛」の八島且典さんが「日経レストラン」の記事を紹介していました。「焼とりの八兵衛」の福岡・天神の店を取り上げた記事です。その記事を構成したのは遠山さんで、非常に感謝しているとも話していて、驚きました。

遠山:ええ、その記事ですね、わかります。「日経レストラン」は、ノウハウ中心とは言いましたが、業界に対して新しい切り口を提案することも常に意識していました。2000年代までの飲食店は「大箱で効率よく稼ぐ」が定石だった。ところが八島さんはその時代に小箱で1000万円を売っていて、それを編集部の者が見つけてきた。「コレは!」と思い、「小さな店で繁盛する時代」という、当時、新しかったテーゼを打ち出した記事です。実はそうした提案をしようと意識していたのは、背景にはこうぞうさんの「アリガット」が頭の中にあったんですよ。

佐藤:おお、それは嬉しい。「アリガット」では、いわゆる大手とは違う、個人店にフューチャーする雑誌でした。創刊2号目はカフェ特集をやったのですが、その当時2000年頃、日本にスタバが台頭してきた時期だった。ですが大手チェーンであるスタバではなく、あえて東京・青山にあるようなアーティスティックな、まったり系のカフェを取り上げたら、これが当たった。書店売りの雑誌では珍しく増刷もしました。2000年~2001年、ちょうどその頃が個店への回帰の時代だったんですね。「アリガット」では、今ではスター経営者と言われる人達の無名時代をいち早く取り上げていました。例えばゼットンの稲本健一さんや、商業藝術の貞廣一鑑さんなど。彼らはかっこいい店づくりに、オーナー自身もオシャレで発言内容もすべてがかっこいい。自分も飲食店をやりたい!自分もこうなりたい!という夢を抱かせた雑誌を作ったという自負はあります。「フードスタジアム」はその延長戦。今はまだ目立たなくても、伸びる可能性のある店・オーナーを発掘して世に出すことをミッションとし、飲食マーケットの活性化を理念にやってきています。これは「アリガット」時代のスタンスと変わりません。

外食記者・遠山氏復活!その真意とは?

佐藤:遠山さん、年齢が50代に突入し、普通は今勤めている会社で定年までやりますよね? その年で思い切って転身することにしたのは何故ですか?

遠山:ひとえに、外食にかかわりたいからですね。飲食を見ているのが好き。色々な苦労を知っているのでプレイヤーにはなれませんが、メディアという立場から飲食に関わっていきたい。

日経BPでは、「日経レストラン」の後は社内の編集プロダクションのような部署に5年いました。その後は新規のシンクタンク事業の部署に2年間、最後は人事部で採用担当をやっていました。編集関係の部署にいたうちはまだ飲食に関われたけど、人事は全然違う仕事……。今54歳なので、定年まで6年、再雇用を含めると10年は働くことになる。このまま編集には戻れないだろう……と思っていました。そんな折、たまたま「フードリンクニュース」と縁がありました。

「フードリンクニュース」は1994年にタブロイド紙で創刊した歴史あるメディア。ウェブメディアとしても2001年から15年以上続いている。やはり私は取材や執筆の楽しさが忘れられなかった。長年、飲食業界から支持されてきた「フードリンクニュース」ならそれができると、ここで再出発しようと決めたんです。

業界への冷静な提言こそ外食ジャーナリズムの在り方

佐藤:なるほど。では、これから遠山さんが「フードリンクニュース」をどう進化させるのか、編集方針を含め聞かせてください。

遠山:まず、「フードリンクニュース」は有料会員の仕組みを持っています。無料で読める記事もありますが、突っ込んだ内容の記事は、月額1000円の有料会員になると読めます。私のミッションは、この有料会員を増やすこと。そのための施策を考えています。

この有料会員、「日経レストラン」の定期購読者の仕組みと似ているんですよね。ただ、定期購読者は販促費をかけると増えたが、有料会員はまた事情が違う。販促費ではなく、コンテンツ自体の質を上げたり、量を増やしたりすることが必要なんです。

そのために、今までは経営者インタビューや店舗情報がほとんどでしたが、もっとコンテンツの幅を広げていきたい。そして、どういった記事が読者に刺さるのかを見ていきたいと思います。

佐藤:囲い込みコンテンツとしてメディアを再構築していくんですね。

遠山:「日経レストラン」と「フードリンクニュース」の違いは、外食のプレイヤーだけでなくビールメーカーはじめ関連業者も読者として想定している点。「日経レストラン」のときは、個人店にフューチャーすることが多かったのでノウハウ中心でしたが、それ以外についても視野を広げないと。

そもそも、ウェブメディアではノウハウ系はあんまりウケないんですよね。それよりも、世の中の動きに対して、新しい視点を提案する。そういう書き手を選んで作っていくことが大事ではないかと考えています。

佐藤:時流を読む、大事ですね。おっしゃる通り、小手先のノウハウではなく、われわれウェブメディアには、そういう切り口が求められていると思います。

遠山:今の時代、昔と比べて「こうすれば成功する」という方程式がなくなってきたように思います。お客の目が肥えて、成功のやり方が多様化している。やっぱり「本音メディア」になりたい。例えば、今関心があるのが、ある大手企業の居酒屋業態。そこでは生ビールを1杯99円で提供していて、当然、原価割れ。ビールメーカーは泣いている。「それ本当にいいの?」と問いかけたいと思っていて。このような、「それは違うんじゃない?」ということは、業界を良くしていくためには恐れずに問題提起していきたいですね。

佐藤:外食ジャーナリズムの在り方はそうあるべきですね。

経営者の求める答えはいつも“現場”にある

遠山:こうぞうさんが毎晩、街に出かけていろいろな店に行って経営者に話を聞くという、非常に泥臭い取材の仕方を見て、すごいなと思っていましたよ。

佐藤:常に店を見て、ライブな経営者の声を聴いて接することが大事。会社が大きくなって組織になって現場から幹部が離れて意思決定が現場と乖離するのは良くない。

遠山:日本マクドナルドの創業者、藤田 田さんもとにかく店舗に足を運び現場を見ることを徹底していたそうですね。一方でセブンイレブンの鈴木敏文さんは、オフィスでデータを見て動く人だそう。これは小売りと飲食の違いですね。飲食は現場の雰囲気やスタッフの表情がお客に与える影響は大きい。飲食では、とにかく店に行くことは大切ですね。

佐藤:先日、トリドール社長の粟田貴也さんと話す機会がありました。トリドールが買収した「晩杯屋」ですが、事業として調子は良いそうですが、粟田さんは「この先どうすればよいのか不安だ」と悩んでいました。「大衆酒場とは?立ち飲みとは?」という本質を考え始めていたようでした。

そこで私は武蔵小山の「長平」という居酒屋に、粟田さんとトリドールの幹部の方々を連れて行きました。「晩杯屋」はもともと武蔵小山で創業した店なんです。今、その創業店はなくなってしまいましたが、その創業店で店長をしていた人物が経営しているのが、「長平」。「長平」は創業当時の「晩杯屋」イズムを受け継ぎ、店には「晩杯屋」の常連客だった人たちが夜な夜な集まっているのです。

その日は「晩杯屋」をよく知る常連客も呼び、粟田さんたちと引き合わせました。「晩杯屋」は立ち飲み屋でありながらもなぜ行列ができるほどになったのか? レジェンドたるゆえんを知ってほしかった。粟田さんは常連達に「今の『晩杯屋』の悪口をどんどん言ってください」と言って、出てきた意見を幹部の方が熱心にメモしていました。粟田さんのこの姿勢はすばらしいと思いましたね。

遠山:へえ~、それはすごい! 私も行きたかったなあ(笑)。

後編に続く~

(取材=大関 愛美)

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