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【スペシャル対談】 フードスタジアム主幹・佐藤こうぞう&フードリンク編集局長・遠山敏之氏が語る、外食ジャーナリズムの在り方と業界のこれから 後編

飲食業界の2大ウェブメディアとして知られる「フードスタジアム」と「フードリンクニュース」。いずれも飲食・外食のリアルを伝える媒体として、長年にわたり様々な情報を発信することで業界を支えてきた。2019年1月、フードリンクニュースの編集局長に遠山敏之氏が就任した。遠山氏は外食業界専門誌「日経レストラン」(現在は休刊)の編集長を務め、計20年以上にわたって外食ジャーナリスト・ウォッチャーとして情報発信を行ってきた人物だ。この度、遠山氏が10年ぶりに外食記者に復帰したとあって話題になった。そこで、フードスタジアム主幹の佐藤こうぞうと遠山氏で対談を敢行。外食業界のこれまでと今、そしてこれからについてや外食ジャーナリズムの在り方について語った。


■前編はこちら

写真右からフードスタジアム主幹・佐藤こうぞう、フードリンクニュース編集局長・遠山敏之氏

「現場イノベーション」を目指す、ロイヤルHDの取り組み

佐藤:次は飲食業界の課題について話したいと思います。遠山さんは将来の外食業界をどう予想していますか?

遠山:まずは人手不足の深刻化じゃないですか。それと、ロイヤルホールディングスグループ会長の菊地唯夫さんも同じことを言っていましたけど、今の飲食では「現場のイノベーションがない」ことが問題だと思います。現場スタッフの多くが、毎日、価値の上がらない“作業”に追われ、仕事のステージが上がらない。これは外食に限らず日本の産業全体に言えることではあるのですが……。

佐藤:ええ。それを外食から変えていこうというのが菊地さんの考えですね。

遠山:菊地さんは、24時間営業の廃止や完全キャッシュレスの新業態「GATHERING TABLE PANTRY」のオープンなど、さまざまな取り組みをしていますが、厨房改革も頑張っているんですよ。食品加工のセントラルキッチンの技術を上げ、現場では手間をかけずに手作りに近いものを出しています。私はよく「ロイヤルホスト」に行きますが、料理が驚くほどおいしい。

菊地さんは、作業にかかる時間を分単位で細分化して考えているのが面白いと思いました。「GATHERING TABLE PANTRY」では、テクノロジーを活用することによって、従来の店舗では310分あった接客以外の店長業務を90分にまで短縮できると試算したそうですが、あらゆる作業について、分単位で分解して分析していた。これは飲食しかやってない人にはなかなかない発想。菊地さんはもともと金融業界から飲食業界に転身した人ですからね。

佐藤:いつだって変革を起こすのは“よそ者”。私も菊地さんには大きな期待を寄せています。私は菊地さんが講師を務める飲食経営塾「菊地塾」を主催しているのですが、そこでも業務時間の短縮というテーマを扱う回がありました。

「菊地塾」の参加者は30名ほど。いずれも大手というよりは多くて20店舗ほどの飲食店を経営する気鋭のオーナーばかりです。セントラルキッチンなど規模の大きい話もあったので、「自社には遠い話だ」と感じた人もいましたが、いずれはそういった大きな視点を持ってほしいとは思います。

遠山:リンガーハット社長の米濱和英さんの厨房改革もすごいですよ。「リンガーハット」といえば長崎ちゃんぽんですが、ちゃんぽんを作る際は、4つのコンロが一列に並んだIHヒーターで調理するんですが、その4つのコンロが、自動的に調理段階によって少しずつズレていくように設計されている。ほとんど人の手を加えずに安定した品質が保てる。こうした機械化の仕組みも自社で行っているそうです。バックヤードの改革が、これからの10年の肝になると私も思います。

佐藤:IoTやAIの活用も重要になってきますね。人が必要でないところはロボット、AIに任せて、接客をはじめとする人間だからこそできる仕事に注力すべき。菊地さんはその人にしかできない仕事を「感情労働」と言っています。外食を伸ばすには、「感情労働」を伸ばして付加価値とすることが必須。そしてその対価を取っていくことが求められる。ところも日本は「サービスはタダ」という風潮があるのが難しいところ。

遠山:そうですね。海外ならチップ文化だったり、サービスに対価を支払うということが当たり前なのに。

「鳥貴族」の値上げは失敗だったのか?

佐藤:日本では価格の中にサービスの対価が含まれているという認識が根強い。だから値上げもできない。2017年10月に「鳥貴族」が値上げをしたことは大きな話題になりましたが、社長の大倉忠司さんはこう言っていました。「値上げは間違っていなかった。しかし値上げの理由付けを間違ったかもしれない」と。原材料や人件費の高騰……といった理由では、お客は納得しない。例えば食材の質を上げたから、サービスを向上させたから値上げした、などと言えばよかったと後悔しているということです。結局、そこなんだよね。価値を伝えていくしかない。

遠山:菊地さんにインタビューしたとき、キャッシュレスに注力しているのは、決して人件費削りたいのではなく、接客に力を入れたかったからだと話していました。ただ、それをお客に評価してもらい、値上げにつなげるのが難しい、とも。そんな中でも菊地さんは材料の質を上げて、じわじわ値段を上げていっています。

佐藤:菊地さんがやろうとしていることは外食産業にとって財産になる。これからも注目していきたいですね。

居酒屋戦争の消耗戦から脱却せよ!

遠山:あとは、これからはM&Aの時代なんじゃないですか。今までの大手が大手を買うM&Aではなく、大手が中堅・中小を買うという構図になっていくような気がする。

佐藤:M&Aといえば思い浮かぶのがダイヤモンドダイニング。M&Aを通じて成長を遂げた飲食企業の代名詞ですね。今やスター経営者となった、同社社長の松村厚久さんと私は、彼の無名時代から親交があったんです。2008年、私は飲食店経営者の勉強会「サードG」を立ち上げた。「サードG」とは、サードジェネレーション、すなわち飲食の第三世代の意。松村さんには、その代表幹事になってもらいました。「サードG」は、大手チェーンとは違う、当時の新外食プレイヤーを追いかけた。飲食の第一世代がグローバルダイニングの長谷川耕造さん、際コーポレーションの中島武さん達だとしたら、第二世代がゼットンの稲本健一さんなど。その次の世代として、当時台頭してきたばかりだった“第三世代”をフューチャーしました。「サードG」は、松村さんを筆頭に今となっては大物となった経営者達が参加し、上場企業も多く輩出しました。私としては喜ばしいことですが、上場すると企業の方向性が変わることもある。ダイヤモンドダイニングの場合は、目標であった「100業態100店舗」を達成してからはブレてるように感じました。どうなるのだろうかと見ていたらM&Aで拡大。とくにゼットン買ったのは大きかったですね。

同じく「サードG」だったエー・ピーカンパニーの米山久さんは、流通革命のイノベーションを起こした「塚田農場」で一世を風靡したが、次第に街場の居酒屋チェーンの店舗拡大競争に飲み込まれていった。

その後は「鳥貴族」が登場。ワタミをベンチマークして、ワタミのあるところにローコストで出店するというビジネスモデルを確立した。ところが、ここにきてワタミが「鳥貴族」に対抗する新業態を作って逆襲に遭っている。結局、エー・ピーカンパニーも鳥貴族も、居酒屋戦争の消耗戦に巻き込まれている……。

遠山:それは言えていますが、私は「塚田農場」と「鳥貴族」は少し様子が違うと考えています。「塚田農場」は客単価が高い。あの業態が登場したばかりの時期はよかったけど、物珍しさがなくなった今は、客単価的に厳しくなっているということではないでしょうか。

「串カツ田中」のチャレンジし続ける姿勢

佐藤:では、その他に今、勢いのある居酒屋として「串カツ田中」があると思いますが、遠山さんはどのように見ていますか?

遠山:串カツ田中ホールディングス社長の貫 啓二さんのすごいところは、常に新しいチャレンジをし続けていること。今は昔と比べて業態の寿命がどんどん短くなっている。だから次から次へと施策を打ち、どれだけ寿命を延ばすかにかかっていると思う。全席禁煙がその好例ですね。「串カツ田中」の禁煙は成功したと言えるでしょう。今、メディアが「飲食店の禁煙」というテーマで特集を組む場合、真っ先に出てくるのが「串カツ田中」ですもんね。これはすごい宣伝になっていますよ(笑)。

佐藤:消耗戦に終止符を打って、新しいことに挑戦することが大事ですね! これからの時代、新しいことは受け入れられやすくなっていくんじゃないかと思います。

遠山:とくに単価2000~3000円の居酒屋は、「串カツ田中」くらい目新しいことをやり続けないと厳しいと思う。

ところで、店にお客が来なくなる最大の原因って知っていますか? 昔、データを取って調査したんです。

佐藤:何ですか?気になる。

遠山:お客に「忘れられること」です。コスパやサービスではないんです。

佐藤:なるほど。忘れられないためにはリピーター作りは必須ですね。

さらに、これからは価格設定も大きなテーマになってくる。大手が安売りに走るのを止めないと、業界が壊れる。日本の外食は安過ぎですね。やはり値上げするしかないのですが、お客がしっかり納得する理由、こういう価値を付けたから値上げます、ということをしっかり説明しないとね。安価なコンビニとシェア競争しても仕方ない。外食の新しい価値を提案していく時代。私達はそういう企業を応援していきたい。

遠山:確かに、「鳥貴族」の値上げは消費者にわかりやす過ぎたのがよくなかったですね。マクドナルドなんかは単価の上げ方がうまいです。高級商品を出してキャンペーン売って、さりげなく値上げしている。

外食ジャーナリストとしての今後は?

佐藤:遠山さんのキャリアのゴールは? 転職したとはいえ、定年は関係なく生涯現役でやるつもりでしょう?

遠山:そうですね。「フードリンクニュース」で記者に復帰したことを機に、まさにその思いを強くしました。外食をライフワークに生きていきますよ。こうぞうさんは?

佐藤:私は62歳ですが、今、外食のプレイヤーで一番頑張っているのは30代の人達。62歳のオジサンがズカズカ出ていって、「一緒に飲もう」と言っても相手にしてくれなくなってきましてね……(笑)。ということで、2月いっぱいで私は「フードスタジアム」の編集長の座を退いて、3月1日付けで大関愛美が「フードスタジアム」の次期編集長に就任しました。私は「フードスタジアム」主幹として、監修者として間違いに行かないようチェックする役割に。引き続き大山 正を社長として、大山と大関、30代の二人がこれからの「フードスタジアム」を作っていきます。

「サードG」の飲食第三世代を経て、第四世代として近年に活躍しているのは、「大衆ビストロ ジル」の吉田裕司さんや、「アガリコ」の大林芳彰さん、「大衆酒場ビートル」の千 倫義さんなど。そしてこれから出てくるのは、30歳前半の“第五世代”のオーナー達。今までにはない自由な発想で店づくりをしている彼ら。第四世代の人たちは「我が道を行く」タイプで、あまり仲間同士でつるむ印象がないのですが、第五世代は「俺達が飲食業界を変えていく」という信念のもと、団結力がある。3月には、第五世代のエースとも言える和音人の狩野高光さんが中心となって「次世代外食オーナーズクラブ 外食5G」を立ち上げました。かつて「サードG」が担った役割を、今度は「外食5G」で果たしていく。新時代のオーナー達の活躍に注目です。

「フードスタジアム」では、変わらずこれから伸びそうな力を持ったプレイヤーを発掘して、世に出していきたい。「フードリンクニュース」と「フードスタジアム」、業界ネットメディアとしてともに頑張っていきましょう。

遠山:そうですね! これからの「フードリンクニュース」にも期待してください。今日はありがとうございました。

(取材=大関 愛美)

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