佐藤こうぞう(以下:佐藤)
本日はお集まりいただき有難うございます。今回は、”外食産業の未来”という非常に難しいテーマについて、VIP外食経営者4名をお招きして語っていただきます。
非常に勉強になる内容だと思いますので、皆さんどうぞ宜しくお願い致します。
質問①
現在の外食市場環境について
外食産業は転換期かどうか。ネガティブイシュー(課題・懸念される問題)とポジティブイシュー(期待・明るい材料)をそれぞれ、一つ挙げてください。
佐藤
では始めていきます。今、外食産業は大転換期にあると思われます。この問題について皆さんはどう見ていらっしゃるのでしょうか。菊地さんからお願いします。
菊地 唯夫氏(以下:菊地)
皆さんおはようございます。今日はよろしくお願い致します。
まずは”転換期かどうか”というテーマ設定なんですが、これは私も間違いなくそう思います。
いまの日本にとって一番大きな問題は、すでに「人口減少」がスタートしてしまっているということです。外食産業にとって、お客様をお迎えするということと、働き手の数というのは非常に大事な要素です。つまり需要と供給サイド両面にとって、いまものすごく大きなインパクトが来ている。
「人口減少」は、日本にとって大きな課題であるという以上に、外食産業に大きな課題を突き付けている。それが現在であると考えます。
人口が増加している時、外食はどうやって産業化していくかというと、やはりチェーン理論による多店舗化というのが、ひとつの王道であり、非常に親和性が高かった。
じゃあ、現代のようにお客様の数も働き手もどんどん減っていくという「人口減少」の世の中においても、チェーン理論だけが親和性のある産業化モデルなのかということを、我々は問われている。それが、私が現代を転換期だと思うゆえんです。
そのなかでのネガティブイシューとポジティブイシューですが、まずは我々供給サイドとしてのネガティブイシューは「人不足」という問題が非常に強くなってきていること。
一方でポジティブイシューは何かというと、日本人の数は減っていきますけれども、日本のコンテンツというものがいま世界で再評価されている。そしてインバウンドの増加に結びついている。
これは、今後人口減少が続くと前提しても、ポジティブイシューとして捉えられるのではないか。そしてそれを維持できるかどうかが、今後の成長戦略に繋がっていくという風に思います。以上です。
佐藤 ありがとうございます。インバウンドというキーワードに絡んで、日本のコンテンツが世界に評価されているということですね。それでは加治さんお願いします。
加治 幸夫氏(以下:加治)
おはようございます。皆様よろしくお願い致します。
まあ、転換期と言われれば、うちは毎年転換期みたいなもので、いつもハラハラドキドキしているわけなんですけれども(笑)、この業界に40年身を置いていて、いまは”大転換周期”のさ中にあると肌で感じます。
1970年~99年の30年間は、時代が成長の過程にあり、同時に外食もピークを迎えた。その後だんだん縮小していき、2000年前後を期に、日本は”成熟化”に突入しているわけです。
この商業の成熟化というのはいかんともしがたくて、うちでは15年くらい前から「敵はニトリとダイソーとパナソニックだ」と言ってるんですね。いまは外食に行かなくともいい理由が世の中に沢山ある。
いい家具やインテリアが安く買えて、進化した冷凍庫とおいしい冷凍食品が普及している。100円のワイングラスを使って、素敵な空間でおいしいものが食べられれば、自宅で十分なわけですよね。ですから、ネガティブイシューは「外食の理由が希薄になってきている」という所かなと思います。
逆にポジティブイシューは、まあ、欧米の経済成長率はいろいろなことがあっても3%くらいあるわけなんですが、それが日本は1%くらいなので、逆にまだまだ伸びしろとして(可能性が)あるんじゃないか。イノベーション、生産性、新しい外食の形を作っていく、といったチャンスが眠っているのではないでしょうか。
佐藤 ありがとうございます。秋元さんはいかがですか?
秋元 巳智雄氏(以下:秋元 ) ワンダーテーブルの秋元です。よろしくお願い致します。
ええっと、やっぱり人口減少というキーワードを外食産業の問題として挙げたいのですが、言おうとしていたことが全て菊地さんに語られてしまったので(笑)、すこし視点を変えて、人口が50年後には1000万人くらいに減り、「人材が減る」という点をネガティブイシューに挙げ、一方で「AIとかIoTで雇用難、人材難、人口減少をどうカバーしていくか」という点を日本の産業全体の重要な要素かつポジティブイシューとして挙げたいと思います。
あともう一つ、インバウンドとアウトバウンド。これもネガティブイシューでありポジティブイシューだと思っています。
インバウンド、つまり観光客は昨年2000万人を超え、2020年には4000万人を目指すということなんですが、それに観光ビジネス、物販のビジネスは対応しているけれども、外食産業はまだ追いついていないんですよね。
また、アウトバウンドという面でも、日本以外の全世界にいま日本の飲食店が8万5000店舗以上があるんですけれども、うち9割は日本人向けということなので、潜在的チャンスはあるけども、まだまだネガティブイシューでもあるのかなという風に思っています。
佐藤 ありがとうございます。いま挙げていただいた「人材難」「インバウンド・アウトバウンド」に関しましては、後ほど改めて皆さんに語っていただきます。では清宮さんどうぞ。
清宮 俊之氏(以下:清宮 ) はい、清宮です。宜しくお願い致します。
えー最後の番にもなりますと、もう「異論はございません」の一言で終わりたい感じなんですけれども(笑)。
大転換期というのはその通りでして、私も日本という国自体に転換期が来ていると思いますし、なにより皆さんご存知の通り、2020年にもなると、日本は世界でも類を見ない高齢化社会のモデルになるわけで、外食産業も転換期にあると思っております。
ポジティブイシュー等につきましては、「人材」であったり、「原材料問題」の安心・安全、「グローバル化」であったり、すべてがポジティブでもありネガティブでもある。本当に考え方の組み立て次第だなと思っております。
あとは外食の問題ですと、もう当たり前になってきていますけど、ボーダレス化といいますか、「中食」と「外食」の垣根がどんどんなくなっていくこと。そしてやはりコンビニエスストアさんの進化がどこまで進んでいくかというところ。それと、特に我々ラーメンの業界は、カップラーメンのクオリティが年々高くなっていますので、ヘタしたら街のラーメン屋よりカップラーメンの方が美味しいという時代がくるのではなかろうかという時に何ができるのかということは、科学的な視点も含めて追っていかなければいけないと思っております。
佐藤 ありがとうございます。では、次の質問に移ります。
質問②
インバウンド・アウトバウンドについて
インバウンド市場の見通し・対策、アウトバウンド(海外進出)の循環、戦略についての各社の取り組み
佐藤 ここは、秋元さんからお願いします。
秋元 インバウンドは、数字で言うと去年日本に二千数百万人の観光客が来ている。
うちの会社は年商120億くらいあるんですけど、店舗数は55しかないんですよ。一店一店の売り上げが高いのが特徴なんですね。
で、うちは55店舗しかないのに、(外国人客が)30万人来ているんですね。ですからそこからわかることというのは、”思考を変えて対策を打てば、新しい売り上げが作れる”ってことなんです。
インバウンドの人たちが喜ぶようなハードとソフトを考えてしっかり対策を打てば、外食産業はそういった新しい売り上げを積み上げられるんじゃないかなと思います。
佐藤 ハードとソフトというのは、具体的には?
秋元 ハード面では、例えば銀聯(ぎんれん)カード、Wi-fiもそうですし、8ヶ国語によるメニューの多元化など。
ソフト面で言うと、うちではインバウンド対策の内容をちょっとしたポケットメモ化していまして、そういったものを使って、外国語を取り入れたロープレなどを店舗でやって、例え言葉が通じなくて完璧にはコミュニケーションが取れなくても、店の中でのサービスでお客様に少しでも日本のおもてなしを感じていただけるような対応をしています。
佐藤 なるほど。ありがとうございます。では清宮さん、御社は今アウトバウンドのほうでご活躍されてますよね?
清宮 アウトバウンド、はい、そうですね。今オセアニア、アメリカ、ヨーロッパという大きな大陸に、12か国出店させていただいてまして、全64店舗という現状です。
100店舗到達でようやく海外事業のメリットデメリットが出せて、感覚的にも定量的にも海外事業って何なのかという所が出せるかなと思っています。
アウトバウンドはいま手探りでリスクだらけで(笑)やってますけども、50店舗超えた所ですこし原型が出てきたというところです。まず当たり前に100店舗をクリアして、次のフィールドに行きたいなと思っております。
佐藤 千葉さん、なにか質問はありますか?
千葉 私は、以前「モーモーパラダイス歌舞伎町本店」にうかがった際、お客さんの顔ぶれから”スキヤキ・シャブシャブのグローバル化”というものを実感しました。
それを支えたのは、御社の東南アジアへのアウトバウンドだと思うんですけれども、秋元社長ご自身はアウトバウンドとインバウンドの相乗効果についてどう考えておられますか?
秋元 そうですね、海外、とくにアジアの観光客に対しては、日本でもしっかりとお店があり、海外にも同ブランドがあるということのPR要素は非常に大きいと思います。
というのは、日本人もフェイスブックは大好きだけど、東南アジアの人は、アメリカ人よりも、日本人よりももっとフェイスブックが好きなんです。
そういう意味では、双方の国を行き来することで、情報はあっという間にクロスロードすることができるんですね。
ただ、海外の店舗がやや高級路線なのに対し、日本の店舗は少し若い人向けに作ってあるので、そのあたりのブランディングをもう少し整えていきたいと思っています。
千葉 では、清宮さんにもお伺いしますが、先ほどおっしゃっていた”100店舗を超えたとき、海外進出のメリットを感じるであろう”という、そのボーダーとメリットはどういったものなのでしょうか?
清宮 僕は感覚的に話してしまっているんですけども、それは当然、完全独立法人としての採算性でもあります。
またここ数年で、現地法人の経営メンバーのクオリティであったり、スキルが揃ってきているので、この2年でそれをさらに積み重ねていけば、本当の意味において海外で戦っていける組織になるのかなと確信が持てつつあるという状況です。
佐藤 中村さん、どうぞ。
中村 いま、清宮さんがおっしゃったことは非常に重要だと思うんですよ。現在アウトバウンドで一番成功しているのは熊本の「味千ラーメン」なんですけども、ほかに100店舗規模で海外に展開しているところってあんまりないんですよね。
あの、菊地さんのところで去年の暮れからフィリピン、インドネシアに一気に3店舗「てんや」を出されましたよね。直営、合弁FCということでいえば、これまで全部FCで出されている。かつて上海で失敗された経験もあると思いますが、このあたりどうですか?
菊地 (苦笑)あの、今タイ、フィリピン、インドネシア3か国全部FCでやっておりますけれども、当然のことながら、FCでこれから海外全部やっていくということではなくて、一番大事なのは「人材」かなと思っているんです。
いま、FCで現場に全部を任せていることで、海外における人材育成に繋がっていると思いますので、ある程度人材が育成できた段階で、次は資本を持ち込むとか、合併、もしくは独資といった次のステップに向けて進めていくという風に考えています。
佐藤 菊地さんは(一般社団法人)日本フードサービス協会の会長も務められていますよね。協会としての取り組みについても伺えますか。
菊地 フードサービス協会は国際委員会ですので、海外の同じような業界と連携をしたりして、例えば日本の企業が海外に進出しやすくするというようなことはよく議論として出ています。
去年、TPPのツアーということでアメリカに視察に行きましたけれども、これは単純に進出するということだけではなくて、海外では輸出入という意味でも食材面での連携が必要なので、そういった意味での位置づけがもっともっと大きくなってくると予測してのことです。
佐藤 加治さん、中国はどうですか。
加治 5年前に5店舗やって5連敗して、もうダメだと思ったんですけど(笑)、業態転換して何とか生き残っています。うちは香港、それから上海で独資でやっています。
海外での出店を続けていくには「大義」と「実利」が大事で、まずなんのためにやっているかということ。そして利益を上げてスタッフに還元していくためのしくみや、うまくいったときどうやって本体の成果に組み込んでいくかということが必要だと思います。
佐藤 いま中国に出るというのは逆張りですよね。(御社では)カニ(の業態の売り上げ)がすごい上がっているそうですね。
加治 そうですね。向こうのマーケットに合わせて火鍋と寿司食べ放題をやったんですけど、これが5連敗しまして、顕在マーケットから、まだ潜在マーケットだったカニの業態に転換しました。そうしたら向かうところに敵がいなかったということです。
佐藤 なるほど。菊地さん、何か一言あればお願いします。
菊地 インバウンドとアウトバウンドを考えるうえで、今度の2025年の東京オリンピックというのは絶対頭に入れないといけないと思うんです。
よく、投資家などいろんな方々に「東京オリンピック後は大丈夫ですか?」と聞かれるのですが、その場合私は「今度のオリンピックは、”新興国”として迎えるのではなくて、成熟国として迎えるオリンピックである」とお伝えしています。
なぜそういう質問が出るかというと、前回の東京オリンピックでは、オリンピック前に高速道路や国立競技場を作り、終わるとパタッと不況になってしまったからです。例えばリオのように、新興国ではそういった不況がおこりがちなんですね。
一方、成熟国のオリンピックというのは過去にロンドンオリンピックしかないわけですが、あるシンクタンクの調査によれば、ロンドンオリンピックでは、経済効果がオリンピック前よりも後の方が圧倒的に大きかったとされるんですね。
それはなぜかというと、ブレナー首相はオリンピックを、世界に対してのロンドンのショールームに仕立てたからなんです。
ロンドンが、いかに消費マーケット、観光マーケットとして面白いか。オリンピック前にいろんなコンベンション(大会)を開いて世界の注目を集めて、そういった人たちがオリンピックの後にも投資したり旅行したりして、経済効果がより大きくなった。
これは、多分今度の日本のオリンピックでも例としてありえることであって、ではそのショールームのコンテンツは何かというと、やっぱり僕は”食”だと思うんですよね。これだけ日本の食が海外の方から評価されてますので、そうした面でオリンピックに関連付けることによって、アウトバウンド、インバウンドを結び付けていくような戦略が有効だろうと思います。
佐藤 素晴らしいお話を有難うございます。みんな、オリンピック後を悲観していますからね。安心しましょう。
中村 成熟国が迎えるオリンピックということでは、日本でも、国や自治体がいろんなコンベンションをやるべきだし、日本フードサービス協会でもやるべきだと思うんですよね。日本の飲食を世界に売り出すということをやってほしいなと思っています。
佐藤 大阪外食産業協会は「食博覧会・大阪」をやってますよね。
中村 そうですね。4年に1度、今年のゴールデンウィークにまたやりますよね。そういうのも、今後は西・東の区別なくまとめてオールジャパンでやりましょうよ。
佐藤 素晴らしいご提案を有難うございます。
質問③
人材難対策、採用・教育について
・「働き方」のあり方が今問われているが、そのためのあるべき姿とは。「外食=ブラック」からの脱却。「外国人雇用」は進むか?
佐藤 次のテーマです。
昨今では、”人がいないから店を閉める”というケースも起きています。また、ブラックという批判もありますし、非常に難しいテーマですね。一言ずついただきたいと思います。菊地さんお願いします。
菊地 一番の問題というのは、産業の在り方が転換期を迎えているということだと思います。
ここ数年、「異物混入」「賞味期限」といった食材の問題や、「労働問題」「過剰勤務」などのニュースが取り沙汰されています。
根本にあるのは、デフレの20年間にずっと価格が下がって、コストが上がっているという問題です。
これは、製造業もサービス業も、置かれている状況は一緒だったんですね。ただ、製造業は逃げ道があって、ものづくりを中国やミャンマーなど外に出した。
サービス業ではそれができないので、生産性を維持するために自分たちがコストをコントロールするしかない。その結果生まれたのが先述のような問題です。つまりこれは、産業構造全体の問題であるという風に私は思っているんですね。
そうすると、これから考えていかないといけないのは、単純に働き方を変えるだけではなくて、働き方を変えたまま生産性を上げること。だからこそ”産業化”だと思うんですね。
「労働生産性」の公式というのは、「付加価値((≒限界利益(粗利益)))を「労働者の平均数」で割るというものです。
従業員の数で割るということは、働き過ぎをやめて、環境をよりよくするためには、分母の数を大きくしないといけない。そうすると当然のことながら、分子の数を変えないと、生産性が下がってしまいます。この問題をどうするか。
ひとつの答えは分子を増やす、ですね。佐藤さんのおっしゃっている”イートグッド”だってそうです。付加価値を多く付けて、より生産性を上げていく。
今までチェーン理論でどんどん増やしていった、これはどちらかというと分母を増やしていくやり方です。これを抑制するのではないけれど、どちらかというとこれからは、付加価値を付けて分子を増やし、生産性を上げていく産業の在り方というのが必要になっていくんじゃないかという風に思います。
佐藤 外食で付加価値を上げていく。生産性を上げていく。非常に難しいテーマではありますが、今後菊地さんからいろいろな提案をいただけることを期待しています。
外国人雇用については何かありますか?
菊地 外国人の雇用では、外食の場合「技能研修」が認められていないというのがひとつ大きなネックとしてあります。
先ほどオリンピックの話をしましたが、インバウンドの先のマーケティングもしくは広告に対して、アウトバウンドが相互に作用するという可能性があるわけです。
日本で研修された方が海外にも出ていく、展開できるとなれば、我々業界としてはそういった外国人の起業を助けるような活動はしていかないといけないかなと思っています。
佐藤 まずは国の規制を変えていただきたいですね。では、加治さん、人の問題はどうですか?
加治 うちには今年4月、140人新入社員が入るんですが、そのうち40人が8か国からの外国人です。
佐藤 素晴らしい!
加治 今、約800人の社員全体のうち約60人が外国人です。これを、ゆくゆくは20%台に上げていきたいなとは思っています。
日本に来て日本語を勉強して、何十個もアルバイトをしてという経験をしている彼らは、雇っていても非常に優秀なんですね。
宗教とか、コミュニケーションギャップとか、いろいろな問題はあるんですが、それを乗り越えていくというところにお互いの成長がある。
日本で働き、日本しか知らない僕らの方がそのことによって、成熟していくことができるのではないかと思うし、すでに効果が出ていると思うので、今後も進めていきたいですね。
佐藤 なるほど。秋元さん、人材、働き方の問題はどうですか?
秋元 休めるようになっても給料は出ないということにならないように、我々経営陣がしっかりハンドリングして、事業モデルを変えていかないといけないという風に思います。
うちは7,8年まで75店舗あって売り上げが100億くらいだったのが、今は55店舗で101億になっています。単体の売り上げを上げて、業態構造を変えることによって生産性を上げてきたわけです。
ただ、やっぱり人が集まらないということに関しては日本の規制を変えていかないといけないと思います。
コックさんはVISAが取れるけれども、サービスマンは単純労働ということでVISAが取れないんですね。留学生は時間の問題とか、その後の働き口のこともあります。
そういったサービス産業の問題というのを、TPPに絡めても国に把握してもらわないといけないなというのはありますね。
佐藤 有難うございます。清宮さんはいかがですか。
清宮 えーと、そうですね。”異論はございません”という感じですが、スミマセン(笑)。
人材の問題は、仮にこの先ロボット化が進んだとしても、それをコーディネートしたりプロデュースするのは常に「人」なので、この先もずっとチャンスでもあり、リスクでもあると認識しています。
今、海外に展開する際に、バラバラの教育ツールを使っているとブレるなというのがありまして、どこの国の言語でも通じるキーワードは何かなということで、昨年からはトライアルで「7つの習慣」という世界的に有名な書籍を共通のツールとして取り入れています。これは、どこの国に行っても通じるんですね。
これを会社の核に据えて肉付けを加え、フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社と共同開発した「7つの習慣 店舗運営の心得」というプログラムを作りました。それを外食業界全体に通じるものしていこうということに取り組んでいます。
まずうちの社員が全員研修を受け、認定ファシリテーションの資格を取れるようにバックアップしていきます。そしてそれを名刺にも乗せられるようにします。この資格は、例えば独立した際にも活きてきますから、社員にとっても魅力的な資格なわけです。
社員に対してそうした付加価値をつけていくということを2017年は集中してやっていきたいなと思っております。
佐藤 グローバル人材の育成。素晴らしいですね。はい、千葉さんどうぞ。
千葉 菊地さんに質問です。ロイヤルホストで24時間営業をなくしたことで、売り上げには影響があるんじゃないかと想像するんですが、どのような社会的効果や、人材採用における効果があったのでしょうか?
菊地 基本的には、今回は何年もかけて準備をしてきて、最後に残っていた2店舗が24時間営業をやらずにすむようになったということなんです。
創業当時のロイヤルホストは、専門店の料理をある程度リーズナブルに食べていただくというのがコンセプトなんですね。ただそれが少しずつずれて、だんだん24時間営業になっていった。そのひずみを解消するために、原点に戻りましょうという部分があります。
これは従業員に対して「会社は本気で働き方改革に取り組んでいる」という側面で非常にいい影響があります。ただ単純に24時間を廃止しただけだと、千葉さんがおっしゃったように売り上げが下がって利益が下がるので、そこに”答え”を持っていないといけない。
ロイヤルホスト単一業態としての本質的な答えは、営業時間を減らした分、本来のランチとディナーにちゃんと人を配置してサービスをよくして、その付加価値に対してお客様から正当な対価をいただくことで生産性をきちんと成立させるというものです。
ただ、これは時間がかかるんですね。ですから、我々のグループはいろいろな事業を持っている多面体でありますので、当面は多少のマイナスが出ても他の事業で支えるから大丈夫ですよ、というのが今の答えになります。
千葉 有難うございます。では秋元さんに質問ですが、御社ではダイバーシティ、女性雇用対策についてはどうお考えでしょうか。
秋元 ある程度の法人になると、女性の雇用の計画表みたいなものを出さないといけないんですね。僕らも、実現できるかどうかわからないんですけども、2020年までに社員の女性比率を半々にする目標を立てています。
幹部社員を何人にするかということや、新入社員には女性が多いけれども、結婚や出産など様々な理由で現場での離職率がどうしても高いことなどを、会社としてフォローしていく必要がある。厳密にいえば、平等な対応というよりも、サポートしていくこということをやろうとしているところです。
千葉 有難うございます。
(→後編へ続く)
(構成:中村結)