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コラム

日本橋「鮮魚居酒屋戦争」が勃発!

築地に移転するまでは、日本橋が日本の魚市場のメッカだった。その日本橋エリアに「日本橋鮮魚卸売市場」がオープンして話題になっている。すでに魚では強豪3店舗がしのぎを削っているが、同店の参入でさらに面白くなってきた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


首都高速江戸橋ランプ前の日本橋本町1-1-1に4月11日にその名も「日本橋鮮魚卸売市場」がオープンした。オフィスビルの1階前面にはスーパーで見かけるような鮮魚店があり、新鮮な魚をさばく職人の姿が通りから見える。店に入り、その鮮魚売場を抜けると、奥に大漁旗たなびく居酒屋がある。この店を仕掛けたのが新宿七丁目の繁盛店「鷹丸鮮魚店」などを経営する魚業界の名物男・相原正孝氏(株式会社鷹丸代表取締役)。相原氏は築地仲卸事業とダイエー碑文谷店、新浦安店の鮮魚小売り部門を仕切るコンシェルジュ事業からスタート、2009年に飲食事業を立ち上げた。今回の「日本橋鮮魚卸売市場」は「鷹丸鮮魚店」を併設した文字通りの「魚屋が営む鮮魚居酒屋」だ。相原氏とタッグを組んだのは、近くで和風居酒屋を運営する江戸しぐさの橘達也氏。このパワー溢れる二人が、100坪160席のオオバコを仕掛け、日本橋エリアに新風を吹き込んだ。それにしても、なぜ日本橋だったのか。かつての日本橋には江戸時代、日本橋魚河岸という大きな魚市場があった。それが、1923年の関東大震災によって壊滅し、築地へ移されという歴史がある。橘氏も「そんな昔の日本橋の活気を取り戻し、サラリーマンやOLの皆さんに活力を届けたい」と語っている。日本橋開発を進める三井不動産関係者も、「日本橋の古き良き歴史、文化などを掘り起こしたい。魚文化もその一つだ」と言っている。2010年10月にオープンした「コレド室町」に入ったAPカンパニーの超繁盛店「日本橋紀ノ重」。朝どれの魚を同社独自のルートで夕方店に届けるという離れ業で一躍有名になった。オープン当初は、代々続く築地仲卸し「紀ノ重」ブランドでスタートしたものの、後に自社漁船をもち“製販直結”を魚業態のコンセプトにするようになって、もはや築地ブランドは必要なくなったか、4月1日から店名「日本橋 墨之栄」と改めた。日本橋が最も栄えた時代、墨や木版画を使った浮世絵が流行ったことと、自社漁船を保有する宮崎県延岡市の須美江という地名をかけて「墨之栄」に変えたと同社では説明している。日本橋には、3年前に「北海道八雲町」の一号店である三越前店がオープンした。経営は、ファンファンクションの合掌智宏氏。函館から本州に寄った北海道は道南エリア。人口2万人弱の小さな町である八雲町は、東側は日本海、西側は太平洋と二つの大海に面し、豊富な海鮮類に恵まれている。日本海側では甘エビ、ホタテ、ウニ、アワビ。太平洋側ではカニ、ホタテ、ホッキ貝、つぶ貝、カレイ、平目など高級と言われる魚介が日々、3つもある漁港で水揚げされる。合掌氏がそんな八雲町の自然の恵みを友人から送られ、その新鮮な美味しさに感動したことから始まった「ご当地酒場 北海道八雲町」。合掌氏は八雲町役場に直接自ら出向き、農林水産課、観光課などの役場の職員に「ご当地酒場 八雲町」構想のプレゼンテーションを行ない、賛同を得てのスタートだった。場所は、「日本橋鮮魚卸売市場」と「日本橋墨之栄」のちょうど中間にある。50坪80席の箱。合掌氏によると、3月は1,400万近くを売ったというから、こちらも超繁盛店である。昨年の8月には、イカ料理をメーンとした居酒屋「日本橋イカセンター」がオープンしている。経営は「魚バカ」ブランドを展開するスプラウトインベストメントの高橋誠太郎氏。元経営コンサルタントで、「経営はエクスタシー」と語るユニークな経営者。「イカセンター」業態は、同店が西新宿(2店舗)、神楽坂(2店舗)、渋谷に続く6店舗目。33坪60席。同社のイカに関しては、ヤリイカ、スルメイカ、ケンサキイカ、アオリイカなどを季節ごとに産地を変えながら独自のルートで仕入れている。魚に関しては、千葉県・神奈川県の漁港をはじめとする全国各地の漁港から「朝獲れ」のものを直送して仕入れ。卸専門会社のバイイング力を生かし、注目のブランド魚、活イセエビ、活車エビ、活アワビ、活カワハギなどといった付加価値の高い素材を豊富に取り揃える。かつ、漁港から自社の軽トラックで全店舗分をまとめて運び、その日のうちに各店で提供しているため、圧倒的な鮮度の商品の提供に成功した。「北海道八雲町」「日本橋墨之栄」「日本橋イカセンター」、そして「日本橋鮮魚卸売市場」。いずれも実力を兼ね備えた魚業態のイノベーターたち。彼らが時間を超えて、かつて魚で賑わった日本橋の活気を呼び戻してくれているようだ。 

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