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コラム

飲食も「ハイクオリティカジュアル」の時代!

ファッションの世界では、カジュアルだけどハイクオリティというジャンルがいま主流となりつつある。「ユニクロ」などはその代表だろうが、飲食の世界でも上質の料理・サービスをリーズナブルな価格で提供する「ハイクオリティカジュアル」トレンドが定着してきた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


4月12日に馬喰町にオープンする2002年全日本最優秀ソムリエに輝いた阿部誠さんの「東京ぶどう酒店」のレセプションを覗いてきた。阿部さんといえば、銀座8丁目に200~300種のシャンパーニュをセレクトした「サロン・ド・シャンパーニュ・ヴィオニスセラー」を運営するように、これまでは高級ジャンルで活躍してきたオーナーソムリエだ。その阿部誠さんが「一流のカジュアル」をコンセプトにプロデュースしたのが「東京ぶどう酒店」。しかも東京イーストエリアの繊維問屋街である馬喰町に出店。1階はスタンディングで、地下がビストロという構成だ。ボトルワインラインナップは「Best Value Sommelier Selection 10×8」と題し、2000円から1000円刻みに9000円までの8プライスを、各10アイテムずつ取り揃えている。フランスを中心に11ヵ国から選別し、品種も偏りのないよう、バランスを重視しながら試飲を重ね選び抜いたという。「1000円違うと味がかなり変わってきます。この違いを楽しんでもらいたい」と阿部氏。均一価格や低価格に特化した店が多い中で、“値段による価値”を価格ごとにしっかり感じられる打ち出し方。2000円台のがぶ飲みワインを出す「安かろう、不味かろう」のバルやバールが増えている風潮に警鐘を鳴らす意図さえ感じる。料理全般のアドバイザーには、ホテル西洋銀座の総料理長である広田昭二氏を迎えた。本格的なフレンチを軸に置きながらも、定番フレンチは避け、エスプリ溢れる創作料理が中心。前菜は1000円以下、メインは2000円以下。なかでもスペシャリテは、フォアグラ料理で、すべて1260円と驚きの価格で常時5品用意する。まさに「ハイクオリティカジュアル」時代の幕開けを告げる意欲的な店が誕生したといえよう。4月1日にサントリー系のダイナックが既存店をリニューアルした「有楽町ワイン倶楽部」は、ワイン輸入大手小売りのやまや出身の内藤氏が経営する「ガーヴドリラックス」のワインショップを併設。1000~3000円台のボトルワインが300種類揃っており、スタンディング席、バル席、テーブル席に持ち込み料を払うBYO方式。オープンキッチンのコックコートの料理人たちが、料理の上質感も演出している。ワイン業態ばかりではない。4月11日にオープンした「日本橋鮮魚卸売市場」は、西新宿で2店舗展開する「鷹丸鮮魚店」を併設。鮮魚店では小売りもしており、文字通りの鮮魚居酒屋だ。カタチだけ「鮮魚居酒屋」を装う店が増えているなかで、この複合業態も「ハイクオリティカジュアル」と言えるだろう。こうしたカジュアルでありながら、ハイクオリティを打ち出す「ハイクオリティカジュアル業態」がこれから飲食トレンドのメインストリームに登場してくるのは間違いない。そして、この流れの特徴は、「顧客がプライスゾーンを選べる」という使い勝手の良さだ。より上質を求める顧客に対しても、「価格以上の価値」を提供できる縦幅の広さを持っていること。そして、当然ながら、サービスの原点である「お客様を楽しませるための」ホスピタリティも兼ね備えていること。テクニックやパフォーマンスではない接客の心を感じさせてくれる店。そうした飲食店こそが、「顧客価値」を生み、他店にできない真のオリジナリティをもつことができるのではないか。 

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