大山:まず創業のきっかけというところから教えていただけますか?
櫻井さん:元々は高校時代から何かしらで起業したいと思っていて、大学でいろいろビジネスをかじったりとかしていたのですが、なかなかうまくいかなかったりして、それとは別でバイトをやったのですが、全部続かなかったんですよ。唯一続いたのが、イタリアンのお店のバイトだったのですが、それがめちゃくちゃ楽しいなと思って、そこから「自分飲食の道で行こうかな」というのをそのときからぼんやり思い始めたんですよね。
それでたまたま知り合いがお店出すってことだったので、そこに入れさせてもらって、オープニングメンバーとしてやっていたんですよ。千葉の柏なのですが、僕が隣のお店でバイトしてたんですけど、その隣のお店の店長だった人が独立するということで。
そこの会社もその後、結構展開していって店長やお店の立ち上げなどやらせてもらって27歳ぐらいのタイミングで「そろそろ自分で行けそうだな」と思って、独立を決意したという感じです。
大山:そうだったのですね。そちらの会社では創業から関わって何店舗ぐらいまで伸ばされたのですか?
櫻井さん:はい、株式会社クアトロという会社なのですが、今はわからないですが、僕がいたのが7年前ほどで10店舗くらいだったかと思います。
大山:貴重な経験ですね。その会社と出会い、飲食の道を志していくというわけですね。櫻井さんの創業店はどちらですか?
櫻井さん:流山おおたかの森のこちらVIGOの反対側で「イタリアンバル PORTA」というイタリアンなんです。2018年のオープンです。これが実現できたのもクアトロでの経験値があったからです。
クアトロ時代に新浦安で店長をやらせてもらって、そこの立ち上げで本当に何から何まで自分でやらせてもらったんですよ。 基本的にそれと同じことをして通用する業態、立地で出したくて、流山おおたかの森が新浦安とちょっとエリア的に属性が似てるんですよね。新興住宅地でもありますし、ニュータウンという属性が。 なので、たまたまいい物件があったので、基本的にはこれまで学んだことを踏襲したものを、ここ流山おおたかの森でやったという感じです。
パフェバー VIGOを運営する株式会社CARTONの代表取締役 櫻井 航さん
大山:最初、メンバーは何人ぐらいで会社を立ち上げたのですか?
櫻井さん: 3人ですね。プラス、アルバイトが10人ほどでスタートしました。
大山:その後、どのような感じでお店は推移していくのですか?
櫻井さん: まずオープンして、ありがたいことに最初からめちゃくちゃ爆発したんですよね。割と当時から展開したいなと思っていたので、オープン景気で資金的な余裕もある程度できたので、半年後に2店舗目を、そのまた半年後に3店舗目みたいな感じで出店していきました。
2019年に3店舗目、このお店(VIGO)なんですけど、最初スパニッシュの業態で出したのですが、2020年の3月頃からコロナが始まったじゃないですか。 オープンしたばかりのタイミングでコロナになっちゃったので、なかなか集客が厳しくて、ちょっと休業とかもしたのですが、ワイガヤ系のバルっぽい業態だと難しくて。三密とかも言われていたし、セルフサービスとかもやっていたので、当時そういうのが駄目だったじゃないですか。
流山おおたかの森の本店、BISTRO&BAR VIGOの店内
それで思い切って業態を変えようということで、少し高単価でお客さんが少なくてもしっかり利益が取れるよう変えていった戦略の中の一つで今の「夜パフェ」と言いますか、パフェをデザートで出したら、結局そればっかり目掛けてくるお客さんが増えてきて、いっそのこと「これを専門店にしたら面白いんじゃない?」ということでパフェバー業態が生まれたんです。
それで、いろいろと自分でも検索したりして調べていくと「既に北海道でこんなに流行ってるんだ!」ということがわかって、旅行のついでに札幌の夜パフェに2、3軒行ってみたのですがどこも混んでいて。自分も甘いもの好きだし、食事の後のパフェ専門店という、この業態はめっちゃ面白いなと思って。自分としても単純にビジネスチャンスかもしれないというのもあったし、単純に消費者としてもこの業態はすごい魅力的だなと思ったので、これで店舗展開を進めていこうと決めたんです。
コロナ中、普段僕は料理ができないのでキッチンに入ったりはしないのですが、スタッフをあまり使えなかったので僕がキッチンに入った時があったのですが、盛り付けのカンペを見ながらやったらすぐにできちゃったので「僕みたいな素人でもできるんだ」という実感があって、FCのシステムをいろいろ勉強して整えていったという感じです。その後も結局、他業態含めて8店舗ぐらいまでは店舗を増やしたのですが、今後はこの業態を伸ばそうという感じで今は思っています。
セントラルキッチンから仕入れた素材を 手順に沿って盛り付けていくことで作業は完了。
大山:コロナをきっかけに「何かしないと」といった中で、生み出した業態なんですね。
櫻井さん:そうです。なので、パフェバー専門店をやろうと思ってやったというよりかは、コロナはどうやって乗り越えようかなと、もがいた結果、生まれた業態という感じです。
大山:1、2店舗目を出したぐらいから店舗展開は意識していたのですね。
櫻井さん:はい、創業のときから店舗展開は考えていました。5年で10店舗みたいな計画でやっていたのですが、今はそれよりはちょっとペース的には遅くはなってしまっていますが。
大山:業態としてはイタリアンやアメリカンダイナー、ハワイアン、そして今、パフェバーの業態に集中していくというような感じだと思うのですが、業態開発はどういった観点でやられているのですか?
櫻井さん:業態開発は僕が料理人じゃないので、何かこれを作りたいみたいなのはあんまりなくて、まず物件ありきで「この物件で、このエリアでこういう業態あったら面白いんじゃないかな」みたいなところから業態を作っていく感じになりますね。なので渾身の料理があって「これを絶対出したい」とかそういう発想で業態開発をしてるわけではないですね。
大山:なるほど。それでパフェバーの業態についてなのですが、パフェだけ売っているわけではないのですよね?
櫻井さん: このお店はパフェだけじゃなくて、キャパも広いので料理を出したりもしてるんですけど、基本的に今後のFC展開していく店舗に関しては、パフェをメインに簡単なおつまみとドリンクという感じですね。この料理も提供する業態は直営で出したいなと思っています。
大山:目標が3年後100店舗ということなんですけど、それはFC展開を含めてということですよね?FCの仕組みはすでに構築できているのですか?
櫻井さん:そうですね。FCで広げていければと考えています。FCの仕組みについてはもう大詰めになっていて、この2年ぐらいで実はFC店舗は既にあるのですが、そこでいろいろテストをさせてもらっていて。それでいろいろ構築できてきたので、あとは細かなところを少し整えていて、3月末頃に基本的に全部完成する予定なので、4月から正式リリースという感じで考えています。
大山:そうなのでね。ちなみにFCはどちらにあるのですか?
大山:パフェバー業態をやる上で、スキル的な部分で難しい部分などはあったりしますか?
櫻井さん:飲食店でなかなか難しいのはやはり調理の部分だと思うのですが、うちの業態は基本的にここ本店がセンターのキッチンも兼ねていて、パーツは全部ここで仕込んでいて、それを各支店や加盟店さんに送って、加盟店側ではそれを重ねていく作業といった感じで、本当簡単に仕組み化してあるんです。店舗での特殊な火入れは基本ないので、味のぶれはしないですし、盛り付けも動画や写真など全てこちらで提供していて、それを見ていただいてグラムに沿ってのせていくだけのオペレーションなので、かなり簡単に調理できるようになっています。
パフェに使用するフルーツは今は加盟店さんで仕入れてもらうのですが、今後は全国に配送できるような環境を整えていきたいと思っています。それ以外はほとんど弊社のセントラルキッチンから配送になります。サブレーみたいなクッキーや、フルーツをコンポートにしたものとか、パイ生地みたいなものやマカロンなどですね。 生クリームを当ててもらうといった、小学生の家庭科でやるようなレベルの作業のみ現場でやっていただく感じです。
大山:難しくなさそうですね。アルバイトさんで、オペレーションできそうですね。
櫻井さん:はい、下北沢店も蔵前店もほとんどアルバイトさんが調理しています。
大山:あと業態的にアルバイト求人が集まりやすそうですね。
櫻井さん:おっしゃる通りで、採用はこの業態はかなりメリットがあって、うちもイタリアンやカフェとかをやっているんですけど、それも居酒屋に比べると採用はしやすいと思うのですが、そこの10倍ぐらい応募くるんですよね。 アルバイトさんに関しては基本的にはもうSNSだけで応募は完了してしまう感じです。オープニングだけは採用媒体をなんかしらかけた方がいいかもしれないですが、それ以降のスポットで採用していくものに関してはSNSです。
大山:属人化しないで良いというメリットもありますね。
櫻井さん:そうですね。属人性はかなり省いてます。おっしゃる通り、通常のバーだとマスターの人柄で営業されているお店が多いと思うんですよね。お酒で差別化するのってかなり難しいじゃないですか。だから多分、世の中バーのFCってないんだろうなと思っているのですが、うちはパフェという商品で差別化できるので。バーのFC展開は難しいから聞いたことないけど「このパフェバー業態ならFC展開できるのでは?」ということで、ビジネスチャンスだと思っています。
大山:なるほどですね。バーだとスキルも必要ですしね。大体、客単価はどのぐらいなのですか?
櫻井さん:大体3,000円ぐらいですね。パフェが2,000円から2,500円ぐらいで、そこにドリンク1杯、もしくは2杯ぐらいで、それぐらいになるんですよね。
大山:結構しっかりと単価が取れるのですね。VIGOのパフェの特徴はどういったところですか?
櫻井さん:そうですね、パフェにしては基本、弊社のパティシエが全部手作りで仕込んでいます。基本的には夜、お酒の後に食べたり、お酒に合わせたりするので、あまり甘すぎないような味付けにしています。なのでファミレスのパフェみたいな感じではないんです。 あとは季節のフルーツを使ったりとか、季節に合わせて毎月新しいパフェを出しているんですよ。
2月だとバレンタインがあるので、そういった感じで季節ごとに合わせたパフェを作っています。
大山:ドリンクはどのような感じですか?何かFCとしてのルールみたいなものはあるのですか?
櫻井さん:そうですね、ドリンクも出てますね。ドリンクは基本は加盟店さんに任せているのですが、下北沢店はワンドリンク制にしているので、パフェを頼んだ人は必ずドリンクとセットのような感じでやって頂いています。お酒じゃなくても、コーヒーとか中国茶など、ある程度自由度を持ってやって頂いています。
これからの展望としては、こちらで全部パッケージは用意してあるのですが、プラスして今後は既に居酒屋などをやられている方とかも加盟いただけるかなと思っているので、何かこだわりのドリンクみたいなものを、自由に入れて頂いていいですよ、というふうに思っています。僕たちとしてはパフェだけはしっかりレシピ通りにやってください、とそこだけ守っていただければ。
大山:FC加盟の加盟金やロイヤリティ、初期費用はどのような設定になっていますか?
櫻井さん:ロイヤリティは売上の5%、最低保証額が10万円といった感じです。加盟金は100万円です。今後、展開が進むにつれ、加盟金は上げさせていただくかも分かりませんが、最初は0次募集的な感じなので100万円に設定しています。
物件取得などを含めた、初期投資については居抜きなどの場合は結構、安くスタートできると思います。おそらくバーの居抜きだと看板を変えて、内装をちょっと整えるぐらいでオープンできてしまうと思うので、200〜300万円の内装費で出店可能かと思います。
大山:低投資で、かなりチャレンジしやすいですね。
櫻井さん:そうですね。 やっぱり火を使わないんで、電気容量やガス容量もミニマムでいけるので。例えば蔵前店は居抜きで入って、店内はほぼ何もいじらずオープンしたので3ヶ月で回収しちゃいましたし、下北沢店も半年ぐらいで回収した感じです。
大山:それはいいですね!あとやはり路面店である必要性がないというところが何より魅力的ですよね。
櫻井さん:そうですね、基本集客はSNSが多いので、うちを目がけて来てくれるお客様がほとんどなので、駅から離れてるとちょっときついですが、1階じゃなくても、地下や2階3階でも全然問題ないかなと思います。実際にここは2Fですし、家賃はその分少し安く抑えられますからね。
流山おおたかの森本店の外観
あとは業態的には2軒目のビジネスなんで、周りに飲み屋さんがないと厳しいかなといった感じではありますが、逆にそういういった商圏であれば、裏路地とかでも駅から離れすぎていなければ、全然OKだと思っています。
大山:実際に既存店の売上的なところはどのような感じですか?
櫻井さん:蔵前店や下北沢店のお話をすると、そこはどちらも大体8坪くらいなのですが、売上が250万円〜300万円/月いかないぐらいというイメージですね。 ここの店はセントラルキッチンも兼ねてはいますが、20坪で売上が500万円/月ほどです。もうちょっと上の時もありますが。イメージは15坪で300万円/月、それぐらいを安定して取れるような設定ですかね。
大山:原価率や営業利益といったところはどれくらいですか?
櫻井さん:原価率は大体27%で、営業利益は最終的に20%残る感じです。人件費も25%〜27%ぐらいで推移しているので、割とFLは低いですね。なので利益は出しやすいと思います。
人件費がかかる仕込みの部分はこちらが担っているので、加盟店さんはそういう意味で利益を出しやすいという感じですね。あとは家賃比率も、いい場所に出す必要がないので、低くて済むというのがあります。
大山:利益率20%はすごいですね。同じエリアにおけるドミナント経営の一業態としても良さそうですね。
櫻井さん:この業態自体が本当に外食の常識を変えれるんじゃないかなと、大げさではなく思っているんです。食事の後にパフェを食べながらバーで過ごすというのを、まだまだ日本全国では知られている文化ではないと思うので、今後もし僕らが全国展開できた暁には「食事の後はパフェ」といった新しいスタンダードを実現できるのではないかなと。スターバックスのサードプレイスじゃないですが、そんな新たな提案ができるのではないかなと本気で思ってるので、外食の常識を変えられるよう、一緒に新しい文化を作っていくオーナーさん方と一緒に仕事ができたら面白いなと思ってます。
同じエリアで、居酒屋やバーをやっている方にはメリットがあると思っていて、採用が強い業態なのでパフェバーで採用をしてもらって、場合によって他店のヘルプに入ってもらうということができたり、あとは単純に居酒屋であればピーク帯が違うので、2軒目でこちらにお客さんを流したりもできます。
スタッフのやりとりについてもちょうど居酒屋業態とは相性が良くて。パフェバー業態は夜の20時、21時ぐらいからピークですが、居酒屋だと大体18時ぐらいから21時ほどだと思うので、うちもやっているのですが、居酒屋のピークが終わった後に服だけ着替えて、こっちで働いてもらう。そうすることで人件費効率もすごく良くなるんです。そういう意味ではぜひ既に他業態をやっている方にはFCをやっていただきたいなと思ってます。
大山:最後に今後の展望についてお聞かせください。
櫻井さん:10年後とか20年後とか、そういった先の会社のビジョンを想像しても、なんかわからなかったんですよ。イメージがつかないというか。 コロナ禍で将来が見えないといった期間が続いていたので、今回3年で100店舗と目標設定したのも、正直特別深い理由はなかったんですよ。
この3、4年は、うちだけじゃないと思いますが「どうやって会社を存続させようかな」とか「どうやったらもっと経費削減できるかな」とか、そんなことばかり考えていて「本来会社を建てるときって、そういう想いでやってないよな」というのを去年、思ったんですよ。
結構うちの会社はコロナ渦が本当に厳しくて、コロナが明けてきた去年末ぐらいに、また初心に返って「無理でもいいから1回何か目標立てようぜ」みたいなことを役員たちと話して、年商とか利益とかはわからない(決めても仕方がない)ので、わかりやすく「このパフェバー業態を3年で100店舗出すぞ」というのを掲げたんです。なので今は3年の構想はあるのですが、それから先のビジョンに関しては正直見えていない、というのが正直なところです。今はこの掲げた目標に対して集中していきたいと思っています。
今後はFC展開をしていく予定なので、他社さんも巻き込んでいくことになるので直営店より責任は重いと思っているんです。なので、現状この業態以外での展開は考えず、今はこの業態に集中し、目標に向かって進んでいきたいと思っています。
−今後のご活躍、期待しています。ありがとうございました!
編集後記
若手のおもしろい飲食経営者さんがいるとのことで櫻井さんをご紹介いただきました。若くしてさまざまな経験値を積んでいて、コロナ渦では将来が見通せない厳しい経営環境に。それでも歩みを止めずもがいた結果に生み出したパフェバー業態。3年で100店舗展開という目標を掲げ、再び走り始めた櫻井さんはバイタリティに溢れていました。新しいスタンダードとして、ディナーの後にパフェを楽しむ飲食シーンが訪れる未来を楽しみにしています!(聞き手:大山 正)
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