スペシャル企画

【スペシャル企画】外食の最新動向が分かる「外食総研セミナー」レポート

リクルートライフスタイル(東京都千代田区、代表取締役社長:淺野健氏)の外食市場の調査・研究を行う機関「ホットペッパーグルメ外食総研」は、2018年9月25日、「外食総研セミナー」を開催した。「『2017年度外食市場調査』から見る外食・中食の競争環境とカスタマー動向」と「『食品ロス』をテーマとした外食持ち帰りに対する消費者意識と飲食店の課題」の2つの講演が行われた。



(写真左から、ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の有木真理氏、リクルートライフスタイル執行役員・飲食領域担当の金光竜二氏、ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の稲垣昌宏氏、同じく竹田クニ氏)

講演1「2017年度外食市場調査」から見る外食・中食の競争環境とカスタマー動向
講演者:稲垣昌宏氏


(ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員、稲垣昌宏氏)

こんにちは。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の稲垣昌宏です。本日はホットペッパーグルメ外食総研が毎月実施している「外食市場調査」の結果から見る、2017年度の外食・中食の市場概要と、外食の競争環境とリピーター獲得について講演いたします。

ホットペッパーグルメ外食総研とは

まず、ホットペッパーグルメ外食総研について説明します。ホットペッパーグルメ外食総研とは、リクルートライフスタイルが運営する外食市場の調査機関で、外食市場の分析やトレンドの発信、業界支援を行っています。

リクルートライフスタイルが持つ顧客接点とマーケットデータを活かして、変化や兆しを見つけ、発信することで、外食市場の創出や外食産業の発展に貢献し続けることを目的としています。

「外食市場調査」とは?

「外食市場調査」とは、夕方以降の外食および中食の実態を把握することを目的に首都圏・関西圏・東海圏の20~69歳の男女、毎月約1万人に対しインターネットにて日記方式でレポートしてもらったものです。

2017年度は最高市場額を更新!

2017年度(2017年4月~2018年3月)の調査結果ですが、2017年度の外食市場規模は、「外食市場調査」を開始した2013年度以来、過去最高の市場規模を記録しました。

市場規模は首都圏・関西圏・東海圏合計で4兆752億円、前年度比+4.0%。外食回数は15億7767万回でこちらも前年度比+2.1%でした。

では、どんな属性の人が市場規模を伸ばしているのでしょうか? それがこちらの表です。

規模が最も大きいのは40代男性。これは単純に、40代というのがそもそもの人口が多い世代であることが大きいですね。

前年からの伸び率が大きい性年代は、外食回数については50代の男女。また、20代男性の外食単価も伸びていることがわかります。

2017年度は肉業態が好調

業態別に見てみましょう。

「外食市場調査」では、食事主体・飲酒主体・軽食の3つのカテゴリ分けをしています。その中で最も伸びているのが食事主体で前年度比+5.4%。飲酒主体も同+1.4%と持ち直していました。

さらに細かい業種別に見てみると、「焼肉、ステーキ、ハンバーグ等の専業店」と「すき焼き、しゃぶしゃぶ等の専業店」、つまり肉業態が好調のようです。それ以外に目立つのが、「立食のラーメン、うどん、そば業態」も2割近く伸びています。

日常的な食事は中食が台頭?外食は「特別感」

次は飲酒と予約の関係について、飲酒のあり・なし、予約のあり・なしの4つのセグメントで市場を見てみましょう。グループの中で1人でも飲んでいたら飲酒ありと見なします。

2017年度は「予約あり」が前年比+2.0%。

「予約あり」の外食が増えている一因として考えられるのが、予約をするまでもない“日常的な食事”は、中食に代替されているという仮説です。わざわざ予約をするような“特別な食事”が相対的に増え、結果として「予約あり」が増えたのではないかと考えられます。

2017年度の外食主要指数の推移です。

最近では単価と頻度が伸びていますが、単価については、原材料高騰による値上げの影響もあります。

タウン別伸び率は「海浜幕張」がトップ

ホットペッパーグルメ外食総研では、「タウン」という概念で、独自のエリア分けをして外食市場を見ています。首都圏70くらいのエリアを設定しています。

タウンごとの外食伸び率です。

2017年度の伸び率トップは海浜幕張。タワーマンションや大手企業のオフィスが増えたことで人口が増え、街全体が活性化しているようです。

「一人夕食」の伸び率に注目

2017年度の特筆すべき外食トピックスは、「一人夕食」です。一人夕食(外食)の市場規模は、ここ5年の間で1.2倍ほど拡大しました。

市場拡大には単価上昇の影響が大きいのですが、基準人口比(-3%)に対して、回数が0.99倍、前年度に対して減ってはいるのですが人口比で見ると増加傾向にあると言えます。とくに40代以上で結婚していない単身者が増えているという世の中のトレンドも影響しています。

タウン別に見ると、一人夕食のシェアが高いのは、武蔵小杉。IT企業が多く、単身のエンジニア男性が一人夕食のシェアを伸ばしているのでは?と考えられます。

2017年度は中食も好調

続いて2017年度の中食市場調査について報告します。

基準人口が前年度比-0.1%のなか、中食の実施率は同+1.5%。さらに中食の頻度も増えており、中食の購入回数は約14億回で、前年度比+3.4%です。その結果、中食市場規模は前年度比+5.9%の1兆1614億円となりました。

単価は785円で、前年度比+2.4%。これは過去5年間で最高の数字です。

では一体、どのセグメントで中食が伸びているのでしょうか?

一番市場規模が大きいのが、40代男性。これはもとの人口が最も多いということがあります。

中食の伸び率が大きいセグメントは、20代女性と40代女性。述べ回数では50代男性が伸びています。

2019年10月~は軽減税率の影響も?

次は中食の購入場所についての調査です。

中食の購入場所のトップ3は変わらずスーパー、コンビニ、百貨店。また、ここ2年で「外食店のテイクアウト」が伸び続けているのにも注目です。

2019年10月からは消費税が10%に引き上げられますが、同時に軽減税率も開始される可能性もあります。外食店のテイクアウトは、8%の消費税率を適用する見込みもあるので、その影響も出そうですね。

調査報告は以上です。

外食の競争環境とリピーター獲得のヒン

ここからは、外食の競争環境とリピーター獲得のヒントについてお話します。

最近は外食業界内での戦いのみならず、先ほど説明したように中食の台頭もめざましい。女性の就業率が伸びていることもあり、外食より中食の方が伸び率も高い。

さらに、新宅配業者をはじめとした新しいプレーヤーも登場し、ますます競争は激化しています。

新宅配業者とは、Uber Eatsや出前館などをはじめとする宅配サービス。

こうした複数店舗のメニューを同時に注文できるデリバリーサービスを使ったことがある人の割合は18.8%。30代男性の伸び率が特に高いです。

飲食店のリピート実態を調査

ホットペッパーグルメ外食総研では、飲食店におけるリピート実態の調査を実施。首都圏在住者に対し、インターネットにて調査を行いました。

まず、1ヶ月で外食を1回でもする人は全体の2/3。シーン別に見ると、ランチで外食をする人が一番多いようです。

その中で、2回目以降の来店である割合は77.5%。(チェーン店の別店舗の利用は同じ店と見なす)

これは、例えば100席の店があって、満席だとしたらそのうち2割強くらいは初来店のお客さま。残りは2回目以降の来店の人が座っているという状況です。

次は年代別に見てみましょう。

男性は全体的にリピートが多いですね。外食回数が多く、同じ店に通っている印象です。一方、女性はリピートが少なく、回数も少ない。

とくに20代女性と30代女性はリピートが少ない。好奇心が強く、初めての店に行く傾向があるようです。

ここから、若い女性は新しい店に、男性は慣れた店に行くという傾向が見えてきます。

「目的型来店」と「なんとなく来店」

さらに、同じ来店でも、便利だから来店している場合と、「その店の看板商品が食べたい 」など、目的を持って来店しているのは意味合いが違ってきます。その点についても調査しました。

来店について、「目的型来店」と「なんとなく来店」で分けて聞いてみました。

結果、43.2%が目的型来店で、過半数は「なんとなく」ということになりました。

「なんとなく」の理由は、立地がよい、便利など。ということは、いい場所をとれば繁盛する、という発想ですね。

業態によっても違いが出ています。目的型来店で、かつリピートがとくに多いのは、「立ち食いのラーメン・うどん・そば業態」でした。

人口減少社会で高まるリピーター創出の重要性

これから人口がどんどん減少していく社会においては、同じお客さまに何度も来店してもらうことが重要。ますますリピーターの獲得がクローズアップされていくと予想します。今回の調査結果をぜひ参考にしていただけたらと思います。ご清聴、ありがとうございました。

 

講演2「食品ロス」をテーマとした外食持ち帰りに対する消費者意識と飲食店の課題
講演者:有木真理氏


(ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員、有木真理氏)

こんにちは。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の有木真理です。ホットペッパーグルメ外食総研では、主に“食文化の醸成”を担当しており、その一環として「外食の持ち帰り文化」を作ることに取り組んでいます。

「外食の持ち帰り」を食文化の1つとしてとらえ、調査・発信していくことで、業界課題である、食品ロス対策につなげていきたい狙いです。

食品ロスの6割が外食産業によるもの

こちらは農林水産省が発表しているデータです。外食産業は、食品廃棄量に占める食品ロスの割合が非常に多く、約6割を占めています。

それらの食品ロスは主に「調理くず」と「食べ残し」となっており、とくに「食べ残し」は衛生管理上、リサイクルに不向きと言われています。

持ち帰りを推進する上での課題には、「消費者側の意識」と「飲食店側の課題」の2つの側面があります。

約7割が食べきれなかった料理を「持ち帰りたい」

まず消費者側の意識を調査しました。外食の持ち帰りについて87.6%が賛成しており、外食で食べ切れなかった経験のある人の67.8%が「持ち帰りたい」と感じています。

ところが持ち帰りたかったが持ち帰らなかった人が全体の33.5%いることもわかりました。

その理由は「持ち帰りができる飲食店なのかがわからない」など、物理的な要因だけではなく、様々な心理的ハードルがあることがわかりました。

こうした消費者の心理的なハードルを解消することで、本当は持ち帰りたい人が持ち帰れる状態を作ることが必要と考えています。

持ち帰りはオペレーション&衛生面に課題

次に、飲食店側の課題です。リクルートライフスタイルが運営する『ホットペッパーグルメ』のご掲載飲食店に対し、持ち帰りに対する課題感をヒアリングしました。

その結果多く聞かれたのが、「接客の合間に“持ち帰れること”をお客さまにお伝えする時間や余裕がない」「持ち帰った際の食中毒が不安」という声でした。

一方で、「カスタマーサービスの一環としてやりたい」「実際に料理の廃棄量が減るのでやりたい気持ちはある」という声も聞かれました。

外食の持ち帰りを推進していくためには、飲食店側のオペレーション負担を軽減し、楽に持ち帰りのご案内ができる仕組みづくりと食中毒の不安払しょくが必要であるということが分かります。

持ち帰り文化の醸成に向けて

飲食店側の課題と消費者の意識は表裏一体と言えます。今後、持ち帰り文化を醸成し、食品ロス課題を解決していく上で、「持ち帰りが出来る」ことを周知していくことが重要であることが見えてきましたが、飲食店のオペレーションに「持ち帰りのご案内」を組み込むには、業務フロー上の様々なハードルがあると感じます。

一方、お客さまが喜ぶなら「持ち帰り」に対応したいと考える飲食店も少なくはありませんので、お客さまからの声掛けを促すことによって、その声に対応する飲食店が増え、結果、持ち帰りの推進につながると考えます。

シェアバックで持ち帰りを推進

ホットペッパーグルメでは、今年2月から4月にかけて、横浜市の飲食店に、ホットペッパーグルメオリジナルシェアバッグを配布し、飲食店の持ち帰りを推進する施策を実施いたしました。

この度、10月25日より第二弾を実施します。第二弾ではホットペッパーによる店頭POPやシェアバッグのステッカーをお客さまにお渡しし、シェアバッグの存在をお客さまにわかりやすく、簡単に伝える工夫をしております。こうしたことで消費者からの声掛けを促していきたいと思っております。

まだ具体的なお話はできませんが、今後は横浜市だけはなく対象エリアを拡大し、持ち帰り文化を広めることで食品ロス課題に取り組んでまいりたいと思います。

本日はご清聴ありがとうございました。

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