2013年4月1日より兵庫県で施行された「受動喫煙の防止等に関する条例」に伴い、1月に兵庫・三宮店をリニューアル、エリア分煙への取り組みを開始。こうした分煙への取り組みなど、時流に沿った積極的な改変を行なう同社代表・大迫氏に、分煙に関する考えを伺った。
喫煙席を確保するために、条例に即したエリア分煙を採用
しゃぶ禅株式会社が、初めて分煙に取り組んだのは、神奈川・川崎店からだという。「2010年に神奈川県で公共的施設における受動喫煙防止条例が施行されました。川崎店は対象店舗であったため、同年にはエアカーテン2機を導入し、喫煙席と禁煙席を分けました」と大迫氏。今回、神奈川県に次いで、兵庫県でも受動喫煙防止条例が施行されたことにあわせて「しゃぶ禅 三宮店」のエリア分煙に踏み切ったという。
同店は、2009年にJR三宮駅より徒歩5分の場所にオープン。店内は、テーブル席と接待や大小宴会に利用できる個室で構成されており、オープン当時は全席喫煙可であった。
「兵庫の条例では客席面積100m2を超える飲食店は、その3分の1以上を禁煙席にしなければなりません。当店は店舗面積だけで79坪(約260m2)ですので、もちろん規制対象施設でした。そのため4月1日より施行される条例に先駆けて、禁煙席を設けることを考えました。当店では条例基準の最小値である3分の1を禁煙席にし、喫煙席を大きく取ることで、これまで通りたばこを吸うお客さまにも配慮しました」と大迫氏は言う。
喫煙席の煙が禁煙席へ流れないようロールカーテンで開口部の面積を狭め、また両席の境目となる通路にエアカーテン2機を入れている。最小限の投資ではあるが、もともと厨房の排気風量が大きかったことも手伝い、厚生労働省が推奨している「禁煙エリアから喫煙可能エリアへ向かう気流を0.2m/s以上とする」という基準を満たすことができたという。
「条例施行前の1月からエリア分煙に取り組むことで、営業しながらトラブルがないかなどの確認ができました。実際、大きなトラブルはありませんでしたが、喫煙席が満席の時にたばこを吸うお客さまが来店することもあり、ウェイティングコーナーあたりに喫煙専用ブースなどがあれば、と思うこともありました。既存店の場合、ブースの設置はスペース的に難しいため、できるだけ喫煙できる席を確保するためにもエリア分煙を採用しました」(大迫氏)。
分煙に関する知識を積極的に習得し、双方に快適な店づくりを
今回の分煙工事には、県の「分煙設備整備事業(補助金)」制度を活用。「申請には、書類整備が必要で、設備導入後は県の職員さんが、条例基準をクリアしているか計測するなどの審査もありましたが、実際にかかった分煙機器を含む工事費55万円のうちの半分は返還されたので、活用してよかったですね。こうした県の取り組みが分煙設備導入への後押しにもなりました」と大迫氏は振り返る。
また、店舗開発経験の長い大迫氏は、分煙に取り組む以前に県や株式会社トルネックスが主催するセミナーに参加し、積極的な情報収集を行い、分煙に対する知識を深めていったという。「県のHPだけでは条例内容が見えにくく難しい印象。また、大阪府でも条例制定の動きがあると聞いています。飲食店経営者としては、条例等の規制でお店の環境を一律に縛ることに賛成はできませんが、決まったことには真摯に対応せざるをえません。そのとき飲食店はどうすべきか――。飲食店は”食を楽しむ場”を提供するところだと考えています。本来であれば、吸う人、吸わない人双方が互いに気遣い合うことで居心地よく過ごせるでしょう。しかし、規制が導入された際には双方にとって快適な店づくりをするためにも、分煙環境を整えることは、飲食店のお客様サービスの一環として、取るべき対応ではないでしょうか。」と大迫氏は話す。
経営層自らがたばこに関する条例や分煙について勉強、理解することで、一見敷居が高そうに感じる分煙環境整備も、CS向上を見据えた空間づくりに繋げていくことができるだろう。
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